駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

あの「北辺」が蘇る

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現役時代の蒸気機関車を追いかけていた世代が、今次々と還暦を迎えている。あちこちの蒸気ブログに「還暦」という文字を見かけるようになった。1960年代の半ば頃に「SLブーム」という現象が巻き起こった。そのブームの絶頂期の団塊の世代は、10代の中高生だった。消えゆく蒸気を求めて、夜行列車で北へ南へと旅立った。中高生が単独で冬の北海道に向かうことなど、今では考えられないことだ。まだまだ社会が、素朴で、親切で、安全で、寛容だった時代で、そんな世相に助けられて、少年たちの我武者羅な旅が、1975年のSL全廃まで繰り広げられた。

そんな、ブームの真最中の1971年8月に、この「北辺の機関車たち」は出版された。そこにある北海道の凍てつく原野は、多くの若者たちのハートを鷲掴みにした。そして、少年たちの北海道詣が加速することになった。折しも山線のC62重連が終焉の時を迎えており、ツバメマークを一目見ようと、我先に青函連絡船で津軽海峡を渡った。このカバーを飾る音威子府のC55に逢おうと、日本最北端を急行利尻で目指した。そうこうしながら、この写真集は何時しか蒸気ファンのバイブルとなり、そのファンと共に46年という年月を重ねてきた。

そして、2017年、遂にファンの願いが届き、「北辺の機関車たち」は復刻されることになった。

この写真集の原本の定価は¥1,500だった。当時、国鉄の北海道周遊券は東京発¥9,300 で、学割、冬季割引を使うと¥6,000 程で、撮影旅費とフィルム代の捻出に苦しむ中高生には、「北辺」は決して安い買い物ではなかった。キネマ旬報社の「蒸気機関車」に広告が出ていたが、泣く泣く見送った同胞も多いと聞く。そんな心残りをずっと抱えて来られた方々には、「北辺」の復刻は、還暦祝いの素晴らしいプレゼントになるはずだ。掛け替えのないあの日に思いを巡らせるのは、とても懐かしく楽しい時間のはずだ。もちろん、オリジナル本をお持ちの方は、「北辺」の進化を確かめるために、迷わず手にされることだろう。

ただ、一番お勧めしたいのは、現役の蒸気機関車を知らない、復活蒸気ファンの方々だ。もし、この「北辺」が記録写真的なものなら、こんなことは決して申し上げない。バイブルになったのには、それなりの理由がある。一枚一枚の芸術的な価値があってこそだ。やはり、先人たちの業績には、きっちり学ぶべきだ。復活蒸気の撮影地には、高価なカメラやレンズがずらりと並んでいるが、一番大切なのは撮る人の感性だ。安物フィルターの一枚分くらいの出費で、この珠玉の写真集を手元で眺められ、感性に磨きを掛けられるのだから、決して高いものではないだろう。

さて、最後になってしまったが、著者はご存知、大木茂さん、武田安敏さん、堀越庸夫さんのお三方で、大学生時代に出版されたものだ。原本の帯には、ご相談にも行かれたという巨匠廣田尚敬さんの書評がある(当時は廣田さんだった)。ここで、「北辺」の幾つかの作例をお示しすべきだろうが、大木さんのサイトでご覧になった方が的確だろう。堀越さんはといえば、ネコ・パブリッシングの「国鉄時代」で活躍されている。最新のVol.49では、その広田さんと堀越さんの記事が掲載されている。大木さん、堀越さんのサイトはリンクさせて頂いているので、そちらをクリック願いたい。

今「北辺の機関車たち」復刻版を予約すると、特典が付いているようだ。復刊ドットコム などから予約できる。価格は¥4,320 とお手頃だ。もし、「北辺」がお気に召されたら、大木茂さんの写真集「汽罐車」も必見だ。今では、この2冊はセットもののようになっている。


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大木茂さんの「汽罐車」と、現役蒸気の撮影に使っていた3台のカメラたち。今も全て完動品だ。


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テーマ:鉄道写真 - ジャンル:写真

  1. 2017/03/26(日) 00:30:00|
  2. 写真集・書籍
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:9
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コメント

