駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

東浜 瑞風停車

浦富海岸の小駅に久々に賑わいが戻った
長い交換設備に長大編成の瑞風が鎮座する

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2018年4月 山陰本線 東浜

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この鳥取県岩美郡岩美町にある東浜には、ここ数年、毎春立ち寄っている。バックに日本百景の浦富海岸を望む眺めが気に入っている。世界ジオパークにも認定されている。今年、この駅の異変に気が付いた。この静かな海辺の小駅が、2017年6月に運行が始まった「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」の停車駅になっていた。

1枚目の写真の左端に、その豪華列車の到着が写っている。全くマークしていなかったスジなので、突然現れた感じだ。駅前にはリムジンバスが待ち受け、裕福な乗客らは、浦富海岸の立ち寄り観光へと向かった。取り巻きの鉄も現れて、この駅にしてみれば、集落が臨海学校で繁盛していた時代以来の賑わいになったことだろう。

瑞風の東浜での停車時間は3時間程だ。ちょいと駅に見物に行ってみる。駅舎がガラスとステンレスの造形物に化け、近隣には乗客用のレストランと遊歩道が造られていた。何れもが、瑞風のエクステリアを監修した浦一也氏のデザインというが、こあらま的にはどうみてもやり過ぎだ。千載一遇のチャンスとばかりの町おこしの一環なのだろうが、箱物頼みはやはり先が知れている。負の「レガシー」にもなりかねない。

普段の東浜では、交換時を除いて、上下列車とも出入口のある直線通過の1番線を使用する。この時ばかりはピッカピカの瑞風に占領されてしまう。こんな海辺に長々と停まっていたら、ウミネコに鏡のような車体を汚されまっせ。


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  1. 2018/06/14(木) 00:00:00|
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ホワイトバランスに悩む

太陽が西に傾き日本海が輝きだした
山陰線の美しい夕暮れの始まりだ

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色温度 4750K  2017年4月 山陰本線 波根

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色温度 5723K

この2枚の写真は、どちらをアップしようか半年以上も散々悩んできたが、どうしても選び切れなさそうなので、比較のため両方を同時に上梓することにした。違いはホワイトバランスだけだ。こあらまは、通常はホワイトバランスはオートで撮り、現像時に色温度を調整している。1枚目は撮影時にカメラが自動調整した4750Kの画で、2枚目は現像時に手動調整した5723Kになる。カメラのアルゴリズムは夕日の赤みを抑える方向に働いているはずだが、夕日の暖色の眩しい光の中で撮った印象が強いので、色温度を少々上げて温かみを持たせてみた。

フィルム時代には、ホワイトバランスも色調も簡単に弄れるものではなかった。被写体と光源に合わせてフィルムと現像を選ぶことぐらいしか出来なかった。フィルターという手もあったが、特殊効果を狙って使うことはあっても、細かくホワイトバランスや色調を調整することなど、アマチュアには現実的でなかった。それが、デジタル化で様相が一変した。お手軽に弄れるようになった反面、何が一番か分からなくなる迷宮に陥ることもしばしばだ。この2枚もそうだが、さすがにニコンもそれらしくホワイトバランスを合わせてくるので、悩みも深まるというものだ。

一切のレタッチを許さないという頑な方がおられる。偽りものの写真への嫌悪感がそうさせているのだろうが、こあらまはそうは考えていない。トリミング、レタッチなしの一撃で仕留められることなど滅多にない。銀塩時代にも色々な小技を繰り出して写真を作ってきた。その小技部分がデジタルの現像やレッタチへと代わっただけだ。今回の写真を例にすると、銀塩時代なら紙焼きの際に必ず覆い焼きが必要となるシーンだ。もしレッタチなしで行けるのなら、その技をご教授願いたいくらいだ。フィルム時代もデジタル時代も次の工程を考えざるを得ない。

