直後にめがね橋は通らずになった
そして期せずして最後の春となった

2017年4月 日田彦山線 筑前岩屋
淡い期待はあったが、やはり、この「めがね橋」に再び列車が走ることはなくなった。5月26日、村内に3つの駅がある福岡県東峰村の渋谷村長が、県知事が提示したバス高速輸送システム(BRT)による復旧案を受け入れた。これで、日田彦山線の災害不通となっている添田-日田間の鉄道での復旧が断念され、3年に渡る議論に終止符が打たれた。添田町と日田市は、早々にBRT案を容認していたため、東峰村の孤軍奮闘となっていたが、さすがに受け入れざるを得ない状況に追い込まれてしまった。
JR九州の初めての路線廃止となるが、被災さえしなければという思いは強い。日田彦山線の田川後藤寺-夜明間の輸送人員は299人/日だ。九州最下位の肥薩線山線は何と108人/日だ。それでも、廃止の噂が全く聞こえてこないのは、JR九州の鉄道事業への思い入れの強さからだ。だからこそ、余計に残念な結果だ。さすがに、超赤字路線を一から建設し直すことなど民間企業となったJR九州には土台無理な話だ。それも、上場直後のことでは尚更だ。BRTでの復旧が、譲歩の限界なのかもしれない。
筑前岩屋のめがね橋を往くキハ147の2連だが、さて乗客は何人いるのだろうか。車窓をひとつずつ覗いていくと、僅か2人と判明。左がキハ14754、右がキハ1471043、そこまでハッキリ見えるのだから間違いないだろう。この人数では鉄道復旧は如何とし難いだろう。その昔、ここにはC11の客レが通っていた。客車は4両だっただろうか。煙を吐き吐き、めがね橋を渡り釈迦岳隧道へと登っていた。BRT化後、この橋は保存されるのだろうか。近くに民家があるので放置という手は使えそうもない。
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- 2020/05/30(土) 00:00:00|
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鉱石に翻弄されたこの路線
今は北九州の近郊線の趣だ

2017年4月 日田彦山線 呼野
無煙化により、この駅のスイッチバックは蒸気とともに無くなった。その跡地には春には桜が咲く。
★只今、自動更新で「さくらの日に」をお送りしています。
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- 2020/04/30(木) 00:00:00|
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釈迦岳にも淡い新緑の季節が訪れた
この鉄路の最後の春なのかもしれない

2017年4月 日田彦山線 彦山
2017年7月の九州北部豪雨災害で、部分不通となっていたJR3路線のうち、被害が一番小さかった久大本線は2018年7月に運転を再開し、豊肥本線も2020年の復旧を目指して工事が進められている。残る日田彦山線は暗礁に乗り上げ、先の見えない状況が続いている。この路線の議論が難航している最大の理由は、不通区間の輸送密度が131人と、同じく災害復旧が果たせそうもない日高本線 鵡川-様似間の119人並みということにある。さすがのJR九州もこの輸送密度のために、約56億円ともいわれる復旧費を投じ、年間3億円近い赤字を積み上げることは出来ないようだ。確かに、もっと有効な金の使い道があるだろと言われれば、返す言葉もない。
1年ほど前から、国交省のお役人をアドバイザーに、沿線自治体首長とJR九州社長とで、日田彦山線復旧会議なるものが開かれている。第4回となった先月4月の会議では、JR側から鉄道以外の復旧手段としてBRTとバスが提案された。鉄道での復旧に際して、JRが求めた年間1.6億円の路線維持のための支援要請が受け入れられないための対案だ。こちらの2案では支援は求めないという。「鉄道に拘るのなら金を出せ」というのが潮流になったようだ。一方で、北海道新幹線の2017年の輸送密度は4510人と、まもなく廃止対象の「特定地方交通線」の仲間入りとなる。こういう例があると、経済理論だけでは片付けられなくなり、話は混沌とするばかりだ。
列車は日田彦山線の難関、4,380mの釈迦岳隧道を抜けて彦山方面に去っていく。被災3か月前の様子だ。九州北部豪雨の土砂災害が集中した地域で、このトンネルも筑前岩屋側から土砂が流入した。この峠では国道は大きく迂回し、か細い県道が通っているだけだ。そのため、BRT復旧案ではこのトンネルを専用道化し、時間短縮を図る計画だ。しかし、負担なしの鉄道復旧を求める沿線自治体と民間企業となったJR九州との睨み合いはなかなか決着がつきそうもない。政府の全面的なバックアップで復旧される南阿蘇鉄道もあれば、忘れ去られていく日田彦山線や日高線、毎年100億円もの多額赤字を積み重ねる北海道新幹線。日本とはげに不思議の国だ。
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- 2019/05/11(土) 00:00:00|
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若葉が眩しい清々しい朝の一時だった
穏やかだったこの地にジョイント音が響く

2017年4月 日田彦山線 今田
「目には青葉 山ホトトギス 初鰹」とは、江戸時代の俳人 山口素堂の句だ。字余りになってしまうが、「目に青葉」ではなく、「目には青葉」が正しいそうだ。俳人自身が、「目には青葉といひて、耳には郭公、口には初鰹と、おのづから聞ゆるにや」と解説している。この青葉、ほととぎす、初鰹は何れも夏の季語だが、この句がヒットしたお陰で、一躍、初鰹が江戸の粋になったとか。「初物七十五日」という言葉があり、初物を食すれば、75日寿命が延びると持て囃されていた。ただし、江戸の初鰹は目が飛び出るほど高かったそうな。
写真は青葉というにはちょっと早い初夏の若葉だ。この柔らかい黄緑色が濃くなると、三夏の青葉ということになる。この季節にしては珍しく、空気の透き通った気持ちのいい朝になった。列車は、福岡県北九州市の小倉から、香春、田川、川崎、添田、東峰の各市町村を経由して、大分県日田市に入った。久大線の夜明まではあと一駅だ。釈迦岳トンネルで抜けてきた福岡の奥座敷の山稜がくっきりと見える。さて、この写真をご覧になって、カツオが食べたくなったかは別にして、魚屋には美味そうな初がつおが並ぶ季節になった。
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- 2018/05/15(火) 00:00:00|
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穏やかな春のそよ風にゲンゲが揺れる
今年のめがね橋は、寂しい春になりそうだ

2017年4月 日田彦山線 筑前岩屋
昨年、筑前岩屋はゲンゲ畑の広がる穏やかな春を迎えていた。その地が暗転したのは、昨夏の7月5日の九州北部豪雨だった。被害が集中した福岡県朝倉郡東峰村の宝珠山に筑前岩屋駅はある。日田彦山線も壊滅的な被害を被り、添田-夜明間の不通が今も続いている。筑前岩屋駅は土砂に覆われているそうだ。JR九州によれば、被災箇所は63、復旧費用は70億円が見込まれるそうだ。JR九州の財政状況からすれば、復旧させること自体は十分可能だが、JR九州は路線の将来性、つまり採算性を危惧して、「単独復旧は無理」ということになった。低成長期の企業経営には事業の「継続性」の確保が欠かせない要件となった。JR九州も上場企業となり、その辺を無視するわけにはいかなくなった。国鉄が消えた時点で、ローカル線の運命は決していたのかもしれない。この写真が、めがね橋の最後の春にならないとは限らない。愛すべきローカル線が被災しないことを祈るばかりだ。
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- 2018/03/04(日) 00:00:00|
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