駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

岳鉄駅巡り 駅舎の灯

夜の帳が降りて来たが、プラントが眠ることはない
ホームに明りが灯り、製紙工場の夜が更けてゆく

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2017年2月 岳南電車岳南線 岳南原田

この鉄道を訪れた最大の目的は工場夜景にあった。工場夜景ブームは2008年に神奈川県の川崎から巻き起こったとされている。高度成長期には公害都市と言われ、お隣の横浜に比べて圧倒的に観光資源に乏しい川崎市が、逆転の発想から取り組み始めたのが工場夜景の観光化だった。その後、ブームは全国に広がった。日本五大工場夜景として、室蘭、川崎、四日市、北九州、周南が挙げられるようになり、ここ富士と尼崎は、それに次ぐ場所とされているようだ。工場夜景の愛好者からは「工場萌え」なる言葉も生まれている。

鉄道に日本三大車窓があるように、夜景の分野にも日本三大夜景があり、函館、神戸、長崎の三か所ということになっている。何れもが港町だ。新日本三大夜景や夜景100選なども加わり、根強い夜景人気があることが窺われるが、この「工場夜景」はその延長線上にはないような気がする。巨大コンビナートのもつ非日常的な重厚な機能美は、生活の光である街の夜景とは、異なる性格のものだろう。何れにしても、観光客相手の薄っぺらな商業施設には踊らされない本物志向の人たちが、ここでも増えているということだろう。

民間の日本夜景遺産事務局が、日本夜景遺産の認定を行っているが、「岳南電車(岳南鉄道)」もその遺産の一つで、唯一の鉄道施設ということだ。暗くなってくると、沿線には三々五々カメラマンが現れるが、多くが「工場萌え」に鉄道を絡めようとする工場夜景趣味の方々で、鉄道趣味からは少数派だ。ただ、製紙工場の夜景はあまりぱっとしない。川崎や四日市の石油化学コンビナートの眩い照明を期待していたが、どうも事情が違うようだ。カメラの感度アップで施設を浮き上がらせる作戦にでたが、敢え無くセンサーの限界となった。


これで「岳鉄駅巡り」を終わります。


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岳南原田

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比奈

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比奈

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岳南富士岡


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  1. 2017/03/28(火) 00:30:00|
  2. 岳南電車
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岳鉄駅巡り 電機の住処

岳南富士岡ではかつての電機たちが迎えてくれる
検修庫のなかには井の頭線風が顔を覗かせている

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2017年2月 岳南電車岳南線 岳南富士岡

この駅の側線には、かつての電気機関車が留置されている。ホーム横という場所からみて、展示といったところだ。先日の比奈編では、狂電関人さんから「突放の駅」でコラボいただいたが、その中で登場するED402とED403の2両もここに並べられている。それほど年月が経っていないので、直ぐにでも動きそうだ。鉄道貨物が斜陽のため、次の働き場所が見つからないのだろう。

須津寄りには、小さい検修施設がある。庫内には、ブルーグリーンの7000形が見えるが、どう見ても井の頭線で走っていた頃の再現だろう。岳鉄の電車は、全て京王線3000形中間車の改造車で、7000形のオレンジが2両、青緑が1両、2両固定の8000形が1編成の計5両と本当に小所帯だ。この井の頭線風が走っているのを見たかったのだが、残念ながらこの日は庫を出ることはなかった。

駅舎の様子から一見無人駅のようだが、高校生が多いため、朝夕のみ駅員が配置される。駅員と言っても、制服・制帽の凛々しい姿を想像してはいけない。最初は駅員さんとは分からなかったのだが、気さくな話好きのおばちゃんだった。ただ、岳鉄への熱い思いは並々ならぬものがある。何と、有難いことに、岳鉄の歴史や車両について、みっちりレクチャーを受けさせていただいた。


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  1. 2017/03/24(金) 00:30:00|
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岳鉄駅巡り かぐや姫伝説

工場群の貨物駅は、今はかぐや姫伝説の駅となった
日が高く昇った頃、鄙びた改札の向うに姫が現れた

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2017年2月 岳南電車岳南線 比奈

「竹取物語」は平安時代初期に生まれた日本最古の物語と言われている。その主人公は彼の「かぐや姫」で、現代においても色々なシーンに登場する、日本で最も知られたキャラクターのひとつだろう。竹取物語は多彩な要素と様々な展開に溢れた、非常に完成度の高い作品と評価されている。貧乏な竹取の翁と嫗が竹の中から現れた姫を大切に育てると、姫は大きくなって裕福になった夫婦を残して月に帰って行った。というのはかなり大雑把な粗筋で、実は多くの複雑な人間模様が鏤められている。今一度、物語を精読してみるのも一興だろう。

