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駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

ぽっぽやの駅は今

この駅は現実と映画の二つの顔を持つ
列車の来ない幾寅は幌舞として生きている

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2018年10月 根室本線 幾寅

この線路はJR北海道最長路線の根室本線の鉄路だ。この先150m程のところに幾寅駅がある。線路左側には幾寅の駅標識も見える。かつては、急行「狩勝」が停車していた南富良野町の玄関駅だ。2016年8月31日の台風10号の大雨災害で不通となり、今も東鹿越-新得間は通らずのままだ。列車が通わなくなって3度目の秋を迎えた。線路はススキに覆われ、ちょっと先の駅すら見えなくなっていた。


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幌舞線 幌舞

根室本線の幾寅駅は、同時に幌舞線の終着駅の幌舞でもある。1995年に「小説すばる」に掲載された、浅田次郎のベストセラーで直木賞受賞作でもある「鉄道員(ほっぽや)」が映画化された際のロケ地だ。1999年に降旗康男監督、高倉健主演で映画化され、日本アカデミー賞の主要部門をほぼ独占している。あまりにも有名な映画なので、能書きは野暮だろう。


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この駅舎は幾寅駅を改装したものだ。40数年前にオリジナル駅舎の幾寅に降り立ったことがあるが、その時代はその時代で、風情のある木造駅舎だった。その後、色々と不細工な補修がなされたのだろう。かなり手が入れられて、この幌舞に生まれ変わっている。駅舎正面の駅名票は幌舞のままで、目立たない場所に「JR北海道 幾寅駅」の表示がある。


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駅舎の周りには、ロケーションのセットが展示されている。廃車後ここで保存されているキハは残念ながら半身だが、だるま食堂とのツーショットは、映画のシーンを思い出させる。このキハ40 764はキハ12を摸して、映画用にキハ40 230が改造されたものだが、よく見ると何とも奇妙な顔つきだ。「ぽっぽや号」として観光列車に起用されていたらしいが、この改造が祟って、早々に廃車となってしまった。


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駅舎内は、まさに「ぽっぽや」一色だ。幌舞駅長の机だろうか、机上は高倉健を偲ぶ祭壇のようになっている。早いもので、お亡くなりになってちょうど4年になった。この映画では、雪子が現れた翌朝、ラッセル車の乗員が、ホームで冷たくなった乙松が雪に埋もれているのを発見して終わる。


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スチール写真展示コーナーには、なかなか懐かしいシーンが並んでいる。志村けんの顔も見える。筑豊から流れてきた酒癖の悪い吉岡肇だが、幌舞炭鉱の事故で帰らぬ人となっている。

私事になるが、こあらまが好きな登場人物は、高倉健の佐藤乙松でも、大竹しのぶの佐藤静江でも、広末涼子の雪子でもなく、乙松の同僚の小林稔侍の「仙ちゃん」こと杉浦仙次だ。なかなか人情味のあるキャラクターでありながら、こちらも根っからの「鉄道員」で、この物語をしっかり支えている。


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駅舎のホーム側に出てみると、あの時と同じようにホームへは階段になっている。幾寅駅としての機能は停止しているが、幌舞駅として訪れる人が多い。ひょっとすると、幾寅よりも幌舞の方が、乗客が多いのではないだろうか。ふと、そんな他愛もないことが頭を過った。


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落合側、いや幌舞の美寄側には、これまたロケーションのための腕木式信号機が残されている。前掲のスチール写真展示コーナーの右上の写真に写っているやつだ。ただし、積雪地帯にしては非現実的なくらいに背丈が縮んでいる。幌舞の信号機が、幾寅のものと混同されないような配慮なのか。バッテンが付けられていないのは粋な配慮だ。


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ホームには、数少ない幾寅の駅名票が鎮座している。本物の駅の証拠だが、名所案内は幾寅の明日を象徴しているかのようだ。不通区間の東鹿越-新得間には、幾寅と落合の二駅が存在する。被害は落合から先に集中している。ここ幾寅までなら何とか通すことが出来そうだが、そうならないのがJR北海道だ。この富良野-新得間は、災害があろうとなかろうと廃止区間と決まっているようだ。機会があれば、お隣の落合の今もご紹介したい。こちらは、人気のない寂寥の趣だ。


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幌舞線は北海道の炭鉱に伸びた、廃止予定のローカル線だった。北海道でローカル線の廃止が相次いだのは、国鉄末期、JR発足前夜の80年代半ばだった。そんな時代背景から「ぽっぽや」の発想が湧いてきたのだろう。幌舞の廃止から20年、今度は幾寅が危機に瀕している。それも、ローカル線ではなく、本線と名の付くかつての幹線だ。高倉健扮する佐藤乙松は小駅を守り抜くことに生涯を捧げた。今、鉄道員を失った駅は、静かに時の流れに身を任せている。

秋も深まり、錆びたレールに落葉が降り積もる。
列車の途絶えた鉄路に3度目の冬が来る。


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テーマ:鉄道写真 - ジャンル:写真

  1. 2018/11/15(木) 00:00:00|
  2. 根室本線
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:8
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コメント

おはようございます

なんか見させて頂きジーンと来ました!
行きたかったけど行けなかったです!

