駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

北の大地の根室本線

緑に覆われた狩勝を列車が行き交う
道内最長の根室本線も短縮の日が近い

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2016年7月 根室本線 新得

日本の重要な食料倉庫の一つである十勝平野を眼下に、JRFの貨物列車が狩勝峠をゆっくりと登って往く。北の大地の恵みを、札幌へ、そして内地の大消費地へと運んで行く。そのJR北海道の路線存続問題が再び巷を騒がせている。国交省、道との協議結果として、単独では維持困難とされた12線区のうちの4線区を、2020年までに廃止する方針が報じられた。国が支援を拒否したわけで、もう決定的と言っていい。これとは別に、石勝線夕張支線などの廃止も既に決まっている。

廃止方針の4線区の中には、根室本線の富良野-新得間が含まれている。昨年末には、東鹿越駅での学童・生徒の代替バスとの乗り換え風景をお伝えした。あの子らの世代で、鉄道による通学は終わりということになりそうだ。道内最長の根室本線がいよいよ短縮される時がやってきた。釧路-根室間、滝川-富良野間はおろか、帯広-釧路間も危ういというから、もうどうにも止まらない。確かに、旅客の輸送密度は惨憺たるもので、地元自治体も存続を強く訴えられないところまで来ている。

しかし、よく考えてみよう。日本の食料自給率はカロリーベースで38%(2016年、農水省統計)しかない。生乳不足で乳製品はずっと品薄状態が続いている。輸入小麦価格の上昇から、昨日からパンが値上げされ、家計を直撃しそうだ。一方、トラック運転手の人手不足から、宅配事業も曲がり角を迎えている。そんな状況で、大切な食糧供給地へと続く、根室本線や石北本線の廃止が軽々しく浮上してくるのは、まったく合点が行かない。モーダルシフト云々は、単なる掛け声だけなのだろうか。

ただ、どんなに文句を言っても、廃止に弾みがつきそうな気配だ。国鉄末期の頃が思い出される。夕張支線などは保存鉄道には格好の路線と思われるが、残念ながら、本邦にはそのような制度もない。せめて、北の大地のローカル鉄道の残照を記録すべく、今秋は北海道長期ロケを計画している。


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  1. 2018/07/02(月) 00:00:00|
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駅舎の灯 東鹿越 17時30分

廃止されるはずだった駅に今も灯が点る
十勝へと続くこの先の鉄路は放棄されたままだ

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2017年10月 根室本線 東鹿越

根室本線は、滝川から根室までの全長443.8kmの長大路線だが、1981年の石勝線の開通により、札幌発着の帯広・釧路方面の優等列車と貨物列車のすべてが短絡線経由となり、滝川-新得間は一気にローカル線に転落した。特に富良野-新得間は狩勝峠を越える山間区間であり、人口密度が小さく地域内輸送も希薄な地域だけに、廃止対象とされてしまった。かつては、特急「おおぞら」や急行「狩勝」が通った街道は、今では単行のキハ40が細々と走る閑散区間になっている。その根室本線が、昨年の台風10号の水害で甚大な損害を被ってしまった。狩勝峠周辺の被害が大きく、長らく十勝への鉄路は不通が続いていた。石勝線ルートは何とか復旧したが、本線筋ではあるがローカル線化した東鹿越-新得間には、復旧の槌音が響くことはなかった。

その閑散区間の南富良野町にある東鹿越駅は、線区の存続如何とは別に、本来なら今年の3月に廃止されるはずだったが、東鹿越-新得間の不通が続いているため、辛うじて今も存続している。この駅は石灰鉱山専用線の貨物を捌くための信号所が始まりだ。ここには王子工業鹿越鉱業所、日鉄鉱業東鹿越鉱業所の2社が鉱山を構えていた。1982年に貨物の取り扱いが終わってからは、殆ど乗降客のない秘境駅としての時間が流れてきた。近隣には集落はなく、金山湖畔の鬱蒼とした森林の中に佇む。広い構内跡地は信号場機能の名残りだ。ところが、台風災害の不通で、この駅が代行バスとの乗り継ぎの場となった。何時までこの状態が続くのかは予断を許さないが、数奇な事情で生き長らえることになった金山湖畔の秘境駅の様子をレポートしたい。


