駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

駅舎の由緒 油須原

この鉄路と駅舎は九州にいち早く造られたものだ
広い構内からは石炭時代の栄華が伝わってくる

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1973年8月 田川線 油須原

この駅名の「油須原」は、「ゆすばる」と読む。国鉄田川線の現役蒸気機関車の時代には、崎山、油須原、勾金といえば、知らないファンはいないほど有名な撮影地だった。勾配区間であったため、2両、3両のキューロクで石炭列車を押し上げていた。さて、九州の鉄道の歴史は、私設の九州鉄道による1889年の博多-千歳川間の開業に始まる。その頃、筑豊田川の石炭の運び出しのために、民間の豊州鉄道が設立され、行橋-伊田間が開通したのは1895年のことだ。つまり、この油須原駅が開業したのは、122年も前ということになる。

ウェブで「九州最古の駅舎」を検索してみると、嘉例川と大隅横川の駅名がドサッと出てくる。中には門司港の名も散見されるが、こちらは言語道断だろう。この肥薩線の両駅が開業したのは、114年前の1903年で、逓信省鉄道作業局の手によるものだ。この2駅は、一貫して国の管理下にあったため、その由緒はかなり克明に記録保管されている。現存する木造駅舎が、初代のものであることもはっきりしている。そのため、国の登録有形文化財の指定を受け、地元ボランティアと行政によって、町のお宝として大切に扱われるに至っている。

一方、油須原だが、残念ながら駅舎の由緒が定かでない。豊州鉄道、九州鉄道、官営鉄道、国鉄、JR九州、平成筑豊鉄道と、駅舎の大家は既に6代目だ。122年前に民間が設置した駅舎の記録など残っている筈もない。ただ、誰がどうやって調べたのか、建替えの記録もないという。限りなく九州最古の駅舎である可能性が高いが、ただの古い木造駅舎の地位に甘んじている。近くに住んでいれば、初代駅舎であることの証明に乗り出したいところだ。肥薩線には十分に遺産があるのだから、一つくらいへいちくに譲ってやって欲しいものだ。


【追記】
まこべえさん が、国鉄時代である1974年当時の油須原駅舎の写真をアップしてくれました。
どうやら、この駅舎は、近年改装・改築が為されてしまったようです。目的は種々推察されますが、何れにしても、旧駅舎のオリジナリティが、大きく破壊されてしまったことは事実です。本来であれば、文化財としての取り扱いが求められるところですが、残念ながら、安直な改装がなされてしまい、その歴史的・文化的価値が失われてしまいました。構造材は残されているようなので、復元という手もありますが、それでも、覆水盆に返らずです。日本はスクラップ&ビルドのお国柄ですから、古いものへの関心にやや欠けるところがあります。一方で、現在人気のある観光地の多くは、地域の努力によって古いものが大切に守られてきた場所です。古い建造物はそれだけで公共財ですから、これからは、地域で監視し合い、守っていくという気概も必要かと思います。「九州で最も古い骨格をもつかもしれない なんちゃって駅舎」では、何とも哀れです。


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2017年4月 平成筑豊鉄道 油須原

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テーマ:鉄道写真 - ジャンル:写真

  1. 2017/06/24(土) 00:30:00|
  2. 田川線
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:8
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コメント

偶然、

こあらまさま

柚須原とはまた渋く攻めますねぇ。
今日は朝新花巻駅で拾っていただき、釜石線C58の往路を撮りました。
途中で、マイオさんにお会いいたしました!
  1. 2017/06/24(土) 23:11:01 |
  2. URL |
  3. 狂電関人 #vqoLnCUQ
  4. [ 編集 ]

偶然という必然

狂電関人さん、

出先からわざわざコメントありがとうございます。首尾よく行っていますか。
確か、楓ちゃんは、撮り鉄はちょっと倦怠気味なんてコメントをどこかで拝見したような。
おやおや、マイオさんは、9月中旬までは線路端は休業ってブログに宣言さていましたよね。
皆さんそうは言いつつ、追っかけなんぞをやって、世話無いですね。
やっぱり、汽車好きの性根は何処までもってことでしょう。
日曜日は、復路ですか。それとも、さらに北上ですか。
もし、またお二人とお会いするのなら、よろしくお伝えください。
天気はちょっと微妙ですが、大雨は避けられそうですね。
彼の地では、印象的な海原がゲットできますよう、念じております。
お気をつけて。
  1. 2017/06/25(日) 00:35:24 |
  2. URL |
  3. こあらま #bhV1oT4A
  4. [ 編集 ]

懐かしい。されどどこか違う油須原駅舎

油須原! 懐かしい!
ただ、どこか違うと思って、古い写真と見比べてみましたが、やはり当時の駅舎とは、内部も外観も少し違うようです。
預所の看板もそうですが、内部はいかにも古き時代の駅舎のように作り直していることから、ある時期に創建時の建物をイメージして部材を再利用して建て直したか、大幅に手を加えたものではないでしょうか。
正面の「油須原駅」の表示も、当時のものとは字体が違います。
こうした歴史的建造物は、きちんと記録を残してくれないと、後世の人は誤解してしまいますね。
古い駅舎の写真、近日中にアップします(といっても撮影は一部分ですが)。
  1. 2017/06/25(日) 00:53:41 |
  2. URL |
  3. まこべえ #2XsKFzVg
  4. [ 編集 ]

