スイス生まれの洗練ボディーが目を引く
西武は輸入電機のワンダーランドだった

1974年7月 西武鉄道 富士見台
シリーズ初回のジャンボE851形から大分時間が経ってしまったが、第二回は西武赤電機の中でも一際ヨーロピアンスタイルの優美さを誇ったE51形をご紹介したい。1923年、当時の鉄道省は、東海道本線の電化のために、スイスのブラウン・ボベリとシュリーレンの2社で共同開発された1020形1021・1022の2輌を輸入した。その後の形式称号規定の改正により、ED12形ED121・ED122に改められている。国鉄での性能上の不具合はなかったようだが、1949年に2輌とも西武鉄道に譲渡されている。精巧さ故に、保守に手間が掛かったともされている。
西武鉄道時代にはE51形E51・E52の車番が付与されている。E51は車軸の損傷により1976年に即廃車になったが、E52は1987年まで現役を続け、現在は他の赤電とともに横瀬車両基地に静態保存されている。写真は先に廃車となったE51の最晩年の姿になる。池袋線で貨物を牽いているが、背景は子供の頃を思い出させる半世紀前の練馬の長閑な風景だ。1400mmの蒸気機関車並みの大動輪と腰高の台車、両端に張り出した長い庇、屋根に鎮座する2つの大型のエアタンク、小窓の並んだ洗練されたサイドビュー。E51形の特徴的なスタイルが見て取れる。
本邦で蒸気機関車が全盛だった頃、大型の本線用電気機関車の製造技術は国内にはなく、イギリス、アメリカ、スイスといった電化先進国からの輸入に頼るしかなかった。しかし、輸入電機は次第に国産化を急ぐ国鉄から私鉄へと譲渡されていった。かくして、西武鉄道にも個性派揃いの輸入電機が集結することとなった。今回のスイス製のE51の他にも、アメリカ製のE61・E71、イギリス製のE41等も在籍していた。今では大型電機はJRグループの独壇場だが、鉄道貨物輸送が華やかなりし頃には、私鉄にも輸入電機のワンダーランドが在ったということだ。
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テーマ:鉄道写真 - ジャンル:写真
- 2019/11/13(水) 00:00:00|
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