再上梓

こあらまさま

先だってご本人からこのお話を伺った際、本当に嬉しいニュースでした。
無煙化後の夏でしたが、福岡から遥々兵たちの幻を追い求めて北の大地を目指し、青函連絡船乗船前に
鉄道公安官に職質されたのも良い思い出です(笑)
それにしても、NikonもさることながらPetri が渋い!!
  1. 2017/03/26(日) 09:59:48 |
  2. URL |
  3. 狂電関人 #vqoLnCUQ
  4. [ 編集 ]

あの感動をもう一度

狂電関人さん、

単なる復刻ではなさそうですから、きっと今の技術を駆使した素晴らしいものが期待できそうですね。
欲をいえば、復刻記念の写真展があったら面白そうです。きっと、お祭り騒ぎになると思います。

関電人さんは職質ですか。何となくそんな雰囲気だったんじゃないですか。目に見えるようですよ。(笑)
76年の北海道庁爆破事件の際に、近くをうろついていた友達が、しょっ引かれたことがあります。
体格のいい山男風でしたから、捕まえたくなったんでしょう。もちろん根っからの真面目なやつで潔白です。

このPETRI 35 F2 の写りはなかなかのものです。1957年発売ですから、ちょうど今年還暦です。
定価は¥22,000 だったそうな。結構高かったようです。当初は、オヤジのペトリを借りていました。
  1. 2017/03/26(日) 15:25:42 |
  2. URL |
  3. こあらま #bhV1oT4A
  4. [ 編集 ]

ありがとうございます

初版から46年、随分と時が経ちました。
昨年秋に「復刊ドットコム」の担当者から「復刊しませんか?」とのご連絡をいただきビックリしました。
3人で話し合いました。「あれはあれで終わりにした方がいいんじゃないかな」という考えも出たのですが、せっかくそう言って下さるならば、とやってみることにしました。三人とも納得「冥土の土産だな…」
やるならば… 最新技術で作り直そう、と決めましたね。
年末年始は、発売されたばかりのSIGMA Quatro H を使ってデジタルデータ化しました。今まで SIGMA SD Merillを使っていてそれなりに満足していたのですが、画素数も増えて解像度も上がったQuatro H の威力はすごかったです。
フィルムスキャナーも良かったのですが、画素数の大きなカメラによる複写はトーンがきれいです。
徐々に機材が良くなってくると、今までスキャンしたものももう一度やり直さねばならなくなり、辛いところです。
それはともかく、デジタルデータ化も終えて、親しいデザイナーに緻密な仕事をやってもらい、明日には印刷会社に入稿します。
印刷会社はぼくの「汽罐車」をやっていただいた萩原印刷、小さな会社ですが丁寧な良い仕事をしてくれます。

初版は1500円、オイルショックを挟み物価が急に上がった二版が2500円。
今回は何とか税抜き4000円にしてもらいました。

いくら良い本でも、高すぎるのは考え物ですよね。
「汽罐車」も一部では「採算度外視」といわれたのですが、そういうつもりではなく、武士の商法で失敗しただけです。
今回は立派な出版社がついていて下さり安心ですが、ご奉仕値段には違いありません。
オリジナル本をお持ちの方も、もう一冊、どうぞよろしくお願いいたします。

写真展も考えているのですが、なかなか難しいですね。大きなプリントで見るとまた違ったものです。何とかやってみたい、と考えていますのでご期待下さい。

こあらまさん、ありがとうございます。
  1. 2017/03/26(日) 17:41:21 |
  2. URL |
  3. 大木 茂 #-
  4. [ 編集 ]

3台体制とは

実は、鉄道讃歌復刻版の制作過程をSさんから
お聞きした際に、これは北辺も復刻されるのでは・・・と
期待していました。(ちょっとこの場では詳しいことは
ご勘弁ください)

5月目標と伺っていますので、ずいぶんとハッスルされたと
驚いております。

それにしても、ニコン2台にペトリとは豪勢な体制でしたね。基本ニコマート1台だった私とは力の入れ方から
違ったんですね。
  1. 2017/03/26(日) 17:48:24 |
  2. URL |
  3. マイオ #pcU4xDNY
  4. [ 編集 ]

心待ちにしております

大木茂さん、

「北辺」はいつか必ず復刊されると、誰もが思っていたはずです。それが復刊に至った理由だと思います。
ご本人たちにその気がなかったとしても、必ず復刊を申し出るところが現れるはずだと。
鉄道讃歌もそうですが、なかなか微妙というか、絶妙というか、上手い時期の復刊です。

