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駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

別寒辺牛湿原 雨の夜明け

鉄路以外には人工物は何もない
原始の自然の中にヘッドライトが輝く

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2018年10月 根室本線 厚岸

厚岸湾に注ぐ別寒辺牛川の河口に広がるのが別寒辺牛湿原だ。鉄道好きであれば、厚岸、糸魚沢、別寒辺牛湿原の名前を知らないことはないだろう。しかし、周辺に、釧路湿原、霧多布湿原、風連湖湿原といった名の知れた湿原が集中する場所柄のため、一般には知名度が低い湿原になっている。タンチョウの繁殖地であり、ハクチョウやカモなどの水鳥の飛来が多く、原始的な自然も手付かずで残されていることから、愛鳥家、カヌー愛好家などからの人気度が上昇中だ。

湿原故に、ここでの撮影場所は限られている。今回は最もポピュラーなお立ち台からの1枚を。露出度が高く、見飽きているだろうから、悪天候時のものを選んでみた。上りの始発列車はまだ明けやらぬ湿原を、コトコトとやって来た。よくぞこんなところに鉄路を敷いたものだ。今なら自然破壊と非難されそうだ。この場所、何てことない丘に登ることになるが、雨で斜面がつるつるで、意外と苦労することになった。さすがに、このままでは帰れず、晴天時の朝にもう一度丘に登ることになった。

根室本線の釧路-厚岸間の135.4km、花咲線と呼ばれる区間を、JR北海道は2016年に「単独では維持することの困難な線区」とした。冗談じゃないと、根室市は存続に向けた活動を展開している。ふるさと納税を活用したクラウドファンディングも行っている。目標の3千3百万円に対して、2億8千万円もの寄付が寄せられている。以前、由利高原鉄道の記事を書いた際に、ふるさと納税の活用にも触れたが、根室市は実際にふるさと納税で、「根室花咲線」の活性化事業の資金を得ている。寄付募集期間は今月末までだ。興味がおありの方は次のサイトへ。

日本最東端の鉄路「根室花咲線」を守ろう

この根室市の活性化事業には、鉄子の矢野直美さんが協力している。そのサイトはこちら。

地球探訪鉄道 花咲線


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  1. 2018/11/23(金) 00:00:00|
  2. 根室本線
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落石の落日

太平洋の夕日は敢え無く雲間に消えた
諦めかけていた一瞬の輝きに救われた

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2018年10月 根室本線 落石

午後3時半、根室行の5631Dがこの場所に現れた。ここは、てっきりキハ54の生息域かと思っていたが、やって来たのはキハ40だった。それも、緑色のラッピング車で、おまけに丸いヘッドマークまでついている。この風景には極めて不利な車体色だ。この前日にも、花咲線でキハ40を何度も見かけた。財政難から車両の更新が出来ず、ご老体のキハ40が、また勢力範囲を広げているようだ。国鉄時代の車輌は、とびきり頑丈のようで、どうやらJRへの置き土産のキハ54よりも長持ちのようだ。

ここでの狙い目は、この根室行が折り返してくる5632D釧路行で、午後4時半過ぎに再びここを通過する。事前の調べでは、日没のおよそ10分前に通過することになっていた。太平洋の夕日と輝く列車が、思い描いた写真だ。どうせピッカピカが狙いだから、ラッピングも何のそのだと自分に言い聞かせる。ステンレス車の方が光るだろうなということは考えないようにして、海風の中を空模様を気にしながらひたすら待つ。暮れ往く太平洋の大海原はなかなか壮観で、贅沢な時間と思えば苦にならない。

30分前、上空は青空で、西の水平線には大した雲もない。例によって、ハラハラ時計の待ち時間が始まる。空の様子は、5分もあれば一変することは、小海線の天空時間で痛いほど思い知らされている。通過15分前、不吉な雲が流れ始めるが、太陽は水平線上にまだ見えている。5分前、上空には厚い雲が広がり、太陽も雲間に消えた。運も尽きたかと消沈した中を、定刻に5632Dが姿を現したが、ラッピング車は大地に沈んで冴えなく過ぎて往く。諦めかけたその一瞬、夕日が零れ、列車が輝いた。

先日、中井精也さんの鉄道写真のテレビ番組を見ていると、この場所で全く同じようなことになっていた。こあらまと同じように、諦めの中での列車の一瞬の輝きに、精也さんも大喜びしていた。その様子を見て、苦笑するしかなかった。


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  1. 2018/11/17(土) 00:00:00|
  2. 根室本線
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ぽっぽやの駅は今

