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駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

西武鉄道過去帳 ジャンボE851

東京都心のコンクリート群は武甲山が移動したものと云われている
そのセメントを運び出すべく、西武にスカーレットの巨大電機が現れた

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1974年7月 西武池袋線 中村橋

小生が生まれ育ったのは、東京都は練馬区の西武池袋線沿線だ。現役蒸気を撮り始めた八高線とは東飯能で接続しており、所沢で西武新宿線に乗り換えれば川越線にも行ける。日曜日には家にあったレンジファインダーカメラを持ち、西武線に乗って汽車を撮りに行くのが小生の撮り鉄の事始めだった。しかし、西武線を主に撮ることはなかった。蒸気の写ったフィルムを早く現像したくて、残枚数が少なくなると、家族や西武線を撮っていた。それでも、今になって調べてみると、当時西武線で活躍していた電車と機関車の殆どが収められ、背景には昭和の長閑な練馬も見てとれる。喜んでもらえるのは同郷の同業者の方々くらいかもしれないが、偶のアップなのでご勘弁頂きたい。

このシリーズの最初を飾るのは、「ジャンボ」の愛称を持つ、私鉄の電気機関車としては最大級のE851型だ。この外観を見ればお解りの通り、この巨大電機は、当時の国鉄の最新鋭F型電機のEF81とEF65(0番台)の仕様がベースになっている。形式名のE851もそこから来ている。西武秩父線の開通の折に、武甲山の石灰石を輸送する目的で1969年に4両が導入された。35‰が点在する山間部と通勤電車が行き交う都市部を、1000トンのセメント列車を引き抜くための重装備だ。この正月にEF81がカシオペア紀行を引く画を見たが、こちらのE851の方がよっぽど似合うと思えてならない。E851のスカーレットとアイボリーの鮮やかなツートンをお見せできないのが残念だ。

この写真は、富士見台から中村橋に向かうE851のセメント列車だが、ここは今では複々線の巨大な高架になってしまったので、このような眺めはもう叶わない。背景の巨大な建物は団地風のマンションだが、この頃からマンションがぽつぽつ建ち始めた。しかし、東京での練馬の地位はマイナーで、都市化は主に通勤が楽で手頃な地価の埼玉や千葉に向った。そこも開発し尽くされたのか、それとも古くからの住人が絶えたのか、10年ほど前からこの一帯ではマンションの建設ラッシュとなった。小さな空き地にもマンションが建ち、旧千川上水沿いの桜並木もビルの谷間に沈んでいる。重量級の貨物列車が池袋にセメントを運んでいたのは、遠い昔話になってしまった。


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  1. 2017/01/11(水) 00:30:00|
  2. 西武鉄道
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冬の日の午後

真っ直ぐに伸びる急勾配を小海線のキハが野辺山へと登って往く
その高原から駆け下りてきた後ろ姿は厳しい冬の表情だ

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2012年1月 小海線

この冬も、いよいよ寒さがピークになる時期だが、どうも寒さが長続きしない。
南岸低気圧も通過するようになって、少しだけ春の兆しすら見えてきた。
暖かければ、楽で安上がりな冬越しになるが、その分、夏が暑くなるのは勘弁してほしい。

凛と張り詰めた冷たく乾いた空気と葉を落とした林も、決して悪いものではない。
冬の日は午後になると、すぐに日が傾き、林の陰が伸びてくる。気温も急降下だ。
そんな何所までも澄んだ空気と静けさと冷たさが、高原を往く小海線の冬だ。


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  1. 2017/01/09(月) 00:30:00|
  2. 小海線
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池田修三が往く

米どころ秋田の稲刈が終った田圃の中にその駅は在った
池田修三のノスタルジックな眼差しを乗せて由利鉄が往く

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2016年10月 由利高原鉄道 鳥海山ろく線 吉沢

国鉄時代、羽越本線の羽後本荘から羽後矢島に至る矢島線という23.0kmの短い路線が在った。奥羽本線の院内に延伸され、北上線、釜石線を経て太平洋に至る「陸羽横断鉄道」構想の一部でもあったが、敢え無く計画は頓挫し盲腸線となった。確か国鉄時代にはC11が走っていたと記憶している。こうした本来の目的を失った行き止まりの短距離路線は、国鉄末期に多くが特定地方交通線に指定され廃止となった。矢島線もほぼバス転換が決まっていたが、弘南鉄道の引受け表明から流れが変わり、1985年に第三セクターの由利高原鉄道株式会社の鳥海山ろく線に引き継がれた。当初6期連続の黒字を計上したが、その後は過疎化が止まらず、慢性的に赤字が続いている。