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高校生が帰ってくるであろう列車に合わせて、車で駅を訪れた。小さな駅前だが、代行バスの転回のために俄作りの未舗装の転回用のスペースがある。バスの転回方法を考えて、邪魔にならない場所を探して車を止め、バスの到着を待つ。17:30に新得からのバスが到着する。中小型のマイクロバス程度を思い浮かべていたが、到着したのは大型の観光バスだ。驚いたことに最初に降りてきたのは、どう見ても日本人ではない。時間があればお話を伺いたいところだったが、列車が入線してきたので、それどころではない。


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滝川からの2429Dが定刻の17:31に到着する。列車が止まり、まず走ってきたのはランドセル姿の二人の小学生だ。列車通学は義務教育以降の高校生と相場が決まっているが、小学生とは珍しい。何らかの事情がありそうなので聞いてみたいところだが、足早に何処かに消えてしまった。ふと、この二人が「北の国から」の純と蛍に見えてしまうのは、この地も富良野の名が付くからだろうか。この後、折り返し準備が終わるまで、キハ40のドアは一旦閉じられる。


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代行バスで到着した高校生たちは、列車の折り返し準備が済むまで、少しだけ駅舎前で待つことになる。秘境駅といっても、金山湖の対岸には観光施設群があり、南富良野の市街も近いので、通信に問題はないようで、ここでもスマホに興じる姿がある。一方、代行バスは時刻通りの17:36に、乗り継ぎの生徒たちを乗せて新得に向けて出発した。


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折り返しの準備が整い、サボも「東鹿越-富良野」に差し換えられた。ホームに高校生たちがやって来たが、ほんの数人かと思っていたが、予想外の多さには少々ビックリさせられた。この先の不通区間の次駅は、「鉄道員(ぽっぽや)」でお馴染みの「幌舞」こと幾寅だ。市街の外れにあるので田舎駅のようなイメージだが、歴とした南富良野町の中心駅で高校もある。多分、富良野市と南富良野町の間で、高校生の相互の移動があるのではないだろうか。


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駅の周りは漆黒の闇と静寂で、停車するキハの白さばかりが闇夜に浮かび、アイドリング音が暗闇に響いている。定刻の17:40に、折り返しの9634D富良野行きは、東鹿越を出発し、闇の中へと消えていった。本来であれば乗降の少ないはずの東鹿越の一時の賑わいは10分ほどで終わった。


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さて、この線区を廃止してしまってよいものだろうか。心ある大人なら、この子たちの足を守ってやりたいと思うのは当然のことだ。ましてや小学生までいるではないか。しかし、感情に任せてそう思うのは簡単だが、実際に鉄路を守るのは容易なことではない。この土地に適した持続可能な交通手段が鉄道とも限らない。ただ、一度レールを剥がしてしまえば決して元には戻らない。よくよく考えての結論であってほしい。実際に列車を待つ子供たちを目の当たりにすれば、無下なことは出来ないだろう。子供たちを大切にできない国に明日などあろうはずがない。


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  1. 2017/12/13(水) 00:00:00|
  2. 根室本線
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狩勝を往く

狩勝が新線に切り替わって半世紀50年が過ぎた
新線になっても北海道らしい大パノラマは健在だ

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2016年7月 根室本線 新得

狩勝峠の根室本線が、現在の新線に切り替わって、今年でちょうど50年となる。旧線を往く蒸気列車は、それはそれは迫力があったとのことだが、小生は先輩方の話をお聞きするだけで見たことはない。954mの旧狩勝隧道は、断面積が小さく排煙が悪く、新得からの上り列車の乗務員の労働環境が余りに厳しかったために、労使間の争議が新線に移行されるまで続いたという。また、このトンネルも常紋と同様に難工事で、タコ部屋労働と人柱の話が伝わっている。廃線後は、日本三大車窓の旧新内駅周辺は鉄道遺産として、NPO法人「旧狩勝線を楽しむ会」によって整備され、旧狩勝隧道の入口までフットパスが伸びている。この地にあったSLホテルは例によって廃業しているが、こちらも「楽しむ会」によって保存されている。