この駅は現実と映画の二つの顔を持つ
列車の来ない幾寅は幌舞として生きている

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2018年10月 根室本線 幾寅

この線路はJR北海道最長路線の根室本線の鉄路だ。この先150m程のところに幾寅駅がある。線路左側には幾寅の駅標識も見える。かつては、急行「狩勝」が停車していた南富良野町の玄関駅だ。2016年8月31日の台風10号の大雨災害で不通となり、今も東鹿越-新得間は通らずのままだ。列車が通わなくなって3度目の秋を迎えた。線路はススキに覆われ、ちょっと先の駅すら見えなくなっていた。


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幌舞線 幌舞

根室本線の幾寅駅は、同時に幌舞線の終着駅の幌舞でもある。1995年に「小説すばる」に掲載された、浅田次郎のベストセラーで直木賞受賞作でもある「鉄道員(ほっぽや)」が映画化された際のロケ地だ。1999年に降旗康男監督、高倉健主演で映画化され、日本アカデミー賞の主要部門をほぼ独占している。あまりにも有名な映画なので、能書きは野暮だろう。


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この駅舎は幾寅駅を改装したものだ。40数年前にオリジナル駅舎の幾寅に降り立ったことがあるが、その時代はその時代で、風情のある木造駅舎だった。その後、色々と不細工な補修がなされたのだろう。かなり手が入れられて、この幌舞に生まれ変わっている。駅舎正面の駅名票は幌舞のままで、目立たない場所に「JR北海道 幾寅駅」の表示がある。


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駅舎の周りには、ロケーションのセットが展示されている。廃車後ここで保存されているキハは残念ながら半身だが、だるま食堂とのツーショットは、映画のシーンを思い出させる。このキハ40 764はキハ12を摸して、映画用にキハ40 230が改造されたものだが、よく見ると何とも奇妙な顔つきだ。「ぽっぽや号」として観光列車に起用されていたらしいが、この改造が祟って、早々に廃車となってしまった。


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駅舎内は、まさに「ぽっぽや」一色だ。幌舞駅長の机だろうか、机上は高倉健を偲ぶ祭壇のようになっている。早いもので、お亡くなりになってちょうど4年になった。この映画では、雪子が現れた翌朝、ラッセル車の乗員が、ホームで冷たくなった乙松が雪に埋もれているのを発見して終わる。


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スチール写真展示コーナーには、なかなか懐かしいシーンが並んでいる。志村けんの顔も見える。筑豊から流れてきた酒癖の悪い吉岡肇だが、幌舞炭鉱の事故で帰らぬ人となっている。

私事になるが、こあらまが好きな登場人物は、高倉健の佐藤乙松でも、大竹しのぶの佐藤静江でも、広末涼子の雪子でもなく、乙松の同僚の小林稔侍の「仙ちゃん」こと杉浦仙次だ。なかなか人情味のあるキャラクターでありながら、こちらも根っからの「鉄道員」で、この物語をしっかり支えている。


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駅舎のホーム側に出てみると、あの時と同じようにホームへは階段になっている。幾寅駅としての機能は停止しているが、幌舞駅として訪れる人が多い。ひょっとすると、幾寅よりも幌舞の方が、乗客が多いのではないだろうか。ふと、そんな他愛もないことが頭を過った。


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落合側、いや幌舞の美寄側には、これまたロケーションのための腕木式信号機が残されている。前掲のスチール写真展示コーナーの右上の写真に写っているやつだ。ただし、積雪地帯にしては非現実的なくらいに背丈が縮んでいる。幌舞の信号機が、幾寅のものと混同されないような配慮なのか。バッテンが付けられていないのは粋な配慮だ。


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ホームには、数少ない幾寅の駅名票が鎮座している。本物の駅の証拠だが、名所案内は幾寅の明日を象徴しているかのようだ。不通区間の東鹿越-新得間には、幾寅と落合の二駅が存在する。被害は落合から先に集中している。ここ幾寅までなら何とか通すことが出来そうだが、そうならないのがJR北海道だ。この富良野-新得間は、災害があろうとなかろうと廃止区間と決まっているようだ。機会があれば、お隣の落合の今もご紹介したい。こちらは、人気のない寂寥の趣だ。


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幌舞線は北海道の炭鉱に伸びた、廃止予定のローカル線だった。北海道でローカル線の廃止が相次いだのは、国鉄末期、JR発足前夜の80年代半ばだった。そんな時代背景から「ぽっぽや」の発想が湧いてきたのだろう。幌舞の廃止から20年、今度は幾寅が危機に瀕している。それも、ローカル線ではなく、本線と名の付くかつての幹線だ。高倉健扮する佐藤乙松は小駅を守り抜くことに生涯を捧げた。今、鉄道員を失った駅は、静かに時の流れに身を任せている。

