駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

神威岬の道

神威岬を巡るキューロク貨物は不定期運用だった
入線の情報が流れ、岬にファンが集結した

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1975年3月 興浜北線 目梨泊

東京では木枯らし1号が吹き、北の北海道からは雪の便りが届くようになった。「木枯らし」という言葉は、日本独特の季節感を表すものだ。木枯らしは漢字一文字で「凩」と書く。和製漢字の一つだが、何とも言えない表意文字の妙味だ。季節の変化に敏感な農耕民族のDNAと情緒豊かな日本語表現が紡ぎ出した言葉と文字だ。ところが「木枯し1号」となると、ちょっと世知辛い。気象庁の基準に合致した風が吹くと、「木枯し1号」を認定する。東京地方と近畿地方に限定のため、札幌や福岡には「木枯し1号」は存在しない。2号や3号はなし。基準に合った風が吹かなければ、1号もウヤになる。ということで、ニュースでは「東京で木枯し1号が吹きました」となる。

さて、今回はご存知の北見神威岬だ。この日は風が弱く、岬の反対側で上がったキューロクの煙も尾根越しに見え、線路が岬の海岸線に沿って通っていることが良く分かる。当然、岬の先端は急カーブになっていた。今の土木技術ではトンネルで岬を回避するところだが、建設当時は鉄道も国道も岬を巡る他なかった。現在の国道はトンネルに付け替えられ、岬巡りの旧道は冬季閉鎖ということで、肝心の流氷シーズンには岬には自力で向かうしかない。この興浜北線と羽幌線は「北辺」の中でも行き難い処だったが、この岬は一度は見ておきたい場所として人気を博していた。今では、目梨泊駅付近には、観光のための「神威岬公園」が整備されている。

興浜北線の終点は枝幸町の北見枝幸だが、鉄道が無くなっても町は衰退しないという例として、よく引き合いに出される町だ。毛蟹、鮭、帆立といった海産物と流氷で知られる人口8,000余りの活気のある町だ。道内の天気予報にも登場する町なので、道民であればその名と位置は誰もが知っている。高速バスの特急えさし号が旭川から2往復が、札幌から1往復が音威子府経由で通っているので、興浜北線が走っていた時代より都市間交通の便は良くなっているはずだ。それでも、毎年100人以上のペースで人口が減り続け、この写真の頃からすれば半減してしまっている。大都市を中心に人口がシュリンクするのは、今の日本では避けられないことのようだ。


長らく予約更新でお送りしてきましたが、今回から通常運行に戻ります。


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  1. 2017/11/01(水) 00:00:00|
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オホーツクの原野を往く

高みから見下ろすのが俯瞰の相場だが、ここでは水平俯瞰が拝めた
オホーツクの原野の遥か彼方の地平線からキューロクの白煙が見えてくる 

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1973年3月 興浜北線 浜頓別

国鉄の赤字ローカル線の廃止は、国鉄再建法に則り、1981年に指定された第1次廃止対象特定地方交通線から始まった。その後、第2次、第3次と続き、1990年に一通りの廃止を終えた。この興浜北線は真っ先に1次指定された路線で、呆気なく1985年に廃線となっている。こんな広漠とした原野を走る盲腸線だ。残せといっても、それは限りなく難しい話だ。

以前、某公共放送局で「JR最長片道切符」と「JR乗りつぶし」と題した番組があったが、ローカル線廃止前だったら、鉄道旅好きとは思えない関口知宏氏は旅に飽きてリタイヤしていたことだろう。そういえば、彼が車内で寝ているシーンが度々あったが、鉄道旅好きは余程のことがない限り、車窓を楽しむことに余念がないものだ。

現役蒸気の時代は、ローカル線が淘汰される前で、北海道には多くのローカル線が存在していた。手荷物や一般貨物の取扱も健在で、小さな町にキューロクが不定期で通っていた。どの線に何時入線するかが、道内放浪者の誰しもが知りたいところだったが、同業者同士の情報交換は盛んで、皆惜しげもなく知る限りの情報を提供していた。不思議と情報は至って正確で、この日も入手した情報に違わず、キューロクの貨物列車がオホーツクの原野に現れた。


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  1. 2016/02/16(火) 01:09:49|
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プロフィール

こあらま

Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

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