ありがとうございます。

  1. 2018/11/15(木) 07:08:04 |
  2. URL |
  3. くるみ #-
  4. [ 編集 ]

侘しいな・・・

悲しいけどこれが現実ですね。
  1. 2018/11/15(木) 14:00:44 |
  2. URL |
  3. 楓ちゃん #-
  4. [ 編集 ]

時代の終わり

幌舞駅の看板も色褪せたあたり、この映画も昔の事になったなと。
「幌舞線」の廃止の知らせと共に映画は終わるのですが、
廃線同様の佇まいが映画の後日談を語るよう。
駅と共に健さんと共に、ひとつの時代が終わったなと実感します。
  1. 2018/11/15(木) 22:00:38 |
  2. URL |
  3. 風太郎 #ORZvdv76
  4. [ 編集 ]

木造駅舎の温み

くるみさん、

お越しいただきありがとうございます。
関西在住のくるみさんですよね。初めまして。今後ともよろしくお願いします。
もう北海道へは半世紀近く通っています。昔は多くのローカル盲腸線があったのですが、寂しい次第です。
こんな木造駅舎が、あちこちで厳しい冬を耐え忍んでいたのですが、今は本当に少なくなりました。
殆どが貨車やブレハブ小屋に化けてしまい、撮影には苦慮していますが、それもまた現実です。
JR北海道は撮影には厳しいですから、あまりお薦めできませんが、廃線になる前に是非とも幌舞にお出掛けください。
  1. 2018/11/15(木) 23:16:07 |
  2. URL |
  3. こあらま #3ntlMNqo
  4. [ 編集 ]

見納め

楓ちゃん、

ご無沙汰してます。
北海道も寂しくなりそうなので、見納めに長々と回ってきました。
乗客は減るばかり。新幹線は大赤字。北海道の鉄道はどうなってしまうんでしょうね。
そうそう、行き帰りに、山田、大湊、五能、花輪、秋田縦貫、北上、陸東、石巻、磐東の各線に寄ってみました。
塩害でしょうか。少々物足りない紅葉でしたが、まずまず楽しめました。
そちらも、ぼちぼちアップしますね。
  1. 2018/11/15(木) 23:18:21 |
  2. URL |
  3. こあらま #kF3bBzp.
  4. [ 編集 ]

時は流れて

風太郎さん、

高倉健がお亡くなりになってからというもの、所縁の駅も後を追っています。
『STATION』の増毛駅が終わり、『鉄道員』の幾寅駅は瀕死状態、『幸せの黄色いハンカチ』の夕張駅は余命僅か。
あの監督たちが選び抜いた北海道の風情ある駅は、その役目を次々と終えています。
本当に、一つの時代が終わったって感じですね。
いよいよ、北海道からローカル線が消え去る時が来ました。
  1. 2018/11/15(木) 23:20:39 |
  2. URL |
  3. こあらま #bhV1oT4A
  4. [ 編集 ]

赤さびた鉄路

増毛、幾寅、夕張。
かつて映画の舞台となった駅がひとつずつ終焉を迎えています。
いや、終焉を迎えることが予想されるほど時代の流れから取り残されたから、映画の舞台に選ばれたのかもしれません。
おりしも日高本線も全線復旧が不可能と発表されました。
かつて人々の暮らしを支えていた北の大地の鉄路。
その使命は本当に終わったのだろうか。
  1. 2018/11/18(日) 18:54:01 |
  2. URL |
  3. まこべえ #2XsKFzVg
  4. [ 編集 ]

鉄道は誰のもの

まこべえさん、

これらの北の鉄路が拓かれた「当初の使命」は、終わり掛けているのだと思います。
輸送人員が減り、列車が減り、そしてまた乗客が離れていく。時代の変化には抗えません。
しかしながら、こあらま的には、スクラップ&ビルドのやり方は性に合いません。
折角、多くの労力と経費をつぎ込んで建設された鉄道です。何とか生かす方法論に知恵を絞るべきです。
「新しい使命」を吹き込むことが必要ですし、今の時代、ある程度の経済的な自立も不可欠です。
ひょっとすると、時代がまた鉄道を必要とする日が来るかもしれません。
あちこちで路面電車を復活させる機運がありますが、ゼロから作るとなると、ハードルが高いようです。
鉄路も一度剥がしてしまえば、もう一度ということにはなりません。
元々、JRの路線は国民のものです。もう少し、広がりのある、国民的な議論があって然るべきかと。
  1. 2018/11/18(日) 23:46:28 |
  2. URL |
  3. こあらま #bhV1oT4A
  4. [ 編集 ]

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プロフィール

こあらま

Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

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