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駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

現代入換考

列車と云うのは駅間の本線上を往く車輌のことで、本線になものは単なる車輌で、その車輌の移動を「入換」或いは「操車」と呼ぶそうだ。国鉄時代であれば「操車掛」や「構内作業掛」という職種が、入換の誘導や貨車の連結・解放や制動の作業に当たっていた。本線を往く列車には、多くの公的な保安基準が適用されるが、内輪の作業である入換には規制が少なく、やり方はそれぞれの事業者に任されている。動力車の運転についても、本線乗務に不可欠の機関士や運転士のライセンスは要らないようだ。

入換と云えば、操車掛が青旗と赤旗を使って機関車に飛び乗って行っていたのが目に浮かぶ。貨物輸送が盛んだった頃には、操車場での突放による貨車の組成も行われていた。操車掛と構内作業掛がチームを作って操車を行っていたが、かなり危険な作業で、死亡事故も絶えなかったようだ。貨物もコンテナの時代になり、貨車の入換を見ることは珍しくなった。電車や気動車では、信号や無線による誘導が多くなり、現場は運転士のみで行われることが多くなり、伝統の入換風景は希少なものとなった。

さて、現代の入換風景はと云うと、たまたま根室本線は新得駅での入換を観察する機会があったので、その様子をご報告したい。新得駅は狩勝峠の帯広側の駅になる。帯広方面からの普通列車は多くが新得止まりで、狩勝峠を越えていくのは僅かしかなかった。そのため、新得駅では普通列車の入換が行われている。ただし、その僅かの狩勝越えの普通列車は2016年8月の台風災害で途絶えている。写真はその被災の1か月前の2016年7月に撮ったものだ。新得駅構内の下新得川橋梁も完全に流されている。


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今回の入換作業は、2線ある留置線の奥の2両編成のキハ40を切り離して、前の1輌を3番線ホームに移動する。操車担当の定位置は、信号担当に繋がっていると思われる有線電話の前だ。有線で入換開始の許可を得て、無線で運転担当に作業開始を指示している。


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留置線から本線に出てきた。操車担当はポイント通過に異常がないかを見守る。有線電話の支柱がかなり傾いている。ピンクテープは要補修の目印か。


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完全に本線に出てきた。正面が帯広方面。向かって左のホームが1番線、右は島式で2番、3番と続く。信号機は場内、出発ともに全赤になっている。車輌は進行方向を変えて待機中。操車担当が有線で発進許可を取っている。


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方向を変えて3番線ホームに向かう。例によって操車担当はポイント通過を見守る。


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無事に3番線ホームの定位置に停止。有線で作業の終了を伝える。ちなみに3番線は狩勝を越えて行く富良野方面の専用ホームで、現在休止中。


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操車担当が指差で安全確認。これで終わり。ご苦労様でした。


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  1. 2019/06/18(火) 00:00:00|
  2. 根室本線
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湿原の印象

ガスが流れる湿原に一筋の鉄路が伸びる
そこにはとびきり贅沢な車窓と時間がある

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2018年10月 根室本線 厚岸

別寒辺牛川の河口に広がる湿原は何処までも水平だ。その平原の彼方から、キハのヘッドライトがだんだんと近付いて来る。どうして道床が湿原に沈まないのか不思議に思えてくるような湿地の只中を列車が横切って往く。毎年の冬の凍結では、軌道は大きなダメージを受けることだろう。この湿原に鉄路を伸ばすことの困難さ、保線することの大変さは容易に想像できる。そんな贅沢至極の北海道の大自然を楽しんでもらうため、列車は徐行してゆるゆると通過して往く。

どうしてこの路線にグルメ列車が走っていないのだろうか。厚岸の牡蠣、根室の花咲蟹といえは、グルメの定番中の定番だ。「オレンジ食堂」、「TOHOKU EMOTION」等々、レストラン列車の人気は上々だ。旧江差線の道南いさりび鉄道にも、三セク化すると直ぐに「ながまれ号」が登場した。その安い改造費などから「日本一貧乏な観光列車」とも呼ばれている。別寒辺牛湿原を車窓に厚岸の牡蠣で一杯。落石の太平洋を愛でながら花咲蟹で一杯。こんな贅沢があるだろうか。


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  1. 2019/01/21(月) 00:00:00|
  2. 根室本線
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朝焼けの潟湖

朝焼けの太平洋にジョイント音が響く
人知れず繰り返される早朝の鉄道風景だ

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2018年10月 根室本線 音別

東の空が色付くころ、列車のジョイント音が海岸線に響く
大きくなったり小さくなったりしながら、近づいてくる
そして音別川の潟湖の向こうにそのヘッドライトを現す
早朝、一番に回2520Dが釧路から厚内へと送り込まれる
この沿線が目覚める前の、人知れず繰り返される儀式だ

尺別炭鉱が在ったころ、音別の人口は優に1万を超えていた
釧路市の飛び地になった2005年には、2,700人程に減った
その僅か11年後の2016年には、2,000人を切ってしまった
このペースで行けば、20年後には音別は無くなっている
かつての停車列車の「ぬさまい」も「まりも」も昔話となった

現役蒸気の頃、無煙化に追われるように道内各地を旅した
今は、路線の廃止の影に急かされるように北の大地を踏む
時代の大きな潮流の中で、地方鉄道の衰退は避けられまい
ただ、その良さを発し続ければ、何かが起こるかもしれない
今年も体力と気力が続く限り、北へ南へと旅しようと思う

