駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

筑豊本線を歩く 吉田住宅は今

炭住のスラム化対策だった町営住宅
半世紀の時が過ぎ、その役目を終えようとしている

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1971年7月 筑豊本線 折尾-中間

現役蒸気機関車を撮っていた頃、九州旅行の行き帰りに訪れたのが、九州の玄関口にある筑豊本線だった。まずは飽きる程の蒸気を眺めてから九州内へと向かい、最後の煙分補給をして九州を後にしたものだ。特に鹿児島本線からの短絡線のある折尾-中間間は、変化のある複々線が人気で、多くの方々が訪れた筈だ。両駅間の中程に線路が立体交差する場所があり、撮影の核心部だった。そして、その線路脇に当時としては洒落た白いコンクリート造りの集合住宅が並んでいたことを記憶されていることだろう。今回のお題はこの集合住宅だ。このブログを始めた頃、こんな眺め をお伝えしたこともある。

この住宅のことを水巻町誌などで調べて行くと、筑豊特有の意外な成り立ちが浮かび上がってくる。水巻町には、日本炭鉱第一礦の閉山直前の1966年には、所謂炭鉱住宅区が12箇所あったそうだ。当時折尾から水巻と芦屋の炭鉱に伸びる日本炭礦専用鉄道が走っていたことをご記憶の方もおられよう。日炭第一礦の閉山によるスラム化対策のため、その炭住のあった吉田地区に、国の支援による「住宅改良事業」を適用して、1969年にこの「吉田町営住宅」が建て始められた。つまり、この写真を撮った2年前までは、ここには木造長屋の鄙びた炭住があったということだ。

吉田地区には1988年に東水巻駅が設置され、現在では公共施設も整った交通の便のよい場所になっている。駅周辺には博多や北九州への通勤者と思われる方々の一戸建てがびっしり並び、新興住宅街の側面もある。吉田住宅は今もその姿を残しているが、老朽化が酷いため建替計画があり、殆どの住民は既に退去している。ほぼ廃墟化した団地は、治安も悪くなっているという。ただ、栄えていた時代の炭鉱社会の心地よさが忘れられなかったのか、ここに長年住み続けられた方が多かったという。この住宅が建て替えられた時、筑豊からまた一つ炭鉱の残渣が消えることになるだろう。


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東水巻駅 上下線の線路幅だけでこれだけある

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駅周辺には一戸建てがびっしりだ

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折尾に向かう上り列車と線路脇の吉田住宅

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以前の記事のハチロクを撮ったのはこの場所か?

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住宅は2階建てのメゾネットタイプで、1階に台所、トイレ、風呂がある 広さはおよそ40平米だ

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殆どが空き家で、ドアのベニヤの破れが、何とも侘しい

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桜が咲いたが、もう愛でる人は殆どいない


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テーマ:鉄道写真 - ジャンル:写真

  1. 2017/05/17(水) 00:30:00|
  2. 筑豊本線
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

吉田住宅

こあらまさま

恥ずかしくも吉田住宅の存在知りませんでした。
同じ福岡県でも福岡と北九州は全く違い、結構知らないことも多いです。
まだジャリ鉄だった頃、いきなりカメラを持って対峙したのが大正時代の猛者たちで、
正直メジャー嗜好だった電関人にはとても地味に写りました。。。
  1. 2017/05/17(水) 22:23:01 |
  2. URL |
  3. 狂電関人 #vqoLnCUQ
  4. [ 編集 ]

この場所

複々線区間より折尾寄りなんでしょうか。
私は中間から歩いて複々線区間で撮影しましたが、
それ以上折尾寄りには行かなかったようです。
恥ずかしながら吉田住宅というのは初めて聞きました。

複々線区間沿い、あるいは中間の筑前埴生方にも
炭住っぽいのが建っていたので、こういう当時としては
モダンな建築物があったのは驚きです。
  1. 2017/05/17(水) 22:38:26 |
  2. URL |
  3. マイオ #pcU4xDNY
  4. [ 編集 ]

古豪の罐

狂電関人さん、

木造主体の時代、この建物ですから、否応なく目立ちました。
ただ、当時はその生い立ちなど考えもしませんでした。
調べてみると色々と分かってくるものです。
古手の罐は好き好きですね。
キューロクあたりは、絶大な人気ですけとね。
  1. 2017/05/18(木) 09:19:15 |
  2. URL |
  3. こあらま #bhV1oT4A
  4. [ 編集 ]

懐かしの複々線

マイオさん、

ここも複々線区間の一部です。
中二本が立体交差しているため、こんな眺めになっています。
その築堤から撮っています。向こうにも一線見えています。
この後、この区間の現在の線路配置もお送りします。
懐かしの折尾や中間、垣生、植木などもアップする予定です。
  1. 2017/05/18(木) 15:29:42 |
  2. URL |
  3. こあらま #bhV1oT4A
  4. [ 編集 ]

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こあらま

Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

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