確かに違う駅舎

まこべえさん、

おっしゃる通り、相当に手が入っていますね。それも、安直な。
改札口上の運賃表と時刻表は、長野県辺りのものと思われますが、実在のものとも思われません。
実は、この古風を装った時刻表モドキは、旧国鉄の時刻表を裏返して書かれています。
つまり、この駅舎は、JR九州の時代に改装されたものと想像されます。(平筑はお金がないので無理でしょう。)
入口の「預所」の看板は、明らかに作り物でしょう。「古」の演出と思われます。
正面の木のリメーク駅名標には平筑の名がありますから、こちらはよしとしましょう。
それ程費用も掛けられなかったようですから、逆に核心部分には手が加えられていない可能性もあります。
屋根も外壁も窓もリフォームされていますが、一部の礎石や柱などに初代のものが残っているかもしれません。
待合室の反対側の業務スペースの中を調べてみたいものですが、こちらも厳しそうです。
仮に初代の改装であっても、由緒の証明と、復元でもしない限り、文化財入りは到底無理でしょう。
もう少し、初代の木造駅舎の価値に対して造詣があったならばと思うと残念です。
こういうところにもスポットが当たればと思いますが、やはり肥薩線に名実ともに軍配ですかね。
そうそう、広い駅構内の設備と佇まいは昔を感じられますよ。2線にはなってしまっていますが。
  1. 2017/06/25(日) 10:46:20 |
  2. URL |
  3. こあらま #bhV1oT4A
  4. [ 編集 ]

なんか噂になってたとは

7月8月と9月中旬までは鉄路から遠ざかる、と申しましたが、実は昨日今日がお休み前最後の鉄道撮影でして、、、
分かりにくかったですね〜。

はい、昨日昼飯は狂電関人さんともご一緒してました。

ところで油須原ですが、まこべえさんが看破された通り、残念ながらということなんですかね。会津鉄道湯野上温泉駅も、藁葺屋根の駅舎に改装ですが、はてさて。
  1. 2017/06/25(日) 17:12:43 |
  2. URL |
  3. マイオ@新花巻 #pcU4xDNY
  4. [ 編集 ]

良い御縁を

マイオさん、

偶々マイオさんの情報がもたらされたもので、失礼ながら、つい噂話をさせていただいておりました。
楓村の名ガイドさんに前回紹介してもらったポイントを、改めて訪れて復習していたら
当の楓村さんが、電関人さんらを連れて突然現れたって感じですか。ありそうな話ですね。
古今東西ニアミスは付き物ですが、昔と違って運行が限られますから、確率も高くなったのかもしれませんね。
細かいことはさて置いて、随分と気合いが入ってますね。マイオク様は花巻温泉とか遠野辺りでまったりですか。
高辻さんもゴールデンウィークに行かれたようですし、一日一本のために遠征する時代になりましたか。
こあらま的には、北海道の行き帰りに寄る場所なのですが、何時も期待外れのスカばかりです。
何処かいい場所があったら教えてくださいよ。
お気をつけて、お帰りください。
  1. 2017/06/25(日) 18:33:39 |
  2. URL |
  3. こあらま #bhV1oT4A
  4. [ 編集 ]

噂の楓ちゃんです (笑)

初めてコメントさせていただきます。
よろしくお願いいたします。

さて古い建物の保存といえば約1年にわたる我が地元のマルカンデパート (大食堂)の保存 復活の市民運動?が最近では印象的な楓ちゃんですが、
週末強電関人さんらを案内して岩手川口駅に寄った際、1898(明治31)年の開業当時からの駅舎が来年の120周年に合わせて新しい駅舎に変わるとの告知ポスターが !!?
よく見ればすでに事務所側1/3は取り壊されていまして・・・
愕然としてしまいました m(_ _)m

なんか、無性に悲しかったです。
  1. 2017/06/28(水) 11:03:48 |
  2. URL |
  3. 楓ちゃん #-
  4. [ 編集 ]

駅舎は町の歴史

楓ちゃん、

お越しくださいまして、ありがとうございます。
噂話もしてみるものでね。(笑)

そうやって、古いものが、何時の間にか無くなっちゃうんですよね。岩手川口駅舎は、キャベツドームの駅舎に変身するそうな。
120歳の初代駅舎ということですと、なかなかの年代物です。じっくり考えてもらいたかったですね。駅舎は町の歴史です。
岩手町にしてみれば、新しくて綺麗なものをと考えるのは分らなくはありませんが、後の祭りにならなければよいのですが。

リンクの件、諒解です。こちらからもリンクしました。
今後ともよろしくお願いします。
  1. 2017/06/28(水) 22:00:10 |
  2. URL |
  3. こあらま #bhV1oT4A
  4. [ 編集 ]

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こあらま

Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

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拙ブログに掲載する写真、記事に関する著作権は放棄しておりませんので、無断使用、転載等はお控えください。

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