駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

蒸気時代の忘れ形見 豊後森機関庫

この機関庫に勢揃いした蒸気を想像すると胸が高鳴る
何時の日かキューロクが転車台に乗ることを夢見よう

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2017年4月 久大本線 豊後森

旧国鉄の駅には、森町の森駅が三つある。1903年開業の北海道・函館本線の「森」、1929年の大分県・久大本線の「豊後森」、そして1935年の静岡県・旧二俣線の「遠州森」だ。日本の鉄道網の骨格を成す函館本線の茅部郡森町の森駅が断突に古く、続く二つの森駅は頭に国名を頂くことになった。しかし、森という町の由緒から云えば、やはり豊後国の森が筆頭だろう。江戸時代には森藩の統治下にあり、廃藩置県後の僅かな期間だが、森県も存在した。現在は近在の町村と合併して玖珠町を名乗っているが、豊後森駅は旧森町の中心地には変わりない。

その森に機関区が設置されたのは、久大本線が全線開通した1934年のことだ。当初、機関区設置の請願書を提出したのは日田郡町村会だったが、内輪もめの停車場問題を纏めきれず、後から名乗りを上げた玖珠連合が攫ってしまう結果となった。位置的にも、町の大きさからも日田機関区なのだが、そんな失態で油揚げを攫われている。そして、森に12線を有する巨大扇形機関庫が建設され、蒸気機関車全廃翌年の1971年まで機関区は存続した。最盛期の1954年には、25両の配車、217人の職員を擁し、運行本数40本、乗降客5,000人と、玖珠町の資料にある。

国鉄が分割民営化され、残された鉄道用地は次々と売却されていったが、廃止された豊後森機関区跡地は、幸か不幸か、周囲が田圃で接続する道路がなく、売るにも売れない土地として、30年が過ぎ去った。いよいよJRが解体を検討し始めると、ここでも住民運動が起こり、2006年に残存施設と跡地は玖珠町へ売却され、機関庫と転車台は国の近代化産業遺産、有形文化財に登録された。しかし、機関庫と転車台が解体を免れたという段階だ。小さな町に保存の財力は乏しい。何らかの収益に繋がらなければ挫折しかねない。今後の活用法が問われるところだ。


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太平洋戦争中には、久大本線の一部のレールが供出され、不通に陥ったこともある。米軍機の機銃掃射に遭い職員3人が死亡するという悲劇も起きている。機関庫の壁にはその時の銃痕が残っている。この機関庫は鉄道遺産であるとともに、戦争の生き証人でもある。


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機関庫内に立ち、内部をじっくり観察し、石炭の臭いを感じて蒸気機関車がいた時代を偲びたいところだが、残念ながら荒廃したままの機関庫内には立ち入れない。この窓ガラスの状態は恐ろしい。


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2015年に、この機関庫前にキューロクがお目見えした。長崎線や唐津線、田川線で活躍した地元九州の罐だ。福岡は免田町に静態保存されていたものだが、補修の予算が議会を通らず、玖珠町に無償譲渡された。屑鉄同然だったこのキューロクをここまで修復したのは、直方のNPO法人「汽車倶楽部」だ。この倶楽部は只者ではない。蒸気機関車をバラバラにして組み立て直すという全検紛いの作業をやってのける。指揮するのは元国鉄門司機関区検査長というから半端でない。こういう方々に、保存鉄道でもやってもらえば、えらく面白い鉄道となるはずなのだが・・・。


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テーマ:鉄道写真 - ジャンル:写真

  1. 2017/07/12(水) 00:30:00|
  2. 久大本線
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

豊後森

こあらまさま

やはり行かれましたか。
先日の雨で被害が出てなければいいのですが・・・。
ラウンドハウスの退廃感からするとちょっとキューロクが
綺麗過ぎるのが玉に瑕ってところでしょうか!?
  1. 2017/07/12(水) 22:12:30 |
  2. URL |
  3. 狂電関人 #vqoLnCUQ
  4. [ 編集 ]

廃墟の趣

狂電関人さん、

今回の九州の大雨災害は雨量もさることながら、人工林の流失が目につきます。
花月川橋梁も丸太が原因のようです。林業の盛んな場所柄ですから、問題は複雑です。
この機関庫は今後どうなるでしょうかね。このまま廃墟の趣を鑑賞するのが続くかもしれません。
全国から保存状態が悪い罐をかき集めて並べたら、ちょうどいい塩梅になるのでしょうが、それもですね。
実は豊後森はおまけで、メインは旧宮原線の廃線跡でした。小国から恵良までの全区間を見て回りました。
早くに廃止された割には、アーチ橋群を始め、多くの遺構が残っており、結構楽しめる場所でした。
  1. 2017/07/13(木) 00:34:59 |
  2. URL |
  3. こあらま #bhV1oT4A
  4. [ 編集 ]

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Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

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