見るからに微妙な傷み具合だ
雪国の木造駅舎を守るのも大変だ

2020年11月 富山地方鉄道 本線 舌山
風情ある木造駅舎と、ただボロいだけの駅舎とは紙一重のようにも思えてくる。この駅舎は、1922年に黒部鉄道の駅として開業した当時からのもので、御年98歳ということで木造駅舎としては大御所の部類に入る。2010年に現在の塗装となったが、それ以前は下見板張りの木肌が見て取れる素朴な外観だった。この色の被膜塗装の方が、木材を保護するのには良いのだろうが、塗膜が劣化した際の荒廃感は半端でない。同様の状態の駅舎を近在に見ることが出来る。施設維持の資金に窮する地方鉄道の台所事情が透けて見えるような駅舎の外観だ。この舌山以外にも、富山地方鉄道には統合前の各社各様の色々なタイプの古い木造駅舎が目白押しで、駅舎を見て回るだけでも面白い鉄道だ。
さて、この舌山駅から徒歩10分足らずの400m程西に、新黒部という駅が2015年に新設されている。北陸新幹線の金沢開業の際に、黒部市内に新黒部宇奈月温泉駅が新設されたが、交差する富山地方鉄道本線には接続駅としてコンクリートの新黒部駅が整備された。その経費は国、富山県、黒部市が全額を負担している。富山地方鉄道は私鉄扱いだが、実態は富山県と電力会社が主体の第三セクターのため、こうして公金を注ぎ込みやすい環境にある。新黒部の開業で舌山は廃止かと囁かれたが、どっこいしぶとく生き残っている。周囲に民家もない新駅に100年来の由緒ある駅を移動できる筈もなく、新黒部に交換設備を造らなかったことからも初めから移設という前提は無かったようだ。


この鉄道の車両は、1980年前後に自社発注で新造された14760形がメインだが、その後の老朽車両の置き換えでは大手私鉄のお下がりで凌いでいる。もっとも幅を利かせているのは、このカボチャ色の元京阪の10030形になり、京阪時代を彷彿させるダブルデッカー編成もあるようだ。列車は宇奈月温泉から戻ってきた上りの電鉄富山行きで、駅舎の向かいのホームには小さな待合所がある。


ホームにある待合所の中を覗いてみよう。例によって、地元の世話好きなおばさんの手によると思われる座布団が並んでいる。その上には少々理解に苦しむ張り紙がある。富山県は文化水準の高い地域だと勝手に思い込んでいたが、必ずしもそうではなさそうだ。悪ふざけの通学生徒か、酔っぱらった仕事帰りのおっさんの仕業だかは知らないが、同様の張り紙が何枚かある。思わずアンモニア臭がしてきそうだ。

そうこうしていると、今度は宇奈月行きの下りの列車が到着した。こちらは、どう見ても元東急だろう。また同じホームに入線した。どうやら駅舎側のホームは交換時のみの使用で待避線扱いのようだ。京阪、東急と来て残るは西武だ。元西武池袋線沿線民としては、あまり好きな顔付ではなかったが、日頃馴染みにしていた「レッドアロー号」を見てみたかったが、それは次回のお楽しみということになった。
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テーマ:鉄道写真 - ジャンル:写真
- 2020/12/12(土) 00:00:00|
- 富山地方鉄道
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