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駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

始発列車 大栃山を往く

点在する集落に朝日が差し込んできた
始発列車の走行音が破間川の峡間に響く

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2018年7月 只見線 入広瀬

破間川が大きく湾曲する山陰に、大栃山の田圃が広がっている。入広瀬の名前の由来は、多分その地形にあるのだろう。北魚沼の田園に点在する集落に朝日が当たり出す頃、高校生を乗せた始発列車が、ゆっくりと破間川に沿って下ってゆく。大栃山のトンネルを抜ければ、山峡から魚沼盆地の片隅へと出る。その後は、平坦で穏やかな田園風景の中を、小出へとゆったりと走るだけだ。不思議と、列車のジョイント音とタイフォーンの響きが、高まったり消えかかったりしながら、この高みにまで聞こえてくる。何時の間にかその微かな音も消え、この路線の細やかな朝が終わる。


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  1. 2018/09/10(月) 00:00:00|
  2. 只見線
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そして大栃山は今

一番列車が大栃山の田圃を抜けて往く
一面の鮮やかな緑はあの日と変わらない

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2018年7月 只見線 入広瀬

「魚沼へ」から41年、今の大栃山の田圃はこんなだ。圃場整備が入り、只見線の軌道の左右には、長方形の田が幾何学的に連なっている。あの稲架木は皆消え去り、代わりに舗装された農道に沿って無機質な電柱が並んでいる。警報機が厳めしいこの踏切は、以前は「汽車に注意」だけの砂利道の簡素な第4種踏切だった。踏切は立派になったが、逆に通過する列車は減り、編成も短くなった。あの頃からの時代の流れは、只見線には逆風続きだ。

時代に連れて風景も変わって行くのは当たり前のことだ。人の暮らしを良くするために必要なこともある。圃場整備によってコメ作りが続けられているのなら、それはそれで致し方ないことだ。稲架木がなくなったのは寂しいが、地元の方々も同じ気持ちでいるかもしれない。稲架木はおろか、田圃を守るだけで精一杯なのかもしれない。細かいことはさて置いて、今もこうして美しい青田の中を往く列車を眺められることに素直に感謝すべきだろう。

41年前、素朴で昔懐かしい風景と、そこに生きる人の営みを記録するために足繁く通った村は、今も十分に撮影意欲を誘う場所だ。ただ、それは昔と今とではちょっと違った意味でだ。41年前、その村では冬の出稼ぎが当たり前だった。厳しい生活の中でも逞しく生きる人々の姿が印象的だった。今は逆に、豊かな四季の移ろいの中の、心穏やかな暮らしが目に映る。41年の時の流れは、人の暮らしに必要なものが何なのかを提起する時間でもあった。


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  1. 2018/08/29(水) 00:00:00|
  2. 只見線
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魚沼へ 稲架木のある風景

新潟の美味いコメを思わせるハンノキ並木
稲架木の向こうを魚沼のキハが通り過ぎて往く

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1977年7月 只見線 入広瀬

現在の稲作では収穫はコンバインでなされます。大型機では刈り取られた稲穂は同時に脱穀がなされます。籾殻は田に撒かれ、袋詰めされた玄米が農協の低温乾燥倉庫へと運ばれます。その後、精米業者に売り渡され、家庭へと届けられます。今でも、刈り取られた稲の天日干しが見られますが、多くが農家の自家米か、一部の高級米になります。農家の人たちは、昔ながらに、農薬を使わない専用の田で作った米を、天日干しにして食べています。本当に、美味しいもの、安全なものは、経済原理の前に、蔑ろにされてしまいました。

ここ新潟では、稲架木と呼ばれるハンノキなどの生木が、天日干しの支柱にされてきました。これまで何回かお送りしてきた「魚沼へ」に出てきた民家の周りに、末口の細丸太が立てかけてあったのをご記憶でしょうか。今回の写真の稲架木にも立てかけてあります。この細丸太を稲架木の並木に横に渡して、そこに稲束を振り分けて架けていきます。しかし、新潟を象徴するこの稲架木の並木は、圃場整備とともに消えていきました。当時の入広瀬でも、年々稲架木は減る運命にありました。今は、物干し台のような稲木をよく見かけます。


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ここは、入広瀬の上条寄りの大栃山の田圃です。今は、すっきりとした障害物の無い眺めで、只見線の人気の撮影地になっています。圃場整備が入る前の当時は、ここにも少ないですが稲架木の並木が見られました。稲架木越しに小出行きのキハ58が走って行きます。この時代、急行型のはずのキハ58も非冷房のものからローカル線に回されました。2エンジンのキハ20系はキハ52しかありませんでしたから、2エンジンのキハ58はローカル線でも重宝され、スピードアップに貢献しました。この列車は5両編成で、キハ55、キハ20と続きます。現在は2両編成のヨンマルが行き来していますが、いよいよ国鉄の残照も消えようとしています。


