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駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

キューロクの日 2018

短足動輪と太いボイラーがこの罐の個性だ
北と南の炭鉱町を甲斐甲斐しく走り回っていた

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1973年3月 留萌本線 留萌 19605

今年のキューロクの日は、その活躍の場だった北と南の炭鉱町から2輌の罐をピックアップして、進化の違いを比較観察してみようと思う。同じ形式であっても、その土地の風土や趣向、仕業内容に合わせて、大きく姿を変えていたのが、蒸気機関車の面白さの一つだろう。

まずは北のキューロクから、留萌で入換に勤しむ深川機関区の19605。一目でわかる無骨な防寒装備が、北の大地で生きるキューロクの特徴だ。腹に抱えた給水温め器と切り詰めデフ、スノープロウ。キャブの寒さ除けの幌と、窓に付けられた防風のためのバタフライ・スクリーン。そして深川区を特徴付ける前照灯のツララ切り。どれも極寒の地を生き抜くための装備だ。蛇足になるが、煤けたテンダーに大書きされた労働組合のスローガンも、北海道の早春の風物詩かと。

変わって南のキューロクは、直方機関区のヤードで休憩する行橋区の79668。晩年にC5058から譲られた「波に千鳥」のK-7門デフが人気の罐だった。九州の罐は、何といっても原型に近い姿と、磨き込まれた鐵にある。何があったのか、この時の79668は特に入念に磨かれ黒光りしていた。化粧煙突に門デフ、一つ目の大型の前照灯。九州勢のキャブ下に並んだの点検口が少々残念だが、白線入りのすっきりとした非公式側から眺めると、とりわけこの罐の手入れの良さが際立つ。

この2輌の共通点は、日本の北と南で、ともに石炭輸送の任に当たったことだろう。留萌本線と田川線、どちらも石炭輸送のために開かれた鉄路だ。キューロクと石炭とは切っても切れない仲だ。この短足動輪と太いボイラーは、石炭列車を力強く牽くためのものだ。その容姿と高い粘着性能に反して軸重は軽く、運用線区を選ばず、使い勝手の良さは後進の追従を許さなかった。より高出力のD50やD51が現れた後は、全国各地の亜幹線やローカル線での活躍が待っていた。

かくして、キューロクは、日本の国産蒸気機関車の創成期に産声を上げ、国鉄の現役蒸気の最後を飾った、日本で最も長寿の蒸気機関車となった。今もこうして「キューロクの日」を祝ってもらえる、ファンからの愛着も深い名機だ。


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1971年7月 筑豊本線 直方 79668


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  1. 2018/09/06(木) 00:00:00|
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雪虫の頃

ススキ野を揺らして列車が晩秋を往く
まもなく雪虫が舞い初雪がやって来る

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2016年10月 留萌本線 留萌

尾花もそろそろ終わりに近づき、朝晩の冷え込みが日に日に強まる頃、雪虫が舞い始める。北国の晩秋の風物詩だ。飛ぶ姿は天使の様だが、正体はあくまでアブラムシの一種だ。この手のアブラムシは、日本に広く分布しており、井上靖の伊豆半島を舞台にした小説の題名ともなった「しろばんば」も雪虫のひとつの呼び名だ。小説家が幼少期を過ごした伊豆湯ヶ島では、晩秋にこの虫が舞うさまがよく見られたのであろう。少し前まで、猛暑と熱中症が毎日のニュースで連呼されていたが、やっと秋風が吹き出した。最近では夏が長くなり、春秋が短くなったような気がする。短くなった秋は足早に通り過ぎて行く。油断をすると、あっと言う間に雪虫が舞ってしまう。


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  1. 2017/09/24(日) 00:00:00|
  2. 留萌本線
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増毛の残照 最終夜 駅舎の灯 21時49分

