駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

筑豊 二題 ②土門拳と大木茂さん

筑豊という言葉を聞くと、どうしても土門拳の「筑豊のこどもたち」が思い浮かぶ。

小生は二十歳頃に土門拳の「筑豊のこどもたち」で写真の力を知ることになった。この本は、言わずと知れた、土門拳のリアリズムの金字塔だ。この写真集が小生の書架に並んでから既に40年近くが経った。時々新装版を眺めているが、何回見ても新鮮な感動や発見があり、何よりやる気が湧いてくる。小生にとっては、落ち込んだ時のカンフル剤のようなものだ。

この初版本はザラ紙印刷で¥100という大衆向けのものだった。どうしても原本で見たいとおっしゃる方は、今でも古本屋を探せば、手の出せる範囲で見つかると思う。とは言え、さすがは土門拳、ザラ紙の古本であっても、大木茂さんの「汽罐車」より値が張る。

2004227.jpg
左:土門拳「筑豊のこどもたち」(新装版、築地書館)       右:大木茂「汽罐車」(新宿書房)

何故ここで「汽罐車」かというと、もちろんここが鉄道画のブログであるからだが、小生にはどうもこの2作にはダブって見える部分があるのだ。並べてみても、小生には何ら違和感はない。皆さんはどうだろうか。大木さんにしてみれば、隣に土門拳では、些か座り心地が悪いだろうが、ここは両作品をこよなく愛する者の戯言とお聞き流し頂きたい。

これらの内容を評する勇気は毛頭ない。ただ共通点として安いということが挙げられる。両氏とも、その先の思いは異なるが、多くの人にみてもらいたいため、と語っている。「筑豊のこどもたちの」の¥100も凄いが、「汽罐車」のこの装丁にしてこの値段も驚きだ。両書には、商業主義を排した、「気骨」というか「魂」を感じることができる。こういった清廉な志をもってして、初めて金字塔が打ち立てられるという訳だ。

土門拳は取り巻きから止められるまで、一か月以上もカメラを持たずに子供たちの遊び相手を続けたそうだ。あの強面からは想像できないような所業だ。そして、この作品に自らの命まで懸けている。雑念ばかりの小生には為し得ない業だ。

面白い両氏の繋がりもある。大木さんは早稲田大学卒とあるが、土門拳は、初期の仕事として早大の卒業アルバムの撮影を手掛けている。こういった気骨は、早稲田と聞けば頷ける。

ここでまた改めて「筑豊のこどもたち」の表紙を見ていると、この作品が今も、決してその光を失っていないことに気がつく。哀しいかな、現代の巷には、子供たちをも巻き込む凄惨なニュースが毎日のように飛び交っている。写真の中のるみえちゃんは、今を生きる我々に何を語りかけているのだろうか。不朽の名作とは、頑なな普遍性を持っているものだ。

一方、「汽罐車」だが、こちらは蒸気好きなら、兎に角見るべし。鉄画を上達したければ、繰り返し何度も眺めるべし。モノクロ好きなら舐めるように研究すべし。そのための安価だ。大木さんのご厚意に甘んじて、大いに学ばせてもらおう。こちらは今日の主役ではないが、今後、折に触れて、話題にしたい。

小生も反省しなければならないが、下手糞な写真を撮り貯めるばかりでなく、時として、こういった大先輩方の偉業を鑑み、糧とするのは、とても大事なことだと痛感する次第である。

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  1. 2014/12/18(木) 01:00:12|
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こあらま

Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

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