メインのカメラを、ニコンのD700の登場に合わせて、F3からデジタル化して早10年になる。現像用のPCとソフトもそれなりに用意し、撮影・現像という一連のデジタル作業も当たり前になった。撮影は素材作り、現像は味付けといったところだ。どんなにいい素材でも味付けによっては不味くもなる。どんなに味付けしても素材が悪ければ何も始まらない。現実を忠実に再現しようとするのもいいだろう。思いっきり独創の空間を描くのもいいだろう。要はその結果で見る人に何を伝えられるかだ。自分が信じるスタイルをとことん追求していくしか道はなさそうだ。


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  1. 2018/01/13(土) 00:00:00|
  2. 山陰本線
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続・青葉の山陰線を往く その25 終着駅

梅ケ峠を越えると下関近郊だ
駅のホームにも街の匂いがする

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2017年5月 山陰本線 梅ケ峠

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山陰本線も小串を過ぎ、長閑な黒井村、梅ケ峠の内陸部を抜けて吉見まで来ると、幡生までは10km程となり下関の郊外へと入る。安岡と綾羅木の間に梶栗郷台地という知らない駅が開業していた。もともと梶栗という駅があったらしいが、太平洋戦争の影響などで1941年に廃止されている。昨今、下関市街地のニュータウンとして周辺の開発が進んだため、67年ぶりの2008年に駅が復活したとのことだ。山陰線の最後の区間は、ローカル線の風情ではなく、住宅地が続く市街地を往く近郊列車となって幡生に辿り着いた。

長々と連載してきた山陰線の旅も終わりとなった。非電化区間が始まる兵庫県豊岡市の竹野からでも500kmを超える長丁場だ。山陰線の素晴らしいところは、長距離路線にも拘わらず、次から次へと写真心を擽るような場所が現れることだ。特に山陰海岸の美しさと石州瓦の集落は絶品だ。今はもう一体路線としての役目を終え、継ぎ接ぎ路線のような運行状況だが、今年からは「瑞風」が山陰線全線を駆け抜けている。萩―長門市間のように超の付くローカル線と化してしまった区間もあるが、全線が繋がっていての物種だ。鉄道の利用価値に観光が加わって浮かばれる線区もある。JR西日本もこの長大在来線を維持してきた甲斐があったというものだろう。どんな形であれ、列車が走り鉄路が守られることが肝要だ。いつまでも、山陰線が途切れることなく、1本のレールで繋がっていることを願って、この連載を終わりにしたい。


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2017年5月 山陰本線 吉見

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山陰線の終点は幡生だが、列車は下関を始発・終着にしている。その下関で出発を待つ長門市の罐の牽く客レは、前編の最終回にアップした列車のカラーバージョンだ。多くの蒸気機関車をカメラに収めてきたが、ネオンサインを背景にしたものは極めて稀だ。新しいものと古いものが混然一体とした不思議な眺めだ。山陰線下関口が無煙化されたのは、翌1974年の11月末だった。


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1973年7月 山陽本線 下関


これで「青葉の山陰線を往く」の全編を終わります。


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  1. 2017/09/28(木) 00:00:00|
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続・青葉の山陰線を往く その24 小串海岸

小串海岸は変わらず美しい海岸だった
昔も今も穏やかな渚が迎えてくれた

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2017年5月 山陰本線 湯玉

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1973年7月 同所

いよいよ美しい山陰海岸が眺められる最後の区間となった。逆に、下関側からの最初の景勝地が湯玉―小串間の小串海岸となる。その昔、山陰線のD51を初めて撮りに来た時には、京都からの夜行急行「雲仙3号」を下関で降り、早朝の列車でここ小串に着いている。一日を掛けて湯玉まで歩き、夜に下関に戻るという、何とも悠長な旅程だった。今では、美味しい所を摘み食いするかのように、さっさと駒を進めていくが、旅の密度もそれなりということだろう。列車本数もグッと少なくなっているので、朝晩に鉄撮りをして、日中は非鉄に興じるというのが、今の旅のスタイルだ。