あけましておめでとうございます
今年もよろしくお願いします


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  1. 2019/01/01(火) 00:00:00|
  2. 根室本線
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馬主来 黄昏時

音別を通過した「おおぞら」が再び太平洋に出る
3時を過ぎたばかりだというのに早くも黄昏だした

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2018年10月 根室本線 音別

東風が入り、どうにも天候が優れない。この界隈の海岸部は、とにかくカラッと晴れることが少ない。冷たい東風は海上でガスを生み、海岸線へと運ぶ。夏でもストーブが欠かせない。半袖を着られるのは、ひと夏に数日しかないという土地柄だ。天気が悪い分、波は少々高く、砂浜を駆け上る白い波紋が、不思議な模様を描き出す。雨もぽつりぽつりと落ち出し、思ったよりも早く太平洋に黄昏時が訪れた。

馬主来と書いてパシクル。アイヌ語でカラスのことだ。どうしてここがカラスなのかは定説がなく、各人のご想像にお任せする。昔はちょっとした地元の観光地だったようで、今よりもずっと多くの出店があったそうだ。ここ音別、尺別は上さんの故郷で、今も親戚が暮らしている。現在は釧路市に編入されているが、在るのは小さな生協とセイコーマートだけで、食料品の調達にも困るような場所になっている。


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  1. 2018/12/25(火) 00:00:00|
  2. 根室本線
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芦別 06時22分 炭鉱町の駅は今

朝靄をついて始発列車が現れた
観光都市を目指す芦別の朝が明ける

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2018年10月 根室本線 芦別

06時22分、朝靄の中からヨンマルの二つのヘッドライトが見えてきた。芦別の駅が眠りから覚める時刻だ。始発列車の2421D滝川発東鹿越行の2両編成が、定刻に芦別駅1番線に滑り込んだ。一通り降車が済むと一旦ドアが閉められ、車両の分割が行われる。先頭車輌が数メートル先の「分停」の位置まで進んで作業が終わる。先頭車は、そのまま2421Dとして災害代替バスが待つ東鹿越へ向かう。後ろの車輌は、上り始発列車の2420Dとなって滝川へと戻ることになる。


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分割作業中のホームに向かうと、乗車待ちの通勤らしき方が目に入った。滝川方面へ向かう通勤途上の読書かと思いきや、今の時代そんなことは希だ。手にしていたのは、もちろんスマホだ。通勤・通学のスマホ風景はあっという間に日本中に広まった。日本中何処にいても、同じように情報が得られることは素晴らしいことだが、日本中同じ風景と云うのも、何となくおかしい気もする。


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06時32分、まず2420D滝川行が発車する。滝川着は07時04分となる。左に見える建屋は、炭鉱駅時代に活躍していた信号取扱所だ。空港の管制塔と同じように、ここから列車の位置を現認しつつ、入換作業の指示を出していた。芦別炭鉱が稼働していた頃、この信号所の灯りは24時間消えることはなかった。


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残された東鹿越行には、次々と高校生が乗車していく。富良野、あるいは南富良野の高校に通うためだ。次の列車は1時間半後の富良野行になるので、富良野と南富良野のどちらの高校に通うにもこの列車が基本となる。勿論、芦別にも道立の芦別高校があるが、根室本線のお蔭で、自宅通学可能な高校の選択肢は滝川方面を含めて結構広範囲になっている。


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06時40分、2421Dの18分間の停車時間が終わり、出発信号が青に変わり、出発反応標識も点灯した。列車は上芦別、野花南と停まって、富良野到着は07時16分、終着の東鹿越は08時04分、代替バスに乗り継いで幾寅が08時17分となる。芦別駅は、2016年にみどりの窓口が閉じられ、現在は芦別市が業務を行う簡易委託駅になっている。業務の開始時間は、もう少し後の午前7時になる。


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芦別は三井芦別炭鉱の城下町だった。かつて、この島式ホームの3番線からは三井芦別鉄道が発着していた。最盛期7万人を超えた地域の人口も、今は1万4千人を切っている。ちょうど、三井芦別鉱業が開坑した1943年頃の人口に戻ったことになる。昼夜を問わず行われたピストン輸送のための広い貨物ヤードは、再利用されることもなく草木に覆われている。構内灯や信号取扱所は、取り壊されることもなく当時のままだ。滝川機関区のD51や9600が通った活気ある構内は、只々静まり返っていた。

芦別市に隣接する赤平市、歌志内市、美唄市、三笠市、夕張市、上砂川町は、皆炭鉱の町が出発点だ。ヤマが閉じてからと云うもの、何所も厳しい自治体運営が続いている。ここ芦別も、閉山による斜陽化対策として、「赤毛のアン」のテーマパークである「カナディアンワールド」を開園したが、残ったのは負債だけだった。通産省産業基盤整備基金を活用した第三セクターが設立されたが、夕張とよく似た話だ。結局のところ、国は斜陽化を食い止められないばかりか、更なる試練を与えることとなった。藁にも縋りたい弱小自治体が、補助金行政の餌食になってしまったとも言える。夕張については破綻も認めず、無慈悲な態度をとり続けている。これらの事例から分かるように、「自治」というからには、自らの資源と英知と責任をもって臨むという気構えが必要だ。国の言うことなどを聞けば、国の財政よろしく、返済不能の借金漬けに陥ることは間違えない。「星の降る町・芦別」を自らの力だけで愚直にアピールしていくだけだろう。


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  1. 2018/12/19(水) 00:00:00|
  2. 根室本線
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プロフィール

こあらま

Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

著作権について

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