駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

日南の陽光

南国宮崎日南の日差しは本当に眩い
美しい海岸線を往く観光路線として走り続けて欲しい

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2017年4月 日南線 南郷

さすがは一流の南国、宮崎日南だ。4月だというのに夏を思わせるような陽光が降り注いでいる。その昔、ここ宮崎が新婚旅行のメッカだったと言われても、今の若者には信じ難いことだろう。ピークの1974年にはその数が37万組に達し、当時の新婚さんの35%をも占めた。その後は沖縄、そしてグアムやハワイなどの海外へと移り、新婚さんは日南から急激に去って行った。それが原因ではないが、日南線の輸送密度も低迷するばかりで、吉都線、肥薩線に次いで九州のワースト3となっている。すでにその数値は志布志線や大隅線の廃止時の半数ほどまでに落ち込んでいる。

昨年10月にJR九州の株式が上場されたが、これらのワースト路線が通る地元自治体がJR株式の取得に走るケースが増えている。日南市も真っ先に取得している。別にJR九州が廃止を示唆したわけではないが、遠い北の大地から聞こえてくるJR北海道の動向が恐怖感を与えているのだろう。もちろん、決議を仕切れるような株数ではないので効果の程は未知数だが、地域の要望くらいはより聞き入れてもらえるだろう。事業者と沿線自治体が連携して、よりよい方向性を見出していってもらいたいものだ。

現在、JR九州は「D&S列車」(デザイン&ストーリー列車)というブランドを展開し、観光客の呼び込みを図っている。先日お送りした肥薩線川線に新登場した「かわせみ やませみ」もそのブランドの一つだ。その先駆けになったのが、日南線に投入した「海幸山幸」だった。導入した車両には一般からも賛否両論があるが、こうして収益性の悪い路線にも積極的に新列車を投入して観光客の開拓を試みるというのが、JR九州の鉄道屋としての意気込みではないだろうか。それを可能にしているのが、好調な不動産業などの鉄道外事業の収益にあることは否めないが、これからも鉄道事業者としての意地を見せ続けて欲しいものだし、その成功を陰ながら応援したい。


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2017年4月 日南線 大堂津


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  1. 2017/05/19(金) 00:30:00|
  2. 日南線
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筑豊本線を歩く 吉田住宅は今

炭住のスラム化対策だった町営住宅
半世紀の時が過ぎ、その役目を終えようとしている

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1971年7月 筑豊本線 折尾-中間

現役蒸気機関車を撮っていた頃、九州旅行の行き帰りに訪れたのが、九州の玄関口にある筑豊本線だった。まずは飽きる程の蒸気を眺めてから九州内へと向かい、最後の煙分補給をして九州を後にしたものだ。特に鹿児島本線からの短絡線のある折尾-中間間は、変化のある複々線が人気で、多くの方々が訪れた筈だ。両駅間の中程に線路が立体交差する場所があり、撮影の核心部だった。そして、その線路脇に当時としては洒落た白いコンクリート造りの集合住宅が並んでいたことを記憶されていることだろう。今回のお題はこの集合住宅だ。このブログを始めた頃、こんな眺め をお伝えしたこともある。

この住宅のことを水巻町誌などで調べて行くと、筑豊特有の意外な成り立ちが浮かび上がってくる。水巻町には、日本炭鉱第一礦の閉山直前の1966年には、所謂炭鉱住宅区が12箇所あったそうだ。当時折尾から水巻と芦屋の炭鉱に伸びる日本炭礦専用鉄道が走っていたことをご記憶の方もおられよう。日炭第一礦の閉山によるスラム化対策のため、その炭住のあった吉田地区に、国の支援による「住宅改良事業」を適用して、1969年にこの「吉田町営住宅」が建て始められた。つまり、この写真を撮った2年前までは、ここには木造長屋の鄙びた炭住があったということだ。