日本には、この「竹取物語」や「かぐや姫」の由縁の地を標榜する地域が幾つかある。もちろん、フィクションなので、物語の舞台となった地が実在する筈もなく、こじつけを楽しんでいるようで、「かぐや姫サミット」なる地域交流もあるそうだ。その筆頭格が静岡県富士市だ。この比奈の無量寿禅寺跡にある竹採公園には「竹採姫」と刻まれた竹採塚があり、かぐや姫誕育の地とされている。また富士山本宮浅間神社には竹取物語と類似の伝説が残り、祭神の木花咲耶姫をかぐや姫の原型とする説もある。真偽の程はさておいて、要は観光資源として育てたいというのが本音だ。

さて、この比奈駅は、かつては幾つかの工場と繋がる貨物駅として活気のあったところで、突放の名所でもあった。貨物輸送が終了してからは、工場施設を仰ぎ見る鄙びた駅になり、かぐや姫伝説の駅として生きている。竹の駅名標もその演出だ。電車のヘッドマークにもかぐや姫仕様があるようだが、写真は「東海・北陸B-1グランプリin富士」のマークだ。調度かぐや姫よろしく、小さな姫がやって来た。おばあちゃんと岳南電車でお出掛けの様だ。「いい写真が撮れましたか?」と笑顔で尋ねられた。孫も嬉しそうにおばあちゃんの周りではしゃいでいる。現代のかぐや姫と嫗も、とても仲良しだ。


狂電関人さん が当時の突放作業の記事をアップしてくださいました。
活気ある鉄道員の姿を通して、華やかなりし頃の比奈駅の様子がご覧いただけます。


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  1. 2017/03/10(金) 00:30:00|
  2. 岳南電車
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岳鉄駅巡り 茶所

朝の通勤通学時間が終って、長閑な時間帯となった
茶所静岡の柔らかな光を浴びて、岳鉄がのんびりと走る

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2017年2月 岳南電車岳南線 須津

静岡県は全国シェア40%を誇る茶所だ。県内に幅広く茶畑が広がっている。あの大井川鉄道沿いは静岡茶の有名ブランドの一つである川根茶の一大産地だ。この岳鉄沿線は富士茶というブランドになる。さすがは静岡と思わせるような茶屋の数で、路地を辿ると必ず茶屋に出くわす。緑茶が欠かせない我が家にとっては嬉しい場所だ。そんな街の車がすれ違えないような細い路地で見つけたのがこの店だ。素晴らしく年季の入った外観だが現役の建屋だ。有機栽培に力を入れる農家が、自家製茶したものを販売する小さな店だ。茶の苗木も販売しており、如何にも生産農家といった感じだが、残念ながら家人が居らず買えなかった。たまたま通りかかった知り合いらしきおばさんが連絡先をくれたので、そのうち購入してみようと思う。岳鉄のこの辺りは純然たる住宅地で、線路周りには入り組んだ細い路地しかないので、大きな車でのロケハンは禁物だ。


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  1. 2017/03/02(木) 00:30:00|
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岳鉄駅巡り 製紙工場の町

工場貨物の鉄道は工場群とは一心同体だった
列車が工場の施設の中へと消えてゆく

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2017年2月 岳南電車岳南線 岳南原田

岳南鉄道は製紙業等の工場群の貨物輸送によって支えられてきた。富士市は製紙業が盛んな場所で、一時の勢いはないが、現在も70程の製紙工場が稼働している。豊かな富士川の水量や富岳の伏流水が生命線で、歴史は「駿河半紙」に始まる。かつて、田子の浦のヘドロという公害を引き起こし、大きな社会問題となった。時は高度成長期で、環境を破壊しながらの成長だった。そのヘドロを風刺した怪獣「ヘドラ」や合成改造人間「ウツボガメス」などが登場したのもその頃だった。今は製紙の街の独特の悪臭もすでに昔話となったが、隣の国を笑えないような過去があったことは忘れてはなるまい。

この列車は、この先で日本製紙富士工場(吉永工場)の施設を潜って、隣の比奈駅に向かうことになる。その道の趣味人には結構知られたシーンだが、さて、鉄道が先か工場が先かということが気になるところだ。色々調べてみると、まず、線路の左側の工場が1927年に操業を開始する。次に、岳南鉄道のこの区間が1951年に開通する。最後に右側に工場が増設されるといった順番だ。左右の工場の配管は線路を跨いで繋げられ、列車はそれを潜って走るということになったようだ。貨物輸送を担う鉄道と工場群が一心同体の関係にあったからこそ、こんな風景が生まれることになったのだろう。


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  1. 2017/02/26(日) 00:30:00|
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プロフィール

こあらま

Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

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拙ブログに掲載する写真、記事に関する著作権は放棄しておりませんので、無断使用、転載等はお控えください。

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