駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

秋色只見線 最終話 只見線再び

ここからの錦秋の眺めは本当に素晴らしい 鉄橋の風情も現役時代と変わらない
40年余りの時を挟んで、変わることのない列車風景を楽しめることを、素直に喜ぼう

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2015年10月 只見線 第三只見川橋梁

雑誌「鉄道ファン」の1971年11月号(No.127)に「カラーグラフ あいづ線のC11」という記事が載っていた。田沢義郎氏、諸河久氏など錚々たる方々のカラー写真で構成されていた。その最後を飾っていたのが、このアングルの木村健太郎氏の錦秋の第三橋梁だ。後追いの白煙の貨物列車が写っていた。その画が小生の只見線の原風景となった。こんな素晴らしい眺めの橋梁があるのかと思った。只見川の水色と谷の錦秋が深く記憶に残り、その翌年から小生の只見線の旅が始まることになった。

さらに、この雑誌を捲っていくと只見線全通の記事が載っている。開業はこの年の8月29日だ。そこには、小出駅でテープカットをする関係者の中心に、得意げな薄笑いを浮かべる、通産相時代の越後のドンの姿があった。彼の一喝が二つの長大トンネルを貫いてしまったということだ。線名も起点側の「会津線」ではなく、只見線となった。越後側に統合されたということだ。

そして、44年後の今日、蒸気を追う愛好家の腕も美意識も、カメラの性能も大きく進化し、当時の所謂「鉄道車両写真」から「鉄道風景」へと変化した。この界隈でも、プロも顔負けの秀作が溢れている。ただ、若かりし頃に記憶したあの鉄道ファンの画が、依然として原風景であることには変わりはない。

只見線が無煙化されたのは1974年10月だ。その後、現役時代と変わらぬ光景が再現されることを、誰が予想しただろうか。現役を追ったものとしては、復活蒸気には何らかの違和感が付きまとう。その為か、現役派の方々は、どんどん高見を目指すようになったのかもしれない。
ただ、この只見線の車両は限りなくあの日の姿の再来だ。沿線の景観もよく保存されている。あの時代、稚拙なカメラアイで体力任せにフィルム撮りしたあのシーンを、大きく進化した機材を使って、どの程度成長したかは分からないが、現在の感覚で再び撮影できることを、素直に喜びたい。

一方、あの災害で不通となった区間は、ウェブの地図では、もう変わらない固定事実かのように、色分けされて「運休中」と記されている。既に運休区間は鉄道遺産のようだ。施設がそのままであるだけに、より痛々しい。さすがに、今回は初めから記事にする気はなかったが、画だけは残している。
輸送手段としての只見線の役割は、既に終わっているのかもしれない。しかし、この只見川橋梁群の鉄道風景は世界的にも屈指のものだ。知恵を絞って、この掛け替えのない日本の鉄道を残さなければいけない。再び只見線の連載記事を書けることを祈って、「秋色只見線」の旅を終わりたい。

この連載で、ご助力を頂いた大木茂さんには、心よりお礼を申し上げます。


大木さんのサイトが更新されています
ちょっと忙しくしている間に、大木茂さんのサイトが更新され、「寫眞帳」に「肥薩線矢岳越え・大畑」がアップされていました。これは衝撃です。肥薩線山線という、現役蒸気を象徴する絶対的なモチーフもさることながら、「モノクローム」の世界が圧倒的な臨場感をもって迫ってきます。写真を志すものにとっては、いろいろな面で、必見の作品の数々です。次の写真集は「肥薩線山線」と囁かれていますが、その片鱗を垣間見るようです。この過酷かつ興味の尽きない矢岳越えが、大木さんをプロの道へと導いたのかもしれません。
もう何回も見返していますが、上手く言えませんが、今回の更新には大木さんの並々ならぬ意地のようなものが感じられ、怖いくらいです。
大木さんの「モノクロームの残照」は こちら から。 


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2015年10月 只見線 会津坂下


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2015年10月 只見線 薮神


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2015年10月 只見線 第三只見川橋梁


1か月に渡る長き旅となってしまいましたが、ご覧いただきありがとございました。


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テーマ:鉄道写真 - ジャンル:写真

  1. 2015/12/02(水) 00:41:25|
  2. 只見線
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

私にとって

ここの原風景は、RF誌ではなく、廣田さんの
「四季のSL」朝日新聞社昭和46年9月刊行の
一枚です。(3年前にご本人に署名をいただきました)

恐らく立ち位置はほぼ同じ。(当時はスノーシェッドは
ないけど)なお、撮影当時、泉氏は4歳との記述も。
ただ、レンズが70mm(35mm換算)くらいか。
廣田さんは35mmの以前に4X5も使われていたので、正確なところは不明ですが。

狙いとしては、手前側川際(所謂「天狗岩」の川に
接する辺り)の見事な紅葉と汽車の白煙の対比。
汽車は逆光で白煙が映える画です。

当時から左奥の高圧鉄塔がそびえたっています。
ただ、さすがは廣田さんで、構図とコントラストで
高圧鉄塔の存在感を見事に殺しています。

この写真と、会津線の紅葉の中の流し撮り、そして
水沼の第4橋梁を紅葉の中、斜向かいから撮っている(完璧な水鏡)、これが私にとっての永遠のお手本になっています。水沼橋梁の画については、未だに
立ち位置がどこだったのかわかりません。
(川沿いの岩にでもしがみついたのか?)

