駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

「徳満」という名の駅

かつて、この駅でもこんな光景が見られたが、今や思い出だけの世界になってしまった
生れてくるもの 去っていくもの 容赦なく過ぎ去る年月に、留まることなく時代が移ろいでいく

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1975年3月 宗谷本線 徳満

今年も明日の大晦日を残すだけとなり、早くも拙ブログの2015年の最後の記事となった。今年も色々なことがあったが、最後はどんな記事で締めようかと考えた末に、選んだのがこの3枚だ。

旅や鉄道を愛する者であれば、必ず心に残る駅がいくつかあるはずだ。宗谷本線の「徳満」は、小生のそんな駅だ。この時は、何を思ったのか、わき目も振らずに、東京から列車を乗り継ぎこの地に真っ先にやって来た。天塩線開業時に建てられた大正生まれの駅舎は、変わらずにサロベツ原野に立ち続けていた。

乗って来たキハがこの駅で交換となった。小雪が降る中、キハ22同士がひっそりと発車の時間を待っている。旅の移動の折々で目にしてきた眺めだ。エンジンのカラカラというアイドリング音が聞こえてきそうだ。車内の木張りの床のオイルの匂いが思い出される。

建てつけが悪くなった駅舎の戸は、上手く閉まらず、がたがただった。ここの待合で、ご馳走になったお茶をすすりながら、ストーブに暖をとりながら、何度窓越しに降りしきる雪を眺めたことだろうか。駅舎の反対側にはサロベツ原野が広がり、夕日がきれいだった。何があったわけでもないが、そんな静かな時間の流れが好きだった。

サロベツ原野に小さくなるキハを、タブレットを後手にした長靴姿の駅長は一人いつまでも見送っていた。
慌しさに任せて、毎日が近視眼的になりがちなのは、俗世間に暮らす人間が陥りやすい悪い癖だ。
一年の終わりくらいは、あの日の駅長のように、遥か彼方を見つめるように、今年を振り返り、来る年に思いを馳せてみよう。

今年もありがとうございました。良い年をお迎えください。


(追伸) 風太郎さん が、ほぼ同じアングルの、13年後の1988年の徳満駅の姿を掲載してくれました。大正生まれの駅舎は健在です。無人化され、構内も棒線化されていますが、まだ古き良き時代の面影があります。さらに12年後の、2000年にこの木造駅舎は解体され、味気ない現在の姿になってしまいました。地方には、こうやって衰退していく小駅が数多くあります。この春も、北海道の幾つかの駅が地図上から消えます。一抹の淋しさを覚えますが、これがローカル線が抱える偽らざる現実です。


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テーマ:鉄道写真 - ジャンル:写真

  1. 2015/12/30(水) 00:59:14|
  2. 宗谷本線
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

レール遥か

徳満ですか。下車して写真を撮ったのは28年前の冬の事です。
その時は駅舎は残っていたものの既に無人化され、冷え冷えとした景色が広がるばかりでした。
暗い写真ではありますが、そのうちコラボアップでもしましょうか。

確かにホームの駅長の様に、足許ばかりでは無くレールの遥か先への目線を忘れないようにしたいものです。
遠い過去になった景色から何かの真実を教わる気がするのも写真の力でありましょう。

こちらこそ沢山の刺激を頂きました。来年もよろしくお願いいたします。
  1. 2015/12/30(水) 22:10:01 |
  2. URL |
  3. 風太郎 #ORZvdv76
  4. [ 編集 ]

遠い眼差し

風太郎さま、今年もありがとうございました。

この記事の1975年は現役蒸気最後の時で、キューロクの貨物だけが残っていました。
徳満には、その後も無人化される前に数回訪れています。どんな画があるのか探してみます。
なかなか渋いコラボになりそうで、面白いんじゃないですか。
2013年には、下車はしませんでしたが通りました。残念ながら、変わり果てた姿になっていました。

徳満に続く、兜沼、勇知、抜海、そして二つ手前の下川などは、近視を直すにはいい駅でした。
今でも抜海を訪れる旅人が絶えない理由は、この駅長の視線の先にあるんでしょうね。

いやいや、風太郎さんには色々と感じさせて頂きました。そして、何よりも活力をもらいました。
来年もよろしくお願いいたします。
  1. 2015/12/31(木) 02:19:57 |
  2. URL |
  3. こあらま #bhV1oT4A
  4. [ 編集 ]

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こあらま

Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

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