静まり返った駅前には、遠くから微かな波音が聞こえてくる
95年間この町を見守り続けた駅舎の灯が消えようとしていた

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2016年10月 留萌本線 増毛

21時41分、深川からの最終列車4935Dが到着し、8分間の停車の後、21時49分発の最終の留萌行き5922Dとなって折り返して行く。この日は仕事帰りの勤め人と思しき方が一人だけ降りてきたが、返しの列車の乗客は皆無だった。ただし、これは平日の話で、土曜休日は1本前の19時台の列車が最終となる。最終運行日の12月4日は日曜日だったため、19時台がこの線区の最終運行列車となった。始発から15時間半の、長いような短いような増毛駅の一日が終わろうとしていた。静まり返った駅には、折からの強風に荒れる海からの波音が聞こえていた。

近頃では葬式鉄なる現象があるようで、廃止が決まった列車や車輌、路線に人が押し寄せているらしい。小生は一応「日常の鉄道」ということを大切にしているつもりなので、「非日常」となってしまったものは原則対象外だ。廃止前の増毛に行くかどうかも悩んだが、増毛港への誘惑には勝てなかった。とは云え、増毛は内地の都市からは極めて遠い。現地では何人かの道内の撮り鉄の方にお会いしただけで、いつも通り一人で列車を待つことが出来た。増毛駅の線路を囲むロープには少々落胆はしたが、好天の増毛港に立つことが叶ったし、それなりに静かに最後の増毛を眺める事が出来、44年ぶりのリベンジで気が済んだというものだ。

JR北海道の路線の廃止は、1995年の深名線から暫くはなかったが、19年後の2014年の江差線の頃から俄に雲行きが怪しくなり、それから僅か2年後の留萌線の増毛と相成った。この先も多くの廃止が計画されるに至って、北の鉄路の行く末がやっと全国区のニュースとなったのも束の間、今はトランプ大統領の爆弾発言の前には、それどころではなくなってしまったようだ。この分では、状況は厳しくなるばかりだ。世間の話題にも上ることなく、次々と路線が地図から消えていくことになりそうだ。拙ブログのカテゴリには、沢山の北海道の路線名が上がっているが、その多くが既に廃止路線になっている。それが時代の流れというものだろうが、思い出路線ばかりになってしまうのも哀しいものだ。


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これで、6回連載でお送りした「増毛の残照」を終わります。



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2016年10月 留萌本線 箸別


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  1. 2017/01/25(水) 00:30:00|
  2. 留萌本線
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増毛の残照 第5夜 最北の酒蔵

留萌の海岸段丘の下の浜辺に、その元仮乗降場はあった
かつて海水浴客で賑わった列車は、廃止を前に久々に満員だ

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2016年10月 留萌本線 瀬越

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増毛には「日本最北の酒蔵」と呼ばれる「国希」がある。旭川は全国区の「男山」や「国士無双」、「大雪の蔵」などの酒蔵が犇めく激戦区で、こちらの方が北ではないかと思いがちだが、地図をよく見てみると、僅かに増毛の方が北にある。留萌本線は深川から西ではなく、北西に向かって伸びている。留萌と同じ緯度は、宗谷本線では蘭留と塩狩の間にあり、増毛は比布辺りになる。つまり、男山より国希の方が僅かだが北にあることになる。もう一つ気になるのが北見にある「栄光摩周」・「北見寒菊」が銘柄の山田酒造だ。石北本線は旭川を出ると徐々に北上して遠軽に向い、そこから南下して北見、また北上して網走へと至る。網走は地図上でも明らかに留萌よりも北にあり、もし網走に酒蔵があれば間違いなく最北だ。問題の北見は、緯度をきちんと調べないことには判らない。各地の緯度を記しておくが、僅かながら旭川より北になるが、僅差で増毛よりは南となる。つまり、北から増毛、北見、旭川の順になり、国希が名実ともに最北である。ちなみに4位の地は新十津川で、「金滴」がある。ただ、調査が未熟で、さらに北の隠れ酒蔵があれば、情報をお寄せいただきたい。是非買い出しに向かいたい。