最新技術で作り直されるということで、新しい北辺を体験できるとは、嬉しい次第です。
一から作り直すとなれば、ご苦労も多かったと思いますが、新たな技術を試すのも楽しそうです。
やはり、Quattro のダイレクトセンサーの威力は抜群ですか。ただ、最高画質で400MBにもなるそうですね。
もう、フィルムスキャナーも時代遅れですか。まだ、スキャンを続けていますが、考え直さないといけませんね。

そうでした。初版と二版でケースの材質も色も違っていました。確かに、46年後に4000円ですから格安です。
46年前の少年たちは、今やいいおじさま方ですから、この値段なら何の躊躇もないでしょう。
今の若い方のことを思うと、安いに越したことはありませんが、高いということはないと思います。

やはり、写真展もお考えでしたか。もしお手伝いできることがありましたら使ってやってください。

大したお役には立てませんが、こういう記事を書かせて頂けることを、感謝しております。
無時に復刊本が発売に至りますことを祈っております。
  1. 2017/03/26(日) 22:33:15 |
  2. URL |
  3. こあらま #bhV1oT4A
  4. [ 編集 ]

写真趣味

マイオさん、

さすがは業界通のマイオさん、色々なことを感知されていますね。
「北辺」チームは、写真展もお考えのようですから、もし開催の暁には、御三方のサインが一遍にもらえるじゃないですか。
そういうマイオさんにも、今度こそ、ちゃんとお会いできるかもしれませんね。

最初に八高線を撮り出した時はペトリ1台で、順次、ニコマート、ニコンFと増強していきました。
というわけで、3台体制は4年間くらいでした。ニコンFは新聞配達を半年やって、ようやく買えました。
その後も写真趣味を続けましたから、銀塩一眼だけで10台くらいは保存しています。
現在のメイン機はニコンのD700とD800Eですが、マイオさんと同様に小型化を考えています。
  1. 2017/03/26(日) 23:16:05 |
  2. URL |
  3. こあらま #bhV1oT4A
  4. [ 編集 ]

世に問うべき一冊

プレミア付の古本(1500円☓αのお値段)を最近になって買えた身からすれば口惜しい所もありますが。
最新印刷技術で蘇るとなればまた別の「北辺」と出会える事でしょう。
大木さんご本人の「あれはあれで終わりにした方が」というのも凄く分かる気がするのですが、
見たくても見られない人が多いというのでは出版文化という観点で由々しき問題ですし、
ある意味SLブームを超える様な撮り鉄ブームの現代にあって、今一度世に問うべき一冊と思いますね。
「SL写真の商業化」へのアンチテーゼだったというその志が、現代の撮り鉄さんにどう響くか。

しかしこあらまさんもあの当時自力でニコンFを手に入れるとは。気合の入り方が違いますね。
  1. 2017/03/27(月) 00:28:08 |
  2. URL |
  3. 風太郎 #ORZvdv76
  4. [ 編集 ]

進化する北辺

風太郎さん、

これだけ待望論があると、復刊ドットコムが放って置くわけがありません。
古本市場でも、ちょっと前までは、かなりの値が付いていましたから、人気は根強いです。
大木さんの、「あれはあれで終わり」も、「やるならば… 最新技術で」も、両方よく分かりますね。
「冥土の土産」には、ちょっと笑っちゃいましたけど、こちらも笑えない年になっていました。
いやいや、オリジナル本はオリジナル本です。こうなったからこそ、ゲットしておいた甲斐があったというものです。
新装復刊版は最新技術ということで、新旧比較が楽しめそうです。これも「ちょっとセンチメンタルな」と同じですよ。
そうですね。この写真集を通して、若い方々にも、先人たちの鉄道への熱い思いと気骨を感じ取ってもらいたいものです。

このニコンFから、こあらまの「Fの系譜」が始まるわけですが、F2は大学生の時。F3は社会人の時。
どう考えても、初代を手に入れるのが格段に難しかったです。それだけに、思い入れのあるボディです。
  1. 2017/03/27(月) 10:07:12 |
  2. URL |
  3. こあらま #bhV1oT4A
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  1. 2017/03/27(月) 19:21:19 |
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プロフィール

こあらま

Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

著作権について

拙ブログに掲載する写真、記事に関する著作権は放棄しておりませんので、無断使用、転載等はお控えください。

なお、拙ブログへのリンクは自由です。

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