例によって、期せずして核心部は今昔物となった。別に同じアングルを探したわけではないが、結果的に同じになった。幸いなことに、昔と変わらぬ美しい海岸線の眺めだが、どう云う訳か松の木が激減している。松くい虫の被害にでも遭ってしまったのだろうか。残念なことだが、どう見てもこの日本的な海岸線には松が在った方が風情があるように思う。D51の写真は、景色がよく見えるように罐が遠目のものにしたが、半流のD51の牽く貨物列車だ。当時であれば、こんなタラコのキハなどには、見向きもしなかっただろうが、今となっては、当時を偲べる数少ない国鉄型気動車だ。


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この区間で「西長門ブルーライン」の愛称をもつ国道191号線は、山陰線と並行して益田、そして広島へと伸びている。D51時代にはこんなに立派な道ではなかった。その頃、少なからぬ地方国道が砂利道だった。その後、次々と改修がなされ、車社会が到来した。立派な国道と並んで走るか細い鉄路。車と鉄道が共存していける社会であってほしいものだ。


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  1. 2017/09/22(金) 00:00:00|
  2. 山陰本線
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続・青葉の山陰線を往く その23 特牛という名の駅

新緑に包まれて、とびっきりの難読駅が佇んでいた
海岸の駅とは趣の異なる、緑の香りのする場所だ

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2017年4月 山陰本線 特牛

難読駅名も難しさが群を抜けば、逆に皆の知るところとなる。そのいい例がこの特牛だろう。さまざまなメディアに取り上げられ続けているので、知名度はかなり高い。当然、鉄道ファンの間では誰もが知る有名駅だ。この特牛から滝部に向かう列車には、25‰の急勾配が待ち構えている。山陰線にまだD51が走っていた頃、その力走を求めて全国から多くのファンが撮影に訪れた。そんな撮影の記事を雑誌などで読み、「こっとい」という読みを知った。

この駅に来るのは、そのD51の時代以来のことだ。この駅が無人化されたのは国鉄時代の1971年のことで、同じ頃に島式ホーム2面2線の交換設備も閉じられ、棒線化された。その後、元国鉄職員が駅舎の空いた事務スペースを利用して食料品店を営んでいたらしいが、2001年頃にこちらも敢え無く閉店となったとのことだ。駅舎は開業当時の木造駅舎らしいが、売店開設時のものと思われる改装で新建材だらけになり、外観に開業時の趣は感じられない。

駅は少し内陸に入ったところにあるので、中心となる海辺の集落と港からは3kmほど離れている。駅は民家が点在する田畑から少し登ったところにある。緑に包まれた何とも長閑な駅だが、昔はちょっとした交通の要だったようだ。角島とを結ぶバス路線の停留所が駅前にあり、通学の生徒で賑わっていたという。映画のロケで「いがみはた」という駅に化けたことがあり、聖地巡礼のための観光客のため、臨時列車が走ったという、嘘のような話もある。


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7時50分発の下りの滝部止りの列車が単車で到着したが、乗車する人はおらず、女性が一人降りてきただけだ。通学は6時台の列車で終わっていたようだ。2015年の平均利用者数は32人とあるので、10人くらいの生徒が乗車したはずだが、残念なことをした。もうすこし計画を詰めておけばよかった。


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以前はこのホームが島式2面2線であったことがよく解る。前方のポイントが残され、行き止まりのごく短い引込線になっている。こちらが滝部方面で、この先に25‰の登り坂がある。D51の牽く客レは、特牛を出ると勢いよく加速していた。以前の構内踏切を渡って、白い手すりの階段を下ると駅舎がある。


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駅舎は大幅に改装されてしまっているが、どう云う訳か古めかしいラッチが残されていた。擦り減り具合から見て、開業時からのものだろう。開業したのが1928年、無人化されたのが1971年。このラッチで駅員氏が出迎えをした年月よりも、ラッチだけが鎮座していた年月の方が長くなってしまった。


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  1. 2017/09/18(月) 00:00:00|
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プロフィール

こあらま

Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

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