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撮影を終えて入広瀬の駅に戻ると、急に土砂降りの雨となりました。ホームに大粒の雨が打ち付けています。この頃の入広瀬の駅舎は初代の木造でした。雨模様となったので、ここでの撮影を切り上げて、行ったことのない田子倉に向かいました。無事に田子倉に着き、駅周辺をロケしましたが、何と大雨で大白川-只見間が不通になってしまいました。復旧の見通しがつかないと放送が流れてきます。田子倉駅周辺は今も昔も無人地帯です。意を決して、国道を通る車を捕まえてヒッチハイクでの脱出を試みました。車も偶にしか通らないので、車を捕まえるのにどれだけの時間が掛かったでしょうか。やっと乗せてくれる車が現れました。

ところが、その方は非合法組織から堅気に戻って、電気工事店を営んでいるという経歴の持ち主でした。背中には刀傷があり、体の一部が欠損していました。非合法組織でのこと、どうやって堅気に戻れたかなど。色々な社会勉強をさせてもらいました。食事までご馳走になり、別れ際には、何時でも困ったら訪ねて来いと名刺をくれました。それ以来、その方のご厄介になったことはありませんが、人が困っているときに真っ先に助けてくれるのは、この道の人なんだと思ったりもしました。余談になってしまいましたが、魚沼ロケの際には、そんなこともありました。


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  1. 2018/08/27(月) 00:00:00|
  2. 只見線
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2422D 入広瀬 08時33分

日が高く昇った頃、上り始発列車がやって来る
駅のホームには人影もなく、まるで回送列車だ

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2018年7月 只見線 入広瀬

夏の日が高く昇り、騒々しいセミの鳴き声とともに猛暑の一日が始まった。集落が始動してから既に大分経ったころ、上り始発列車の2422D只見行きが入広瀬に着いた。乗降客が殆ど望めない列車であることは重々承知しているが、ひょっとしたらという期待もあった。しかし、やはりホームに人影が現れることはなかった。空しく、車側灯だけが点灯し、そして消灯した。気温は既に30℃を越えているが、新潟色のキハ40の排気が陽炎となって流れてゆく。

この駅の一日は判で押したような単調な繰り返しだ。06時32分の下り始発列車の2421D小出行きで、通学の生徒と数少ない通勤者は上越線沿線の町へと向かう。その多くは17時45分の上り只見行きで帰って来る。遅くなった人たちは、20時32分の上り最終列車の2428D大白川行きで戻ることになる。これが、この駅での毎日の繰り返しだ。その時刻に合わせて、近在から送迎の車が現れる。鉄道利用の場合、残念ながら、これ以外の選択肢は無いに等しい。

沿線の人たちも、高校生だけになってしまった只見線の現状をとても憂いている。利便性、経済性から乗ることは出来ないが、鉄道には残っていて欲しいと切に願っている。蒸気機関車を走らせて観光路線にでもならないかと沿線の方が語っていた。旅客輸送の役割が大きく失われてしまっても、その存在感は確かに沿線の人々の中に生き続けている。勝手な願いと切り捨ててしまえばそれまでだが、アイデアでどうにかなるものなら、それに越したことはない。


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  1. 2018/08/15(水) 00:00:00|
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入広瀬 盛夏

盛夏の稲田を朝日を浴びてキハが往く
相変わらず美しいこの村の瑞穂の眺めだ

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2018年7月 只見線 入広瀬

ここ只見線の小出口は、1971年に六十里越が開通して只見線が全通するまでは、全列車が客車での運用で、混合列車も走っていた。1969年春までは、牽引は長岡運転所小出駐泊所のC11が任に当たっていた。フロントデッキの横一線の手摺が目印だった。SGなしのDD13により無煙化されたため、1970年から71年に掛けての冬季、再びC11が復活している。全線開通後は気動車に置き換わり、旧客の時代に終わりを告げた。71年には、客寄せのため2回に渡り、C11のさよなら運転が行われている。

各時代の時刻表を眺めてみると、全線開通前の1970年には5往復。「魚沼へ」を撮っていた頃の1977年には、6往復に急行「奥只見」が1往復の計7往復。そして現在の2018年は4往復で、内1往復が大白川発着なので、大白川-只見間は3往復ということになる。一貫してこてこてのローカル線といえる只見線小出口だが、「魚沼へ」の頃がダイヤ上の全盛期といえそうだ。列車の編成も最も長かった。気になる輸送密度は、小出-只見間で2017年が114人/日と、JR東日本の中での最悪集団の一角を成している。

さて、「魚沼のへ」の頃から40年が経ち、入広瀬の風景も随分と変わった。家屋はコンクリ―トや新建材に置き換わり、小道までも舗装され路は随分と綺麗になった。田圃には圃場整備が入り、整然とした形に生まれ変わり、谷や尾根筋の棚田は野へと帰っていった。しかし、この村の本質までもが変わってしまった訳ではない。幾つかの石仏は大切に受け継がれ、大栃山の田圃をカーブしていく只見線は相変わらず美しい。今またこの村に通うのは、やはりこの地に息づく何かに引き寄せられるからだろう。

次回の「魚沼へ」では、この田圃を取り上げる予定です。


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  1. 2018/08/07(火) 00:00:00|
  2. 只見線
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プロフィール

こあらま

Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

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