駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

青葉の山陰線を往く その13 風雲惣郷川橋梁

低気圧の通過で北風が強まり、風速計が勢いよく回っている
夕闇迫る風雲の惣郷川橋梁にキハの灯りが映った

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2016年4月 山陰本線 宇田郷

荒天の一日を撮り続けて、夕刻の宇田郷の惣郷川橋梁に辿り着いた。低気圧が通過し、雨は弱まったが、吹き返しの冷たい北風が強まった。橋梁上の風速計は、勢いよく回り続けている。案の定、ダイヤが乱れ始めた。橋の袂に到着すると、直ぐに想定外の遅れていた上りが、キハ40の単行で通過した。何とか手持ちで捉えた後、ターゲットの列車に合わせて準備を始める。しかし、その列車がなかなか現れない。

海から吹きつける潮風と雨は容赦ない。ただ、ターゲットはたった1本の列車だ。おいそれとその場を離れる訳には行かない。定刻から10分、20分と時間だけが過ぎるが、一向にキハは現れない。空を流れる黒雲は、形を変幻に変えて足早に過ぎ去り、夕方の光はその明るさを刻々と失ってゆく。感度と露出調整を繰り返し、いよいよ実質目一杯の感度設定になった時、50分遅れでキハ47の2連が橋梁上に姿を現した。既に夕闇が迫り、列車の室内灯が車窓を照らしていた。

この橋梁にこの時刻に行ったのは、もちろん夕日を期待してのことだ。夕焼けの紅の空に浮かぶキハを思い描いていた。ただ、そんな夕日や夕焼けの秀作は山ほど見てきた。 素晴らしい夕日に巡り合える確率と、恐ろしい空模様の荒天に出会える確率はどちらが高いかは分からないが、少なくともカメラマンがレンズを向けたがるのは明らかに夕日の方だ。負け惜しみもあるが、期せずして撮ることになった風雲の惣郷川橋梁も決して悪くはない。朝から我慢して撮影してきたことへの、細やかなご褒美といったところだろうか。


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テーマ:鉄道写真 - ジャンル:写真

  1. 2016/06/05(日) 00:55:07|
  2. 山陰本線
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

心の山陰本線

世界はお天気やきれいな夕焼けの日ばかりでない事は誰もが知っていますが、
既視感のある写真に安心し、ついそれを追ってしまうのは表現者としての逃げでありましょう。自戒を込めて。
風雪に負けずカメラをしまう事がなかったのは、
顧みる人は少なくとも、こあらまさんの心の内と共鳴する山陰本線がそこに在ったからでしょう。
  1. 2016/06/06(月) 22:46:15 |
  2. URL |
  3. 風太郎 #ORZvdv76
  4. [ 編集 ]

日本海の二つの顔

風太郎さん

日本海というのは、二つの顔をもった海だと思います。
ひとつは、晴れた日の、日本一美しい紺碧の海と、変化に富んだ海岸線。
もうひとつは、冬型になった時の、どこまでも深く沈んだ鉛色の海原と、北から押し寄せる黒雲。
どちらも日本海沿岸の風土を形作る要素であり、どちらも欠くことのできない被写体です。
そのことを、よくご存じなのは風太郎さんですし、私もそう思っています。何時も二つの日本海が自分の中に同居しています。
ですから、この眺めは山陰線らしい風景の一つだと思いますし、何時までも列車を待てるというものです。
このシリーズもそろそろ終盤ですが、残りは日本一美しい山陰海岸で終わりになる予定です。
  1. 2016/06/07(火) 02:15:39 |
  2. URL |
  3. こあらま #bhV1oT4A
  4. [ 編集 ]

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こあらま

Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

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