駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

青葉の山陰線を往く その9 温泉津雨情

温泉津温泉は歴史ある温泉と風情ある街並みが売りだ
ただ、車社会となった今、ちょっと勝手が違ってきたようだ

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2016年4月 山陰本線 温泉津

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温泉津温泉は開湯から1300年と、とびきり歴史のある温泉だ。かつては石見銀山の積出港として栄え、山陰道の宿場町でもあった。この温泉街は国の重要伝統的建造物群保存地域となっている。また、2007年に登録された世界遺産「石見銀山遺跡とその文化的景観」にも含まれている。温泉街には、開湯以来という元湯泉薬湯と、浜田地震によって湧出した風情ある佇まいの震湯薬師湯の二軒の公衆浴場がある。薬師湯は全国に12箇所しかない日本温泉協会の最高ランクの温泉として認定され、温泉好きには外せない場所だ。

人影の殆どないこの薬師湯からの帰り道、地元のお年寄りに話を聞くことができた。この温泉は、港によって栄え、鉄道によって栄え、そして道路によって衰退したとのことだ。ご覧の通り、この温泉街は建て込んでいるため、駐車場が極めて少ない。港や駅からの湯治客を受け入れるのには支障はないが、車社会では何とも勝手が悪い。皮肉にも、風情ある街並みが観光客を遠ざけてしまった。現在の人気のない温泉街からは想像ができないほどの賑やかさだったという。お年寄りは、最後に「今は空き家ばかりさ」と吐き捨てるように云い、元旅館風の古びた軒下の潜り戸に消えていった。

ここまでずっと、そこそこの天候が続いて来たが、温泉津の朝は雨となった。雨に濡れるホームで、新旧のキハが交換する。雨の列車交換も旅情があるが、大降りの雨の中、苦し紛れに見つけたアングルだ。今回の山陰線の核心部で、最も楽しみにしていたこの先の区間の初日は、風雨の荒天に見舞われることになった。1日停滞しようかとも思ったが、既に遅れ遅れになった旅を巻き上げなくてはならない。ありのままの天候をそれなりに捉えられればいいのだが、腕があっての物種だ。どこまで撮れるかは分らないが、荒天の中、さらに西へと旅は続く。


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テーマ:鉄道写真 - ジャンル:写真

  1. 2016/05/28(土) 00:40:53|
  2. 山陰本線
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

盛衰

「港によって栄え、鉄道によって栄え、そして道路によって衰退した」という、温泉津の現状はいろいろな示唆に富んでいますね。
車という交通手段を推し進める施策は旧来の交通手段を衰退させるものでもあり、
結局利用者の選択肢を狭めるものでもあるようです。
この国の施策はあまりに短兵急な整理統合を進め過ぎているのかも知れません。

タラコ色はそぼ降る雨の日に合うようですね。しっとりとした情感があります。
広い山陰本線、この駅は車窓に見送るばかりでしたが、この素敵な温泉街に迷い込んでみたくなりました。
  1. 2016/05/29(日) 23:11:33 |
  2. URL |
  3. 風太郎 #ORZvdv76
  4. [ 編集 ]

温泉街の灯

風太郎さん、

この地は、読んで字のごとくの場所で、この温泉街のメインストリートは温泉津港へと続いています。
港はリアス式海岸の入江にありますから、温泉街は先に行くほど、狭くなっています。
こんな街並がよくぞ残っていてくれたもので、タイムスリップしたような気分になれる場所です。

山陰航路が栄えていた頃、船が着く度に、この道を港から客がやって来たのでしょう。
その航路は山陰鉄道の開通で消え、その駅も今や乗車人員が100人に満たない簡易委託駅です。
ものの栄枯盛衰は致し方ありませんが、あまりにも多様性も将来性も無い政策には困ったものです。
今のままでは、「国破れて道路あり」になりかねません。「道が出来ると集落が消える」と言われて久しいです。
温泉津温泉などは、いっそのこと車を全部締め出して、船でしか行けないようにすれば面白いと思いますよ。

ちなみに、この温泉街を訪れるなら、やはり夜がお勧めです。
  1. 2016/05/30(月) 02:37:48 |
  2. URL |
  3. こあらま #bhV1oT4A
  4. [ 編集 ]

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こあらま

Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

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