駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

線路の向こうに 金木

地吹雪ツアーにストーブ列車、この地の苦境を逆手に取った発想だ
そんな、津軽を往く「おらどの鉄道」にも、危機が忍び寄っている

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2016年10月 津軽鉄道 金木

唐突だが、国土交通省の国土交通白書などの資料をお読みになったことがあるだろうか。そこには、地方鉄道について、次のような主旨のことが書かれている。「効率と利便性の観点から、バスなどへの転換を図る」。「自立的な経営を目指す事業者のみに支援を行う」。この方針に異議を唱えた政党、団体は聞いたことがないので、国の基本方針として了承されているのだろう。災害運休が続く只見線や日高本線、大幅赤字の三江線へのJRの対応は、まずバスへの転換を提示する。バスは嫌だとなれば、上下分離方式を提案して自立的経営を迫る。これは実は国の方針であり、国が黙して語らないのはそのためだ。JRの赤字ローカル線で一度事が起きれば、現状では原則バスか三セクしか選択肢はないということだ。山田線の沿岸部も、この方針に沿って、結局三陸鉄道へ移管予定だ。

唯一例外的に補助を受けてきたのがJR北海道だ。勿論他の二島会社と共に、国鉄債務の返済も免除されている。国は、分割民営化の際に、当時の赤字額に見合う利息が得られる経営安定化基金を設け、その範囲内で経営を続けさせる算段だった。しかし、その後の市場金利の低下により穴埋めができなくなり、利子補給の形で国が赤字補填を続けてきた。つまり、財務的には国鉄時代と何ら変わりがないことになる。赤字は凡そ毎年300~400億円で推移してきたが、今年度の赤字額は台風災害などもあり500億円に上るとみられている。今回のJR北海道の発表は、一連の不祥事で民意の逆風も弱いだろうと判断した政府が、この時とばかりに失われた30年を清算しようと、JR北海道に対して冒頭の二原則に沿った措置を迫った結果であろう。

さて、前置きが長くなってしまったが、今回の話題は、二原則の二番目だ。津軽鉄道株式会社は、公的補助を受けているものの、自立的経営を続ける地方鉄道会社だが、国土交通省が主導する緊急保全整備事業により存続が危ぶまれている。ご存じのストーブ列車が特別料金になってしまったのもそのしわ寄せだ。この事業の仕組は調べるとそう簡単ではないが、要は、老朽化した設備や旧式の保安システムを、改修、更新するための、国の補助金政策だ。補助金事業というのは、監督権を翳した半ば強制的なものだ。少しでも利権が生じると見るや、すかさず乗り出してくる。まったくあっぱれな非情なビジネス感覚だ。自己責任の考え方が乏しい国民性が、その流れの根底にあることは否めないが、「おらどの鉄道」を死守する地元にとっては弱り目に祟り目だ。どんなに安全な鉄道になっても、存続できなくなれば全ては黙阿弥だ。腕木式信号機、木製の電柱、裸電球の街灯などなど、昔ながらの眺めだが、だったらどうだというのだ。あまりにも不安全では困るが、その地域の身の丈に合った鉄道というものがあるだろう。対する都市部大手私鉄の文化の香りのない冷めた巨大コンクリート設備にしても、近い将来、絶望的な負の遺産に帰するかも知れない。


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太宰治の生家の斜陽館 まさに斜陽が美しい館だ


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Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

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