左党の方々はそろそろ喉が渇いてきた頃かと思うが、拙ブログの管理人もその口だ。増毛の地に再訪した目的というか楽しみは、「国希」にもある。元々は呉服商であったが、ニシン漁に沸くヤン衆のために、酒造業も始めたのが明治35年ということで、酒蔵としての歴史も115年となる。北海道の清酒は淡麗辛口が多いが、この国希も、北前船の飲料水にも好まれたという暑寒別山塊の伏流水で仕込まれる、頗る飲み口のいい酒だ。家庭で団欒に味わうには最適な味わいを持つ。管理人は濃厚、芳醇タイプが好みであり、北海道の蔵が選択肢に上がることは少ないが、試す価値は十分にあるとお伝えしておこう。ただ、管理人が飲むのは、その場所で晩酌用に普通に呑まれている雑味の多い銘柄で、風味のバリエーションの少ない淡麗なだけの、精米度も価格も高い銘柄は全くもって対象外だ。酒蔵の御主人に留萌線廃止の影響について尋ねてみると、鉄道利用のお客さんは殆ど買ってくれないという。札幌からバスでやって来るお客さんに、五合瓶がよく売れるという。それはそうだ。中には管理人のように、一升瓶をまとめ買いしていく買い出し組も偶にいるとのこと。美味い酒だけあって、津軽海峡を越える時には、一升瓶はラベルだけになっていた。

各地の緯度
網走 44.020631
留萌 43.940987
増毛 43.856063
北見 43.807823
旭川 43.770799


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増毛の「国希酒造株式会社」

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「国の誉」は旧銘柄


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  1. 2017/01/23(月) 00:30:00|
  2. 留萌本線
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増毛の残照 第4夜 雄冬山

かつてこの海岸を往く国道は、増毛の先で行き止まりだった
雄冬山の尾根が日本海に沈み込むところに、陸の孤島雄冬はあった

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2016年10月 留萌本線 信砂

この写真の中央に信砂(のぶしゃ)の駅があり、キハ54が停車している。後ろに聳えるなだらかな山容が増毛山塊の雄冬山だ。「雄冬」とくれば、やはり故高倉健の「駅 STATION」だろう。国道231号線、通称「オロロンライン」では、当時の石狩の浜益村千代志別と増毛町大別苅の区間において、増毛山塊が沈み込む断崖絶壁が、道路建設を長らく阻んでいた。その只中にある増毛に属する雄冬は陸の孤島であり、増毛港から通う雄冬海運所属の「新おふゆ丸」が唯一の交通手段だった。雄冬に戻る途中、欠航で所在ない高倉が、八代亜紀の「舟唄」が流れる賠償の居酒屋「桐子」に入る。映画の中のワンシーンだ。

雄冬にあった増毛町立雄冬小中学校は「へき地等級3」の学校だった。5段階の真ん中で、道内ではまだまだ序の口ということだろう。日本では喜ばしいことに「教育基本法 第三条」に、教育の機会均等がしっかりと謳われている。さらに僻地の教育については「へき地教育振興法」が存在し、僻地に赴く教員・職員への福利厚生についても考慮されている。その「へき地手当」を支給するための「へき地等級」が学校毎に定められている。等級は都道府県が条例で定めているが、駅(停留所)、病院、高校、郵便局、スーパーマーケット、市の中心地などへの距離から算定されている。ただ、渡船しか移動手段のない雄冬の3等級は、冬の荒波のことを考えれば厳しすぎるようにも思える。

陸の孤島だった雄冬にも、国道231号線の道路建設が始まった。1981年の雄冬岬トンネルの開通で全通したが、何度となく崩落不通を繰り返したため、安定的に開通したのは1982年になってで、その年に航路が廃止されている。しかし、道路ができても住民の減少は止まらず、小学校も2002年に閉校となった。最盛期500人以上が暮らした雄冬の人口は現在70人程で、小学生はおらず集落の存続が危ぶまれている。現在も国道の改修が続けられ、移動の快適さは増している。高倉健演じる英治は、渡船の欠航に妨げられることなく、増毛から路線バスに乗れば20分程で帰郷できるようになったが、増毛には既に駅はなく、雄冬の賑わいももうない。


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  1. 2017/01/21(土) 00:30:00|
  2. 留萌本線
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プロフィール

こあらま

Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

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