駅舎の灯

旅の始まりにも、終わりにも、そこには何時も駅舎の灯があった。

続・青葉の山陰線を往く その24 小串海岸

小串海岸は変わらず美しい海岸だった
昔も今も穏やかな渚が迎えてくれた

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2017年5月 山陰本線 湯玉

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1973年7月 同所

いよいよ美しい山陰海岸が眺められる最後の区間となった。逆に、下関側からの最初の景勝地が湯玉―小串間の小串海岸となる。その昔、山陰線のD51を初めて撮りに来た時には、京都からの夜行急行「雲仙3号」を下関で降り、早朝の列車でここ小串に着いている。一日を掛けて湯玉まで歩き、夜に下関に戻るという、何とも悠長な旅程だった。今では、美味しい所を摘み食いするかのように、さっさと駒を進めていくが、旅の密度もそれなりということだろう。列車本数もグッと少なくなっているので、朝晩に鉄撮りをして、日中は非鉄に興じるというのが、今の旅のスタイルだ。

例によって、期せずして核心部は今昔物となった。別に同じアングルを探したわけではないが、結果的に同じになった。幸いなことに、昔と変わらぬ美しい海岸線の眺めだが、どう云う訳か松の木が激減している。松くい虫の被害にでも遭ってしまったのだろうか。残念なことだが、どう見てもこの日本的な海岸線には松が在った方が風情があるように思う。D51の写真は、景色がよく見えるように罐が遠目のものにしたが、半流のD51の牽く貨物列車だ。当時であれば、こんなタラコのキハなどには、見向きもしなかっただろうが、今となっては、当時を偲べる数少ない国鉄型気動車だ。


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この区間で「西長門ブルーライン」の愛称をもつ国道191号線は、山陰線と並行して益田、そして広島へと伸びている。D51時代にはこんなに立派な道ではなかった。その頃、少なからぬ地方国道が砂利道だった。その後、次々と改修がなされ、車社会が到来した。立派な国道と並んで走るか細い鉄路。車と鉄道が共存していける社会であってほしいものだ。


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  1. 2017/09/22(金) 00:00:00|
  2. 山陰本線
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漂泊の道標 構内踏切

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1977年6月 八高線 明覚


こんなにエコでバリアの小さい渡線路が、どうして減ってしまったのだろうか
ローカル線の跨線橋など、年寄り返しの無用の長物だ


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  1. 2017/09/20(水) 00:00:00|
  2. 八高線
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続・青葉の山陰線を往く その23 特牛という名の駅

新緑に包まれて、とびっきりの難読駅が佇んでいた
海岸の駅とは趣の異なる、緑の香りのする場所だ

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2017年4月 山陰本線 特牛

難読駅名も難しさが群を抜けば、逆に皆の知るところとなる。そのいい例がこの特牛だろう。さまざまなメディアに取り上げられ続けているので、知名度はかなり高い。当然、鉄道ファンの間では誰もが知る有名駅だ。この特牛から滝部に向かう列車には、25‰の急勾配が待ち構えている。山陰線にまだD51が走っていた頃、その力走を求めて全国から多くのファンが撮影に訪れた。そんな撮影の記事を雑誌などで読み、「こっとい」という読みを知った。

この駅に来るのは、そのD51の時代以来のことだ。この駅が無人化されたのは国鉄時代の1971年のことで、同じ頃に島式ホーム2面2線の交換設備も閉じられ、棒線化された。その後、元国鉄職員が駅舎の空いた事務スペースを利用して食料品店を営んでいたらしいが、2001年頃にこちらも敢え無く閉店となったとのことだ。駅舎は開業当時の木造駅舎らしいが、売店開設時のものと思われる改装で新建材だらけになり、外観に開業時の趣は感じられない。

駅は少し内陸に入ったところにあるので、中心となる海辺の集落と港からは3kmほど離れている。駅は民家が点在する田畑から少し登ったところにある。緑に包まれた何とも長閑な駅だが、昔はちょっとした交通の要だったようだ。角島とを結ぶバス路線の停留所が駅前にあり、通学の生徒で賑わっていたという。映画のロケで「いがみはた」という駅に化けたことがあり、聖地巡礼のための観光客のため、臨時列車が走ったという、嘘のような話もある。


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7時50分発の下りの滝部止りの列車が単車で到着したが、乗車する人はおらず、女性が一人降りてきただけだ。通学は6時台の列車で終わっていたようだ。2015年の平均利用者数は32人とあるので、10人くらいの生徒が乗車したはずだが、残念なことをした。もうすこし計画を詰めておけばよかった。


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以前はこのホームが島式2面2線であったことがよく解る。前方のポイントが残され、行き止まりのごく短い引込線になっている。こちらが滝部方面で、この先に25‰の登り坂がある。D51の牽く客レは、特牛を出ると勢いよく加速していた。以前の構内踏切を渡って、白い手すりの階段を下ると駅舎がある。


