駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

秋色只見線 第9話 田子倉残照

湖畔のスノーシェッドの中で、静かな眠りについた田子倉駅
雪に閉ざされる前の、一瞬の彩が湖面に映える

70006318.jpg
2015年10月 只見線 田子倉

田子倉駅は2013年3月に廃駅になってしまった。六十里越トンネルと只見トンネルの間の田子倉湖畔に僅かな開口部があり、スノーシェッド内に田子倉駅が設けられていた。
もう40年近く前になるが、この駅に下車したことがある。当時、東北ワイド周遊券なるものがあり、磐越東西線より北と会津線と只見線の一部が周遊エリアだったと思う。東京からそのエリアへの行き帰りのルートに只見線があった。この只見線ルートは国鉄内でもあまり知られておらず、周遊券の裏の小さな文字の記載を、改札や検札で説明した覚えがある。

そうこうして辿りつた田子倉駅だが、折からの大雨で不通になり、この極めつけの秘境駅に取り残される羽目になった。手持ちの食糧があったので、一晩駅のお世話になることも考えたが、寝るには気味のいい駅ではない。そこで、駅前の国道からヒッチハイクでの脱出となった。止ってくれたのは、東京で電気工事の会社を経営する方で、新潟駅まで乗せてもらった上に、食事もご馳走になり、帰り際に、困ったら訪ねて来いと名刺までくれた。話をしていて、この方が何と元反社会的勢力と判ったのだが、その道に入ることになった切っ掛けや、どうやって娑婆に戻ったかなど、壮絶な話を聞くことができた。その痕跡は体にも残っていた。こんな話が何の役に立つかは分らないが、決して学校では教えてくれない貴重な授業だった。


80002875.jpg


田子倉駅が廃止されたため、只見-大白川間が一駅区間の20.8kmとなり、JR東日本管内の駅間距離の最長区間となった。東北地方最西端の駅も只見駅に移った。2011年の新潟福島豪雨の災害で只見駅は一時営業休止に追い込まれたが、会津若松側の終着であったはずの駅は、今は小出側の終着駅となって生きながらえている。
ただ、災害の前後で只見線のダイヤは大きく変わってしまった。以前は、会津と越後間で通勤通学も出来なくはなかったが、今はもう無理だ。そんな事情があってか、只見町発案の魚沼市との交流の歴史を模った「縁結び」ラッピング列車が走っている。只見町の頼りは、もう魚沼市しか残っていないようだ。


70006323.jpg
2015年10月 只見線 只見


この六十里越えの通学は無理だと書いたが、実際には今でも僅かながら通学する生徒がいるようだ。ただし、只見高校の生徒限定で一方通行だ。少し、この六十里越の越境通学について追記しておこう。

只見町には生徒数約120名の県立只見高等学校があるが、ご多聞に漏れず、生徒数の減少には頭を痛めている。そこで、これまたよく聞く話だが、町では山村教育留学制度を設け、奥会津教育センターなる寮を建設し、学区外からの生徒の募集に力を入れている。留学生の寮費や、只見線利用の帰省のための交通費などを、町の財政で補助してくれるという特典が付いている。主に入広瀬からの只見線越境通学者に対しても同様の便宜を払っているようだ。
新潟側からの始発の只見到着は9:15だ。こんな時間では普通は高校生活は営めない。積極的な除雪がないため、冬の運休は1日、2日じゃないので、3年で卒業出来るかも覚束ない。寮や下宿の用意なくしては厳しい。町は生徒の維持と只見線の利用促進を同時に狙っている。
こういった在り様をどうこう言う気はないが、少なくとも普通の高校生の普通の通学とは違うものだ。1日3往復というのは鉄道としての限界ダイヤだが、通勤通学時間帯に列車がないのは、すでに限界を越えており、特殊事情をもった生徒しか利用できなくなっていることは確かだ。
現在只見駅の乗車人員は1日20数人だ。町にしてみれば越境通学の数人の利用も決してしい小さい数字では無いのかもしれない。それだけ、只見町も只見線も追い詰められているという事だ。


スポンサーサイト

テーマ:鉄道写真 - ジャンル:写真

  1. 2015/11/19(木) 01:44:28|
  2. 只見線
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
<<秋色只見線 第10話 平成版「坂下の朝」 | ホーム | 秋色只見線 第8話 高田暮情>>