巨匠の作品をお手本にすると、生涯どうしようもないですね~(笑)
  1. 2015/12/02(水) 21:31:53 |
  2. URL |
  3. マイオ #pcU4xDNY
  4. [ 編集 ]

原風景

マイオさん、コメントありがとうございます。

マイオさんは、大御所ですか。
「四季のSL」は、手の出せる値段でしたが、買えませんでした。
そんなに素晴らしい三橋が載ってますか。
小生の場合、「灯」の原風景の一つになったのが廣田さんの作品でした。

インターネットがなかった当時は、数少ない雑誌や写真集の画が頼りでしたからね。
一番最初に目に入った写真が、原風景になることが多かったです。

この場所にはつい足が向いてしまいます。
いい写真を撮りたいとかじゃなく、この場所が好きなんですね。
何故かこの時間帯は鉄塔も高圧線も目立ちません。加工したわけじゃありません。
日向ぼっこをしながら、この風景を眺めていましたが、まさに至福の時でした。
本当は、ファインダー越しでなく、列車を眺めたい場所です。

小生も色々な原風景がありますが、同じようには写せませんし、そのつもりもありません。
ただ、そういった写真が、気持ちの中で、何らかのマイルストーンのようなものになっています。
原風景があるってことは、幸せなことだと思います。
  1. 2015/12/03(木) 01:07:33 |
  2. URL |
  3. こあらま #bhV1oT4A
  4. [ 編集 ]

只見線の旅、楽しめました♪
とくに只見の蒸気写真があふれるなかで、あえて「只見を走る鉄道」にこだわった構成にされたところがとても気に入りました。
復活蒸気にもかかわらず、現役とかわらぬ印象をもてたのも、旧客の存在だけではなく、日々の鉄道風景の流れのなかに蒸気の写真が組み込まれて登場したからでしょう。
それにしても第3橋梁は、いつ見ても美しいですね。
現役時代に見た風景そのものです。
あえて違い言うならば、右サイドがだいぶ見通しがよくなって、広がりが感じられるようになったことでしょうか。
私が訪れた1973年11月は、残念ながら雨の会津になってしまいましたが、それでも紅葉がしっとりぬれてとても綺麗でした。
そのうえ、この風景をなんと独り占めできたこともラッキーでした。
今回は、おそらくまわりにかなりの人かいて、賑やかだったことでしょう。
いつかまた訪れたい撮影地です。

いつかまた訪れたいといえば、大木さんの矢岳越え、もう圧倒されて画面に釘付けです。
私も大畑の駅に泊めさせていただいて撮影にのぞんだ一人ですが、いかんせん、まだ中学生。
さすがにあんなすごい写真は撮れませんでしたが、なつかしい風景のなかで、カマたちが力闘する姿がよみがえってきました。
次回に予定されているという山線の写真集、いまから楽しみです。



  1. 2015/12/05(土) 22:01:37 |
  2. URL |
  3. まこべえ #2XsKFzVg
  4. [ 編集 ]

あの日の光景

まこべえさん、

まこべえさんがおっしゃるように、小生が撮りたいのは、今まさにある現役の鉄道風景です。
復活蒸気も今ある風景の一つとして撮ればいいのですが、逆に難しいお題になってしましますね。
今回は、復活蒸気に合わせて只見線を撮ることにしましたが、改めて只見線の奥深さが分ってきました。
次回は、人だかりの蒸気を避けて、静かな只見線の撮影旅を楽しもうなどと画策中です。

第三橋梁は好きな場所で、どうしても、ここからのC11をもう一度見たかったものですから、
人が多いのを承知で行きましたが、やはり昔と変わらぬいい場所で、写真は別として、満足できました。
小生が気に入っているのは水の色です。面白いもので、角度のせいか、背景のせいか、橋梁毎に水の色が違うように思います。
この時は10人程の同業者でしたが、皆さんと和気あいあいで待ちましたから、それはそれで良かったと思います。
まこべえさんも是非行ってみてください。復活蒸気というのを忘れるぐらい、あの日の光景です。

大木さんの大畑には参りました。脱帽です。
こんなのを出されてしまうと、これから現役画をアップし難くなってしまいますね。(笑)
肥薩線は必ず再訪するつもりです。大畑、矢岳、真幸の3駅のホームにまた立ちたいです。
これは小生にとっても、最高にセンチメンタルな旅になるはずです。
  1. 2015/12/06(日) 00:54:32 |
  2. URL |
  3. こあらま #bhV1oT4A
  4. [ 編集 ]

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Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

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