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駅舎は大幅に改装されてしまっているが、どう云う訳か古めかしいラッチが残されていた。擦り減り具合から見て、開業時からのものだろう。開業したのが1928年、無人化されたのが1971年。このラッチで駅員氏が出迎えをした年月よりも、ラッチだけが鎮座していた年月の方が長くなってしまった。


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  1. 2017/09/18(月) 00:00:00|
  2. 山陰本線
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天高く

天高く晴れ渡った青空の下、稲刈りが続く
真っ直ぐに伸びる線路も、すっかり秋色だ

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2016年10月 秋田内陸縦貫鉄道 松葉

大型で非常に強い勢力の台風18号タリムが日本列島を縦断する気配だ。稲穂がたわわに実るこの時期、稲作農家にとっての最大の心配事が台風の襲来だ。天気がいいうちに、刈れるところはさっさと刈ってしまおうと、コンバインが走り回った地域もあっただろう。稲が風で倒れてしまうとコンバインで刈るにはひと手間必要になる。その後に雨が続けば、籾から発芽して食用にはならないということにもなりかねない。日本の雑節である二百十日、二百二十日、八朔は、農家の三大厄日とされている。それぞれの厄日は今年は、9月1日、9月11日、9月20日ということになる。まさに、今時分は台風の季節ということだ。

以前、台風襲撃直後の東北を旅したことがある。東北のリンゴ産地で甚大な被害をだした台風だったが、リンゴ農家の軒先には、落下して売り物にならなくなったリンゴが、山のように放置されていた。打ち身の程度の少ないものがタダ同然で売られていたので、車に詰めるだけ買って帰ったことがある。保険で補償される農家もあるだろうが、丹精込めた作物が駄目になって喜ぶ農家が在ろうはずもない。今回の18号はその1991年の19号、通称「リンゴ台風」に類似しているようだ。残念ながら農作物の台風への備えなど高が知れている。台風が逸れることを祈るばかりだ。天高くリンゴ実る秋で在ってほしいものだ。


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  1. 2017/09/16(土) 00:00:00|
  2. 秋田内陸縦貫鉄道
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大沼湖畔の邂逅

夜が明けきらぬ大沼の朝 上下の普通列車がすれ違う
東の空にも大沼の湖畔にも、秋の紅が差していた

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2016年10月 函館本線 大沼 6時23分 藤城線 5881D 森行き 既に対向列車が見えている


ここは函館本線の大沼の函館寄りのポイントだが、線路が2本走っている。上り線と下り線なら話は簡単だが、山側の1本は、七飯から渡島大野、仁山を経由して大沼に向かう本来の函館本線の筋。湖岸側のもう1本は、七飯から途中駅無しで大沼に向かう通称藤城線のルートだ。藤城線は、仁山越えの急勾配を緩和するために1966年に後付けで建設されたもので、主に下り線として使われていた。つまり、藤城線開通後は、原則、下りの旧大野町、現北斗市の玄関駅である渡島大野に用のない優等列車と貨物列車は藤城線を走り、各駅停車のみが仁山経由を走っていた。

ところが、北海道新幹線の在来線との接続が無人駅の渡島大野となり、駅名も新函館北斗に改称されたことは周知の通りである。となると、新幹線接続の優等列車は上下とも全て仁山経由となる。仁山越えの20‰の勾配など、現代のキハには大した支障ではない。かくして、この二つのルートの役割は大きく変わり、仁山経由は旅客、藤城線は貨物線と相成った。しかし、朝昼晩の下りの3本の普通列車が例外として藤城線に残った。新幹線駅を回避する世にも珍しい列車だ。業界筋では、ダイヤ編成上の措置とも、藤城線の免許を失いたくないJR北海道の思惑とも囁かれている。

何はともあれ、仁山経由の大沼発6:22の5880D函館行きと、藤城線の大沼着6:28の5881D森行きの2本の貴重な普通列車が、線路を違えて間髪入れずにこのポイントを通過する。本当に通過時刻が切迫しているので、どちらが先に来るかも判らない。おまけに、この函館側で2線が交差しているので、感覚的に湖岸寄りが仁山経由と勘違いしそうだ。湖岸の線を往く貴重な筋も失いたくない。もちろん前照灯がアクセントになる駒ヶ岳バックの上りも撮りたい。この日、カメラに記録された時刻差は1分だった。二兎を追う者は一兎をも得ずというが、さてこの出来は何兎だろうか。


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同日同所 6時24分 仁山経由 5880D 函館行き


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  1. 2017/09/14(木) 00:00:00|
  2. 函館本線
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プロフィール

こあらま

Author:こあらま
1950年代後半、東京生まれ。少年時代は国鉄現役蒸気を追いかけ、その後は山岳・高山植物・風景・街角等を題材に撮影旅を続けてきました。
2000年代、たまたま小海線のキハにカメラを向けてから俄に鉄道画に復活。ローカル線を中心に、鉄道絡みの画を撮っています。

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