秋も深まり、錆びたレールに落葉が降り積もる。
列車の途絶えた鉄路に3度目の冬が来る。


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  1. 2018/11/15(木) 00:00:00|
  2. 根室本線
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樹海を往く

紅葉の山々に冬の気配が忍び寄ってきた
形だけの本線をヨンマルの単行列車が往く

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2017年10月 根室本線 東鹿越

この山中に北海道官営鉄道十勝線の鉄路が西から延びて来たのは、117年前の1901年のことだ。1907年には狩勝峠を越えて帯広へと繋がった。そして、1909年には旧釧路線と統合され、滝川-釧路間の新しい釧路線が誕生する。1921年になると根室まで延伸開業され、ついに北海道最長の根室本線が形作られた。1966年には、金山ダムの建設により、この区間は現在の位置に付け替えとなり、同じ年、狩勝越えも新線に切り替えられ、新内が廃止されている。長い歴史を持つ根室本線だが、1981年の石勝線の開通によって、根室本線の長距離優等列車は急行「狩勝」を除いて、全てが石勝線経由となった。それ以来、滝川-新得間はローカル線化することとなった。2016年の台風10号の被害で、東鹿越-新得間が不通となり、そのまま廃止されようとしている。

この朝、初冬を思わせる折からの寒気で、かなやま湖を囲う山々の稜線が白くなった。彩の紅葉の季節を追うように、白い冬はそこまで来ていた。この区間を、粉雪を掻き分けて、多くの列車が狩勝峠に挑んでいた時代が思い出される。大雪でDD51でも狩勝を越えられず、富良野に引き返し一夜を過ごしたこともあった。あの南富良野の「ぽっぽや」の「幌舞」こと幾寅の駅には、もう二度と列車が通うことはないのだろうか。こんな山中を往く線区に地域内輸送など見込めるはずもない。石勝線の開通が運の尽きと言ってしまえばそれまでだが、歴史ある根室本線が寸断されるのは、関係者にとってもまさに断腸の思いだろう。素晴らしい自然の中を往くということは、裏返せば旅客輸送が見込めないということだ。かなやま湖畔の原生林を往くヨンマルの姿はあまりにも寂しげだ。


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  1. 2018/09/14(金) 00:00:00|
  2. 根室本線
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北の大地の根室本線

緑に覆われた狩勝を列車が行き交う
道内最長の根室本線も短縮の日が近い

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2016年7月 根室本線 新得

日本の重要な食料倉庫の一つである十勝平野を眼下に、JRFの貨物列車が狩勝峠をゆっくりと登って往く。北の大地の恵みを、札幌へ、そして内地の大消費地へと運んで行く。そのJR北海道の路線存続問題が再び巷を騒がせている。国交省、道との協議結果として、単独では維持困難とされた12線区のうちの4線区を、2020年までに廃止する方針が報じられた。国が支援を拒否したわけで、もう決定的と言っていい。これとは別に、石勝線夕張支線などの廃止も既に決まっている。

廃止方針の4線区の中には、根室本線の富良野-新得間が含まれている。昨年末には、東鹿越駅での学童・生徒の代替バスとの乗り換え風景をお伝えした。あの子らの世代で、鉄道による通学は終わりということになりそうだ。道内最長の根室本線がいよいよ短縮される時がやってきた。釧路-根室間、滝川-富良野間はおろか、帯広-釧路間も危ういというから、もうどうにも止まらない。確かに、旅客の輸送密度は惨憺たるもので、地元自治体も存続を強く訴えられないところまで来ている。

しかし、よく考えてみよう。日本の食料自給率はカロリーベースで38%(2016年、農水省統計)しかない。生乳不足で乳製品はずっと品薄状態が続いている。輸入小麦価格の上昇から、昨日からパンが値上げされ、家計を直撃しそうだ。一方、トラック運転手の人手不足から、宅配事業も曲がり角を迎えている。そんな状況で、大切な食糧供給地へと続く、根室本線や石北本線の廃止が軽々しく浮上してくるのは、まったく合点が行かない。モーダルシフト云々は、単なる掛け声だけなのだろうか。

ただ、どんなに文句を言っても、廃止に弾みがつきそうな気配だ。国鉄末期の頃が思い出される。夕張支線などは保存鉄道には格好の路線と思われるが、残念ながら、本邦にはそのような制度もない。せめて、北の大地のローカル鉄道の残照を記録すべく、今秋は北海道長期ロケを計画している。


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  1. 2018/07/02(月) 00:00:00|
  2. 根室本線
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プロフィール

こあらま

Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

著作権について

拙ブログに掲載する写真、記事に関する著作権は放棄しておりませんので、無断使用、転載等はお控えください。

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