美しい夜景の街を路面電車が往く
万年斜陽都市の行方は如何に

2018年10月 函館夜景
さて、今回は何時もとはちょっと趣向を変えて、函館山からの眺めをお送りしたい。まずは、ご存じ函館の夜景からだ。神戸の摩耶山掬星台、長崎の稲佐山と合わせて、日本三大夜景とされる。函館山の標高は334mで、ちょうど東京タワーの高さ位だ。渡島半島と陸続きになった陸繋島だが、その砂州に広がるのが函館の町並みで、優美な海岸線に挟まれた港町の風情が観光客を集めている。先般の地震では、この街の灯が消えて真っ暗になったというから、夜景は電力の賜物ということだ。

こちらは、昼間の函館港の全景になる。左奥に道南のランドマークの駒ケ岳が見える。手前の海岸線には、左から函館ドック、西埠頭、人工島の緑の島が並ぶ。湾の奥には摩周丸が見え、函館駅がある。対岸中央辺りに青函フェリーの埠頭があり1艘停泊中だ。その左側に2艘の大型船が停泊しているのが津軽海峡フェリーの埠頭になる。概して、快適性を求めるなら津軽海峡フェリー、安さと簡便性を求めるのなら青函フェリーがお薦めだ。ちなみに、この時の渡道には、行きに津軽海峡フェリー、帰りに青函フェリーを利用した。

鉄道ブログなので函館駅をクローズアップしてみよう。旧青函連絡船埠頭には摩周丸が展示され、内部を観覧することが出来る。駅ホームへの通路は撤去されているが距離感は見て取れる。函館を印象付ける湾曲したホームは健在で、大型蒸気が屯っていたころが懐かしい。現役蒸気時代には、何度となく青函連絡船に乗船した。列車の座席や連絡船の座敷席を確保するために、桟橋を急いだものだが、船からホームまでの距離はこんなものだったのか。

ここからは、函館市電が写っているので、暇な方は探してもらいたい。奥は函館ドックで、台湾のWISDOM LINEの貨物船が見える。その手前は、斜めの青ラインが目印の、海上保安庁の巡視船だ。さて、函館市電の電車はというと、中央のヨットハーバーの右側の道の延長線上に車体の上半分が見えている。函館どつく前の停留所は、その左方向で赤い屋根の二階建ての建物の前辺りになる。

湯の川行きの電車は、赤屋根の海上自衛隊函館基地隊の前まで来た。後ろの島は、人工島の「緑の島」だが、港内の浚渫工事で出た土砂によって造られた埋立地だ。ご覧のとおり、あまり活用はされていないが、函館出身のロックバンドGLYの大規模野外コンサートの時には、満員になるらしいので驚きだ。

電車は函館観光の中心地の元町までやって来た。尖塔のある赤屋根がカトリック元町教会、その手前が函館ハリストス正教会、その右が函館聖ヨハネ教会になる。左上にある港が西波止場で、その前の灰色屋根の建物がレンガ倉庫群になる。電車は八幡坂通との交差点を通過中だが、この坂の手前の突き当りに函館西高校があり、北島三郎の出身校だ。

最後は十字街付近をご覧あれ。中央に電車が見える。ちょっと手前に十字街の停留所があり、谷地頭からの路線が合流している。運行形態は、湯の川↔函館どつく前、湯の川↔谷地頭 の2系統で、それぞれ12分間隔で、両系統が走る湯の川-十字街間は6分間隔と頻繁に走っている。奥のレンガ色の建物が函館市役所で、中央下にある緑屋根とその左隣の建物がカレーで有名な五島軒だ。右上の海岸線は湯の川温泉、函館空港へと続く。
函館は、かつては道内最大都市だったが、その後の凋落で札幌、旭川に次ぐ第3位となっている。半世紀以上経った現在も人口減少は止まらず、市全域が総務省の過疎地域に指定されいている。名物のイカも絶不漁で、イカール星人をもってしても如何とし難い。観光客は今では、中国、韓国、台湾で大半だ。もし、これらの国からの観光客が途絶えたら、国破れて何とやらだ。美しい夜景の函館だが、その裏には、どうしようもない斜陽都市の顔を持つ。
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- 2019/02/18(月) 00:00:00|
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北の都函館に街の灯が燈った
路面電車のある街並みはこんなにも美しい

2017年10月 函館市企業局交通部(函館市電)
路面電車にあるのは駅ではなく停留所で、通常は待合のための建屋もないので、「駅舎の灯」というのは些か適切ではないが、そこは雰囲気で受止めて頂きたい。この通称函館市電の正式名称は函館市企業局交通部という。函館に路面電車が走り出して104年になる。1943年11月1日に道南電気軌道が函館市に譲渡され、市電の歴史が始まった。2013年には70周年を迎えている。ここの路面電車もご多聞に漏れず、モータリゼーションの進展と市中心部の空洞化のため、利用者を大きく減らし、路線も最盛期の1/3程になってしまった。かつては、東雲線や宮前線などもあったが、今では2系統だけだ。ところが、ここ数年僅かではあるが回復の兆しが出てきた。旅行客やお年寄りの利用が増えているようだ。赤字体質からの脱却は微妙だが、市民からの支持も得ているので、当面は安泰だろう。
近頃、新たにLRTの導入を検討する自治体が急増中だ。都市内交通としての路面電車の良さが見直されてきているのだろうが、実際に建設するとなるとそう簡単ではない。市民のコンセンサスが得られなかったり、予算が計上できなかったりで、実現させたのは数えるほどだ。そうなると、苦しいながらも路面電車を守り続けてきた都市は鼻高々だろう。何れの街からも廃止の噂が聞こえてこないばかりか、延伸計画が飛び出すほどだ。函館市電でも、湯の川・函館空港間の延伸に多くの市民から要望が寄せられているそうだが、市は及び腰のようだ。早まって、北海道新幹線のために函館駅の改装と再開発に大枚を叩いてしまったことが悔やまれる。空港から市電で市街にアクセスできれば、素晴しい観光都市になることは間違えないが、無理な背伸びは禁物だ。その日が来ることを静かに待とう。
ここ五稜郭公園前は、函館駅前と並んで利用客の多い停留所だ。2015年の改装で千鳥式ホームに変り、少しだけホームにもゆとりができ、自動車車線との隔壁も全面になった。市は地上設備の改良を進めており、順次洒落た停留所に生まれ変わっていくことだろう。秋の日が落ち、すっかり暗くなり、函館の街に灯が燈った。帰宅ラッシュの時間帯を迎え、市電も函バスも甲斐甲斐しく走り回る。路面電車のある街並みは本当に美しい。思わず、こんな街に住んでみたくなるというものだ。東京も路面電車が縦横に走り回る都市だったが、前回のオリンピックの際に多くが廃止に追い込まれた。もし今回、レガシーが必要というのなら、都電を返してほしい。間もなく北の都は雪の季節を迎えるが、この眺めが雪化粧するのを想像してみよう。今や、観光都市函館には市電はなくてはならないものだ。

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- 2017/11/13(月) 00:00:00|
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