コメント

こあらまさん、実は私、今年の夏に初めて訪れたんです。ずっと行ってみたいと思ってはいましたが、なかなか越えられない六十里越えでした。田子倉での出会い、只見の現状などあの風景を思い出しながら拝見いたしました。只見発の最終列車(と云ってもまだ夕方ですが)には高校生が数人乗車しており、地元の足として活躍していることがとても嬉しく思いました。今年の冬は雪に埋もれた大白川に立ってみようかと考えています。
  1. 2015/11/19(木) 11:11:33 |
  2. URL |
  3. ぎんちゃん #vqm8JHu.
  4. [ 編集 ]

近くて遠い越後の只見線

ぎんちゃんさん、コメントありがとうございます。

そうですか。隊長さんも六十里越に行かれましたか。越後の只見線は、なかなか近くて遠い場所です。
現役蒸気も、会津側よりずっと早くなくなってしまいましたから、印象も薄いんでしょうね。

そうそう、只見高校の越境通学の件は、なかなか難しいところです。これを会津と越後の交流と呼べるのか。
この日は、3往復全ての列車を見送りましたが、乗客は殆ど乗っていませんでした。
生徒は、毎日は行き来してないんじゃないかと思われますが、目撃されたのですから、越境者は確かにいるんでしょうね。
只見高校のことを書き足したら、やたらと文字ばかりの記事になってしまいました。情報ありがとうございました。

只見線はやっぱり雪の季節が一番の狙い目だと思います。特に越後側はそうです。私奴も雪の只見線を思案中です。
今回見て回って、何となく嫌な予感がしたので、急がなくちゃと思っています。
  1. 2015/11/20(金) 00:49:45 |
  2. URL |
  3. こあらま #bhV1oT4A
  4. [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://koarama101.blog.fc2.com/tb.php/173-f61dbe5f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

こあらま

Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

著作権について

拙ブログに掲載する写真、記事に関する著作権は放棄しておりませんので、無断使用、転載等はお控えください。

なお、拙ブログへのリンクは自由です。

最新記事

最新コメント

リンク

月別アーカイブ

最新トラックバック

カテゴリ

小海線 (106)
飯山線 (20)
宗谷本線 (13)
天北線 (1)
興浜北線 (1)
深名線 (1)
石北本線 (7)
渚滑線 (2)
湧網線 (1)
相生線 (3)
釧網本線 (3)
根室本線 (2)
池北線 (1)
広尾線 (2)
留萌本線 (7)
札沼線 (1)
函館本線 (36)
室蘭本線 (8)
千歳線 (1)
日高本線 (3)
江差線 (11)
大湊線 (5)
津軽鉄道 (1)
五能線 (3)
八戸線 (3)
花輪線 (1)
三陸鉄道 (2)
釜石線 (8)
秋田内陸縦貫鉄道 (2)
由利高原鉄道 (1)
米坂線 (2)
磐越西線 (1)
日中線 (3)
只見線 (43)
真岡鐡道 (14)
東北本線 (1)
総武本線 (1)
中央東線 (3)
東海道本線 (2)
八高線 (9)
秩父鉄道 (7)
西武池袋線 (1)
西武山口線 (1)
江ノ島電鉄 (10)
箱根登山鉄道 (3)
御殿場線 (2)
岳南電車 (6)
中央西線 (1)
関西本線 (2)
宮津線 (1)
山陰本線 (24)
播但線 (1)
姫新線 (3)
津山線 (1)
芸備線 (6)
木次線 (1)
三江線 (3)
山口線 (5)
日豊本線 (14)
筑豊本線 (9)
日田彦山線 (2)
伊田線 (1)
後藤寺線 (1)
田川線 (2)
唐津線 (3)
松浦線 (3)
佐世保線 (1)
大村線 (1)
長崎本線 (2)
久大本線 (4)
豊肥本線 (2)
高森線 (2)
肥薩線 (18)
くま川鉄道 (1)
日南線 (2)
宮之城線 (1)
指宿枕崎線 (2)
写真集・書籍 (4)
鉄道模型 (1)
ご挨拶 (0)
はじめまして (3)
未分類 (1)
島原鉄道 (1)

写真に写った方々へ

鉄道は人を運び、人に見送られ、人に支えられています。時として人が主役になります。

撮影の際には、なるべくご了解を頂くようにはしておりますが、そうできない場合もあります。写った方々と見る方々が不快に思われないようなものに限っていますが、ご本人やそのご関係者の方で、掲載に不都合がある場合には、メールでご連絡ください。 また、登場する鉄道員の方をご存知でしたら、差し支えがなければご紹介ください。

こあらまへのメール

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

ご来場者累計

RSSリンクの表示

QRコード

QR