吉田地区には1988年に東水巻駅が設置され、現在では公共施設も整った交通の便のよい場所になっている。駅周辺には博多や北九州への通勤者と思われる方々の一戸建てがびっしり並び、新興住宅街の側面もある。吉田住宅は今もその姿を残しているが、老朽化が酷いため建替計画があり、殆どの住民は既に退去している。ほぼ廃墟化した団地は、治安も悪くなっているという。ただ、栄えていた時代の炭鉱社会の心地よさが忘れられなかったのか、ここに長年住み続けられた方が多かったという。この住宅が建て替えられた時、筑豊からまた一つ炭鉱の残渣が消えることになるだろう。


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東水巻駅 上下線の線路幅だけでこれだけある

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駅周辺には一戸建てがびっしりだ

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折尾に向かう上り列車と線路脇の吉田住宅

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以前の記事のハチロクを撮ったのはこの場所か?

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住宅は2階建てのメゾネットタイプで、1階に台所、トイレ、風呂がある 広さはおよそ40平米だ

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殆どが空き家で、ドアのベニヤの破れが、何とも侘しい

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桜が咲いたが、もう愛でる人は殆どいない


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  1. 2017/05/17(水) 00:30:00|
  2. 筑豊本線
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川線の印象 雨降りの川面

激しい雨に球磨川が煙っている
川線を往く翡翠のヘッドライトが川面に輝いた

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2017年4月 肥薩線 海路

海路とは面白い集落名と駅名だ。大河の球磨川に由来するものだろう。因みに小海線にも千曲川沿いに「海」の付く駅が4駅もある。その一つの小海が路線名にもなっている。球磨川は急流として知られ、八代と人吉を結ぶ水運は、1600年代の開削工事によって初めて可能となった。それ以降、球磨川が人吉の発展に貢献してきたことからも、その流域に海路という集落があるのも頷ける。肥薩線が開通し、両岸に車道が整備されると水運は衰退し、現在は観光用の舟下りの川になっている。

この区間の対岸からの撮影はなかなか難しい。現役蒸気の時代もそうだったが、バックの深い緑に列車が沈んでしまう。そういう意味で、この3月改正で登場した「かわせみ やませみ」も強敵だ。深い青と緑を基調にしているので、気象条件のせいなのか、川の宝石というには程遠い。ここ海路にはよく知られた俯瞰場所もあるが、この天候では選択肢にはならない。苦肉の策のヘッドライト撮りと相成った。この後にやって来た普通列車の白い車体が、この時ばかりは天使の羽衣のように思えた。

この日は明け方から、雨もまたよしなどと言ってはいられないほどの大降りだった。球磨川の川面も白く煙っていた。人は濡れても乾かせば元に戻るが、カメラはそうはいかない。それなりの雨対策はしているつもりだが、そんなことが心配になるような降り方だった。「待てば海路の日和あり」なんて諺があるが、この場合どういう解釈をつければいいのだろうか。天候の回復を辛抱強く待てということか。それとも、辛抱して撮っていれば必ず幸運に恵まれるということか。後者を信ずる他あるまい。


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  1. 2017/05/15(月) 00:30:00|
  2. 肥薩線
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駅舎の灯 千綿 18時06分

どんよりとした空模様の一日が終ろうとしていた
海辺の駅舎にも優しい明りが灯った

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2017年4月 大村線 千綿

大村線に早岐の美しいシゴナナの牽く客レが走っていた頃の、1928年に建てられた初代駅舎をご存知の方には、ちょっと不思議な風景に映るかもしれない。実は、1993年に旧駅舎をイメージして、再び木造で建て替えられている。その際に、駅舎のダウンサイジングと地盤のかさ上げがなされている。旧駅舎よりこぢんまりとした、今では調度いい大きさかもしれない。「青春18きっぷ」のポスターにも登場し、今や押しも押されもしない人気の海の見える駅の筆頭格だ。