経営が悪化の一途を辿ることから、2011年、起死回生のため旅行業界出身の春田啓郎氏が公募で社長に抜擢された。これは、2009年就任のいすみ鉄道の鳥塚氏と、同じ流れを汲むものだろう。何れにせよ「ローカル線は地域の宝」の御旗の基、観光路線化を模索している最中で、ラッピング車両の導入もその一環のようだ。以前、Panasonic が「エボルタ電池鉄道」と称して、旧小坂鉄道で「廃線1日復活チャレンジ」を催したが、一昨年 その世界最長距離のギネスチャレンジが行われたが、その場所が由利鉄だった。先日 株主である秋田県知事の、秋田内陸縦貫鉄道とともに代替措置を検討するという議会答弁が伝えられているが、いよいよ結果が問われる厳しい局面を迎えた。

この車両のラッピングのキャラクターを、何処かで見たような気がするという方が多いのではないだろうか。由利本荘市の隣の象潟市(現にかほ市)出身の木版画家 池田修三の作だ。と言っても知る人は少なく、生前は地元でも作品は知っているが作者は分からないという不遇の版画家だった。没後に秋田県のタウン誌『のんびり』の特集が切っ掛けで、再評価されるようになったが、さて、皆さんはご存知だろうか。このラッピングは2面が青背景、2面が赤背景の2つのキャラクターで構成され、左右から別々の作品を鑑賞することができる。小生はラッピング車両は好きではないが、このラッピングが由利地域のお宝のコラボということでは、ケチを付ける訳には行くまい。頑張れ「由利鉄」。


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  1. 2017/01/07(土) 00:30:00|
  2. 由利高原鉄道
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北の桟橋

北海道に豊穣の季節が訪れる頃、冬の足音が聞こえてくる
北の味が詰まったコンテナが、鉛色の内浦湾を一路内地へと向かう

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2016年10月 函館本線 石倉

海は空の色を映す鏡だ。北からの雪雲が流れ込んだ噴火湾は、冬の鉛色となった。
時化で人影の消えた小さな華奢な桟橋は、ウミネコたちの休憩所になっている

その日の82レは、定数オーバーなのか、岬の先から2両の赤熊に導かれて現れた。
身をくねらせながら往く、何処までも続くコンテナの長い列が、現代の貨物列車の姿だ。


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  1. 2017/01/05(木) 00:30:00|
  2. 函館本線
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八ケ岳残照

大カーブの向うの八ケ岳が夕日に染まった
軽快なジョイント音を響かせキハが駆け下る

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2016年12月 小海線

本当は小海線の初撮りの様子をご紹介するところだが、今年は野暮用で、街での年越しとなった。
暖かい日が続き、ちょっと厳しさに欠ける御神体の八ヶ岳だが、昨年末のお姿でご勘弁を。

天空の時間を狙いに行ったが、生憎雲が無い夕暮になってしまった。
そんな日は、代わりに八ヶ岳が綺麗に燃える。


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  1. 2017/01/03(火) 00:30:00|
  2. 小海線
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線路の向こうに 平館

山の端から朝日が昇り、この駅の一日が始まった
輝く線路の向うには、何が見えるのだろうか

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2016年11月 花輪線 平館

2017年を迎えた。
年を追うごとに、ローカル鉄道を取り巻く環境は悪くなるばかりだ。
激動の北の大地の鉄路はどうなってしまうのだろうか。
ローカル線が次々と消え去る中、存続への光が見えてきた路線もでてきた。

日本の津々浦々まで立派な道路が巡り、人々の暮らしを支えている。
いつしか駅は町はずれに取り残され、賑わいは去って行った。
無人駅が広がり、列車交換のための転轍器は次々と剥がされた。
人気のない駅では、言葉が交わされることなく、無言の発着が繰り返されている。

それでも、駅はそこに暮らす人々の心の拠り所であり、今もその地の玄関だ。
誰が植えたのかホームには草花が風にそよぎ、手入れも怠りない。
駅舎のベンチには手作りの座布団が掛けられ、旅人を迎えてくれる。
どれだけの人が見てくれるというのか。使ってくれるというのか。

ローカル線などなくても、バスの方がよっぽど便利で楽だろう。
どうして人は、そこまで鉄道に拘るのだろうか。
二本のレールの先に、何を見ているのだろうか。何を思うのだろうか。
そんな人々の思いを乗せて、2017年も「駅舎の灯」の旅は続く。

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


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  1. 2017/01/01(日) 00:00:00|
  2. 花輪線
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プロフィール

こあらま

Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

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