駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

雪の小海線2017 落葉松林を往く

落葉松の林を縫って高原列車が駆け下る
かつてはここに落葉広葉樹の森が広がっていた

70012616.jpg
2017年2月 小海線

カラマツは東北南部から中部地方にかけての亜高山帯や高山帯に分布する日本固有種の落葉針葉樹であるが、その自然林は極めて少ないと言われている。多くは、育苗が簡単で成長が早いことから造林に用いられたものだ。ということは、その植林の理由を調べていけば、その土地の生い立ちの一端が垣間見られる。例えば北海道であるが、あたかもその土地の樹種のように思われがちだが、明治期、大正期に多発した山火事によって焼失した森林の造林に使われたのが始まりだ。以前、広尾線幸福の落葉松並木をご紹介したことがあるが、帯広地方の落葉松並木は、風から畑を守るための防風林として植林されたものだ。

さて、小海線の小淵沢から甲斐大泉、清里にかけての八ヶ岳南麓地域についてはどうだろうか。本来の植生は落葉広葉樹の雑木林だったが、第二次大戦終戦の年の1945年4月に、小淵沢から発生した山火事が折からの強風で燃え広がり、一面の焼け野原になったと大泉村史には記載されている。翌年からGHQの号令により、この地域への戦後の入植と開墾が始まったが、目の前に広がる焼け野原と厳しい冬のため入植者は根付かなかった。その対策の一つとして、日銭が稼げる造林事業をマッカーサーが指示した。その植林に使われたのがカラマツだった。かくして、焼け野原となった落葉広葉樹の森は、カラマツの森として再起することとなった。

それから70年。カラマツの木材としての価値は下がり、植林地の多くは放置されている。近年地元の自然保護グループなどにより、自然豊かな元の植生に戻すことが提言されるようになった。巨木が倒れて重大な被害が起きるようにもなり、徐々に伐採がなされるようになった。跡地には決まって広葉樹が植林されている。隣の代々続く地元旧家でも、当時カラマツの苗木生産をしたという。余った苗を植えたものが現在では30mを超えるまでに成長して厄介者になっている。伐採してケヤキとコナラの林に戻すとのことだが、初めから植えなければよかったと嘆いている。再び、人の手によって森がその姿を変えようとしている。何十年か後には、ここは紅葉の名所になっているかもしれない。


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テーマ:鉄道写真 - ジャンル:写真

  1. 2017/02/22(水) 00:30:00|
  2. 小海線
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

こあらま様
おそらく、カラマツの植林は低コストで、植林しやすかったのでしょうね。
植えなかった方が良いと言っても、土地や列車をずっと守ってきたのですから、
その役割は十分に果たしてきたと思います。
何十年か後の紅葉の名所も、それも長い楽しみかもしれません。
ps >ヒッチハイクで脱出 凄いですね、驚きました。
昭和のワイルド?な旅の感じが、良いですね(笑)

  1. 2017/02/22(水) 15:43:56 |
  2. URL |
  3. hmd #MjfzkNmc
  4. [ 編集 ]

カラマツ林

こあらまさま

また一つ、勉強になりました。
九州に生まれ育った電関人にとって人工林といえば杉林で好きじゃありませんが、針葉落葉樹のカラマツ林は絵にもなるので好きです。
確かに考えてみれば、自然林ではありえないわけですが、自然林への回帰運動というのもとても
気になりますし、もっと言えば日本の林業を復活させれば
もっといろんな問題が解決するわけで、違った角度では林業復活イコール林鉄なんて淡い夢を描いている
電関人でもあります。。。
  1. 2017/02/22(水) 17:45:46 |
  2. URL |
  3. 狂電関人 #vqoLnCUQ
  4. [ 編集 ]

広葉樹化

hmdさん、

お隣さんが、勿体ないからと植えたのは、自分の畑の脇の雑木林でしで。ちょっと説明不足でしたね。
薪にもならない。榾木にもならない。落葉が納屋に積もるはで、良いことはあまりありません。
伐採費は材の提供でとんとんということで一銭にもならないし。もしこれがケヤキだったらです。
我が家にも、諸事情でカラマツと檜を植林した木立があるのですが、順次伐採して、広葉樹化しています。
もちろん、防風や防雪の落葉松並木は、それなりに役に立っていますよ。

秘境駅からのヒッチハイク脱出というのも、過去の話になってしまえば面白かった経験です。
国鉄時代、時刻表にも載っていない仮乗降場というのがありまして。間違って降りて青くなるというのもありました。
  1. 2017/02/23(木) 00:40:22 |
  2. URL |
  3. こあらま #bhV1oT4A
  4. [ 編集 ]

落葉松

狂電関人さん、

林業というのは、なかなか気の長い事業でして、商品価値が生まれるのは、何十年も先で次の代です。
先々どうなっているかは、運を天に任すほかありませんが、どう見ても落葉松より杉、檜の方が安定株でしょう。
私的には九州の杉の美林も絵になると思いますけどね。日向、飫肥、日田などなど。
確かに、落葉松というくらいですから、新緑や紅葉や冬木立が楽しめますから、こちらの方が季節感はありますね。
近年、途上国の森林保護もあり、輸入材が高騰しており、国産材にも目が向けられるようになってきているそうです。
それでも、森林鉄道の復活はやはり妄想でしょう。森林鉄道などのナローに手を出さなかったのが大いに悔やまれます。
  1. 2017/02/23(木) 00:42:47 |
  2. URL |
  3. こあらま #bhV1oT4A
  4. [ 編集 ]

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Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

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