無人駅化してから、この駅舎の所有者は地元自治体の東彼杵町だ。町のHP にもちゃんと駅の紹介が載っている。千綿という駅名は合併前の千綿村からきている。活気をなくしていく駅の再生策の公募で選ばれたのがデザイン事務所「UMIHICO ウミヒコ」だったわけだ。デザイン事務所に再建やその運営を任せるのも善し悪しだが、千綿はまずは成功といったところだろう。一昨年カフェも併設され、翌日の仕込みをされていたのか、カレーの良い香りが漂っていた。

訪れたのは、調度そのマシマ・レイルウェイ・ピクチャーズのポスターが撮られた時間帯だ。綺麗な夕日に染まる海と空をお見せしたいところだが、そうは問屋が卸さない。狙い目の快速長崎行きの国鉄急行色のキハ65が定刻に通過していくが、相変わらず生憎の空模様だ。晴れの日もあれば、雨降りの日だってあるさ。与えられた条件下で、その風情を何とか引き出したいのが、写真屋の願いだ。どんよりとした空の下、ゆっくりと静かに光を失ってゆく或る日の千綿駅をお楽しみいただければ幸いだ。


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  1. 2017/05/13(土) 00:30:00|
  2. 大村線
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山線の記憶 大畑の軌跡

霧が晴れ大畑駅の向こうに人吉盆地が見えてきた
一駅でこれだけの高低差を稼がなくてはならない

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2017年4月 肥薩線 大畑

現役蒸気機関車の時代の、大畑の最もポピュラーなお立ち台は、ループ線を見渡せる丘の上だった。駅からループ線を辿って30分も歩けばその場所に着く。当時、ループ線一帯には木はなく、草原が広がっていた。日陰は見当たらず、夏であれば炎天下でひたすら列車を待つことになる。大畑駅での列車の動きは見えないが、全ては音で窺える。下り列車のループ線への引き出しは凄まじいものがあった。何とか加速を終えた列車が姿を現す。夏らしいまずまずの黒煙だ。厳しい仕業中ではあるが、炎天下で見守るファンのためにドレインをサービスしてくれた。何ともいい時代だった。

それから46年が経ち、木々の成長がループ線の眺望を奪ってしまった。駅前の丘の上にある神社からも構内は見渡せない。現在撮影できるのはスイッチバックを望む場所くらいだ。この辺りも以前は木々が少なく、色々なアングルから狙え、駅も丸見えだったが、もはや昔話だ。何となく駅周辺だけが観光用に開けているような気もする。この撮影ポイントも地主さんが撮影用に木を伐採して整備したものだ。立ち入りが有料化されたという話も聞こえてくる。今や鉄道も周辺も観光地ということだろう。記憶の中の大畑は遠い世界になってしまった。

以前この大畑スイッチバックを往く「ななつ星」をバルブ撮影することを考えたが、とうとう機会に恵まれなかった。このお立ち台でお会いした鹿児島在住の肥薩線のエキスパートに、そのことをお話すると、なんと彼のEOSにその映像が現れた。人吉の夜景をバックにした何とも美しい光の軌跡が収められていた。やはり、考えることは一緒だ。その他にも多くの作品を拝見させて頂いたが、地元の方には全く持って脱帽だ。


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1971年7月 大畑ループ線

さて、大畑の最後に施設の現状を一通りアップしておこう。何だかんだとよくよく見ると、昔とは大分違っている。給水塔には三角の屋根が被せられていたはずだ。ホームの一部にあった屋根もなくなっている。湧水盆にも手水舎に掛かっているような屋根があったはずだ。それでも、こうして駅舎も残っているのだから贅沢を言ってはいけない。昔と比較するからああだこうだとなるが、現代にあって古き良き時代を思わせる逸品であることには違いない。


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  1. 2017/05/11(木) 00:30:00|
  2. 肥薩線
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プロフィール

こあらま

Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

著作権について

拙ブログに掲載する写真、記事に関する著作権は放棄しておりませんので、無断使用、転載等はお控えください。

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