そんな旧隧道は問題が多く老朽化も早かったため、現在の5,790mの新狩勝トンネルが1966年に開通した。勾配は緩和されたが、北海道を代表する難所の峠であることに変わりはない。小生も雪のため狩勝を越えられなかったことが2回ある。フルノッチで挑むDD51の奮闘も及ばなかった。そんな難所でもあり、名所でもあった狩勝の名は、国鉄時代は根室本線の急行の名称だった。現在は、車両が高性能化したため、ここを往くディーゼル特急は大した減速もなく、勢いよく峠道を登って来る。

新線の車窓は旧線に遠く及ばないと思われるが、列車を俯瞰して眺めるには、北海道らしい大パノラマは健在だ。新得から一駅先の落合が28.1km 、トマムまでは33.8kmと山手線一周に迫る距離で、スケールが大きい。このお立ち台も、一部で「撮り鉄の聖地」と呼ばれているようで、週末には賑わうらしい。DF200の貨物が登って来たが、こちらはディーゼル特急のようにはいかない。定数はかなり抑えられているがノロノロ運転だ。西新得信号所の通過を確認してから、広内信号所を通ってこの画の場所に達するにはかなりの時間が掛かり、これだけ長時間1本の列車を追える場所も珍しい。周囲は十勝牛の放牧場になっているので箱庭のような眺めだ。撮り鉄ならずとも大いに北海道の絶景を楽しめる場所だ。


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  1. 2016/07/31(日) 00:30:00|
  2. 根室本線
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厚岸湾の白煙

根室本線の鉄路は、厚岸湾の縁に沿った湿地の中を糸魚沢へと続いている
荷物輸送のための混合列車は、白煙を残して一路根室へと小さくなっていった

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1973年3月 根室本線 厚岸―糸魚沢

今回は、丸々と太ったデカイ牡蠣で有名な根室本線の厚岸だ。根室本線もその牡蠣が採れる厚岸湾の湾岸に広がる湿地帯を縫うように進んでいく。当時の根室本線の釧路―根室間は殆んどの旅客列車がDC化されていたが、荷物輸送のための混合列車1往復と、貨物列車2往復がC58の牽引だった。厚岸の街外れの海辺に立つと、白煙を棚引かせて糸魚沢へ向かう列車を、何時までも見送ることが出来た。狩勝峠は吹雪だったようだ。寝台急行「狩勝4号」から引き継いだ、荷物車と郵便車は雪化粧していた。

この頃、404D「ニセコ3号」なる変わり種の列車も走っていた。この列車は、根室を朝9時に出発する函館行きの、確かキハ56の急行列車だ。根室本線、函館本線の815キロを、14時間半程かけて走破する長距離ランナーだった。下りの103レ「ニセコ3号」は、絶大な人気を誇ったC62重連の客車列車で、函館発札幌行きだ。という訳で「ニセコ3号」は、上りと下りで全く様相の異なる列車だった。こんな道東で「ニセコ」はないだろうというのも、変わり種と呼ばれた所以だ。

鉄道全盛時代には、特急「おおぞら」に代表される、北海道の玄関口の道南の函館と道東の釧路・根室を結ぶ長距離列車が結構走っていた。小生の函館の親類は、本家のある音別に事あるごとに帰省するが、直行列車が無くなったと嘆いている。おまけに近頃続いたJRの不祥事で散々な目にも遭っている。新幹線が来るというのに、函館から釧路は遠くなるばかりだ。ちなみに、尺別、音別はかみさんの生まれ故郷でもあり、この地を訪れるのは夫婦ともども、別々の目的で大変楽しみだ。かみさんも、まさか音別の丘で列車撮影に付き合わされるとは思いもよらなかっただろう。


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  1. 2016/03/07(月) 02:10:44|
  2. 根室本線
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プロフィール

こあらま

Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

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